暗闇の中にスポットライトを浴びた椅子が置かれている。
まるでその椅子は何かに見捨てられたかのように寂しく青白い光を放っていた・・・
その暗闇の中から現れる一人の赤いサングラスをつけた男・・・
年は20代だろうか・・・?
顔の眉間には皺がより、青いカッターの上に黒いジャケットを羽織ったその姿からは
まるで何かを訴えたいかのような悩める姿が刻まれていた・・・
椅子に座ったその男は前のめりになり、肘を膝の上に乗せ重い口を開きだした。
「私は償いきれない罪を犯してしまった。私という存在がこの世から
消えても私の犯した罪が永遠に私を消してはくれないだろう。
しかし、それは仕方の無い事だ・・・」
男は顔を覆い、顔に己の爪をつき立てた。
顔を覆う指の間からは滝のような涙が溢れ出し、男は嗚咽を繰り返していた。
ここはとある高校の教室・・・。
春のふわふわとしたほのかな光が教室に射し込み、春の心地よい温かさが多くの生徒
を睡魔の世界へと落としていった。
顔を沈め、すやすやと眠る生徒達の顔は、まるで天国へと旅立った死人の顔のように
穏やかで安らかだった。
「・・・はーい、ここの文章は・・・」
生徒の半数が眠りの世界にいるなか、教壇の先生は自らも迫り来る睡魔と闘っていた・・・。
"Arriving
at the airport,Karl and Dolly called
me."
黒板には英語の分詞構文の文章がかかれていた。
かなりややこ
しい分野のために、殆どの生徒が思考を止めて睡魔の世界へと落ちてゆくのだ。
キ―――ン、コ――――――ン、カ―――――――――ン、コ――――――――ン・・・
先ほどの光景がウソだったかのようにまるで死の世界から一斉に蘇ってきたかのよう
に生徒達が目を開け、起き始めた。