現在位置:asahi.com>スポーツ>一般スポーツ>国外> 記事 「スピード水着」世界新連発 五輪控え開発競争熱く2008年04月16日23時04分 北京五輪を8月に控えた競泳界で、最大手の英スピード社製の水着に熱い視線が注がれる。今季生まれた世界記録37個のうち、35個が同社の水着によるものだ。同業他社などからは「ハイテクドーピングだ」の声も上がっている。
25メートルプールでの短水路大会も含めて世界新を連発するスピード社製水着を一躍有名にしたのは、男子50メートル自由形のイーモン・サリバン(豪)だ。2月に00年のポポフ(ロシア)の世界記録21秒64を0秒08更新し、3月には21秒28をマーク。日本のある選手は「50メートルで0.40秒近くも短縮するなんて信じられない」。この水着を着た若手、小川栞(初芝SS)が3月の短水路大会の女子800メートル自由形で中学新を出すなど、国内でも記録が出始めている。 同社の水着は米航空宇宙局(NASA)などと共同開発した。縫い目をなくし、受動抵抗を04年時の水着より10%軽減したという。特に短距離界で圧倒的な強さを誇る。 驚異の成果に、関係者からは「(人工的に)浮力を生じさせる機能があるかもしれない」という疑問が指摘された。国際水泳連盟(FINA)は今月、世界短水路選手権を開催した英マンチェスターでスピード社などメーカーと討議した。マルクレスク事務局長は「水着はFINAが公認したものだし、(浮力を疑う)科学的根拠はない」と結論付けた。 理論上、どんな水着にも浮力は生じる。FINAは規則で「競技中に速さや浮力、持久力の向上につながる道具を使ったり身につけたりしてはいけない」と定めているが、浮力の許容範囲を数字で示してはいない。こんなあいまいさに、企業秘密を理由に情報を明かさないメーカー側の事情が加わって、騒動は収まりそうにない。 水着メーカーの競争が激化したのは00年シドニー五輪ごろから。スピードはミズノと共同開発したサメ肌水着で、シドニー五輪金メダル総数の6割にあたる31個を獲得した。サメ肌は水着表面の溝が小さな渦を起こし、抵抗を増やす大きな渦を打ち消すとうたわれた。 自由形のスターだったイアン・ソープ(豪)が着用した全身を覆うブラックスーツも話題を呼んだ。この水着で、体を覆った方が肌を露出するより抵抗を抑えられると広く認識されるようになった。 今季は日本のアシックスやデサントが、水の抵抗が少ない体の流線形を保持しやすくする水着を売り出した。ミズノは魚類最速と言われるカジキをヒントに、生地表面の水をジェル化する素材を使うことで表面を流れる水との摩擦抵抗を減らす水着を発表した。 だが、低抵抗の水着がどれほどタイム向上に結びついているかは、各社とも証明できていないという。熾烈(しれつ)な開発競争の中で「もうネタが尽きた」と愚痴をこぼす技術者もいる。 日本水泳連盟は12年ロンドン五輪までアシックス、デサント、ミズノと契約している。北京五輪代表に選ばれた選手が、スピード社の水着を着ることはできない。ミズノは昨年途中までスピード社と提携関係にあったが、いまは解消されている。日本水泳連盟の上野広治競泳委員長は「日本の各社も、北京五輪までにいい水着を開発してほしい」と期待する。(由利英明)
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