【ベルリン小谷守彦】日本郵船(東京都千代田区)の大型タンカー「高山」がイエメン沖を航行中に攻撃された事件で、緊急通報を受けたドイツ軍駆逐艦「エムデン」が犯人の船とみられる2隻を発見しながら、臨検の同意が得られず追及できなかったことが分かった。ドイツは軍の海外派遣規則で、同意なく外国船に立ち入ることを認めていない。
独ポツダムの派遣軍司令部によると、エムデンは21日、高山からの通報でヘリ1機を派遣。ヘリ到着時には小型船の姿はなかったが、エムデンが武装集団とみられる貨物帆船とモーターボートを発見。この際、砲撃に使ったとみられる対戦車ロケット砲が船に装備されているのも確認したが、追跡は多国籍軍本部に委ねたという。
独海軍は02年以来、米軍が主導する「不朽の自由作戦」の一環で艦船1隻を派遣、海域監視などを行っている。独軍報道官は「独軍は米英軍と違い、相手船船長の同意のない場合、乗船できない。我々の任務は(不審船の)特定、監視、偵察だ」と説明している。
一方、臨検の実施は他国軍も国際法の制約で、船が掲げる国旗の国の許可や、対象船が海賊行為をしたと疑える根拠などが必要だ。
毎日新聞 2008年4月24日 東京朝刊