東工大クロニクルJan.2007

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中国留学生来日110周年記念シンポジウム
李 光哲,袁  野**,佐藤 由利子***

 10月28日(土),工大祭で賑やかな大岡山キャンパスで,中国留学生来日110周年記念シンポジウムが,中国留学人員聯誼会(中国の元留学生会)の代表団,中国大使館,日中協会,中国留日同学総会(在日の元日本留学生会)関係者,東工大及び他大学の中国留学生学友会代表及び日本側関係者など約150名が参加し,盛大に開催された。




会場の様子

 このシンポジウムは,中国人留学生の日本留学開始110周年を記念して,全日本中国留学生学友会と中国留日同学総会が,中国留学人員聯誼会の7名の代表団を迎えて開催したもので,全日本中国留学生学友会会長を東工大の李光哲が務めることもあり,東日本では,東工大で開催された。シンポジウムの正式名称は,「第9回在日中国人留学生と中国発展の討論会および中国留学生来日110周年記念大会」と言い,中国からの代表団を迎え,中国からの日本留学の110年の歴史を振り返り,今後の中国の発展と日中友好関係の促進について語り合う,という趣旨であった。
 午後2時の開会前,三木千壽理事・副学長が,会場の石川台4号館会議室で,于隶群中国留学人員聯誼会副会長及び中国大使館孔佑公使と会談し,日本留学が110周年を迎えることを祝した。

 シンポジウムでは,中国留日同学総会会長郭試瑜博士(昭和大学医学部)が開会の挨拶を行い,「110年前は13人の中国青年が清朝政府の派遣を受けて,日本留学の歴史の幕を開いた。今回のシンポジウムは,中国人来日留学110周年をテーマとして,日本留学した人たちが,中国近代史,中国の近代化と発展および中日交流における位置づけをめぐって,歴史を回顧し,未来を展望するものである。中国留日同窓会と全日本中国留学生学友会は在日留学生を結びつけて,国のために働き,中日交流を促進してきた。留学してこそ,更に,愛国心が高まる。来日した留学生は,個々の能力にかかわらず,みんな愛国心を持って,祖国建設と中日友好に全力をつくして欲しい」と話した。


中国留日同学総会会長 郭試瑜博士

 また,在日本中国大使館孔佑公使は,「中国人日本留学の歴史は110年にわたり,愛国精神の輝いた歴史ともいえよう。こうした歴史を記念することは,大変意味深いと思う。来日留学生は強烈な民族憂患意識と愛国心を持ち,中国の歴史に並々ならぬ業績を残し,中国の革命と建設の歴史に銘記されるにちがいない」と挨拶した。
 中国留学人員聯誼会于隶群副会長は,中国来日留学生の110年の歴史を回顧し,「1896年に唐宝などの留学生13名が派遣され,公的に日本への留学生派遣がスタートした。以来,数十万人に上る留学生は,知識への憧れと祖国への思いをもち,遠路遥遥日本にきて,民族の振興,国の繁栄のために必死に頑張ってきた。黄興さん,秋瑾さん,陳天華さん,鄒容さん,林覚民さんなど,大勢の来日留学生は,生命をかけて新しい中華民国を造り,2000年来の封建社会を覆し,輝かしい業績をおさめた。20世紀の初頭,李大さん,陳独秀さん,周恩来さん,彭湃さんをはじめ,大勢の優秀な留日学生は,マルクス主義を中国に伝え,中国の民主革命を推し進めるために重要な貢献を行った。中国の改革開放以来,日本に留学した多くの学生は,新しい中国を建設するには重要な役を果たした。例えば,西安交通大学長,中国工程院士である鄭南寧博士,『試験管の羊の父』の美称を持った中国工程院士旭日干博士等がその中にいる」と話した。


中国大使館 孔佑公使


中国留学人員聯誼会 于隶群副会長

 日中協会白西申一郎理事長は「中国は沢山の魅力を持っているが,最も大きい魅力は皆さんのような若い留学生にある。最近,安倍首相は中国を訪問したが,私たちの日本民間団体もずっと中日友好交流に取り組んできました。私たちは,今後,中日両国の交流が一層大きな発展を遂げることを期待する。皆さんは中国,日本だけのためではなく,全世界のために,一生懸命勉強しなければならない。勉強の成果を中国に持ち帰って,中国の将来のために貢献してください」と祝辞を述べた。


日中協会 白西申一郎理事長

 東京工業大学留学生センター日下部治教授は,東工大で記念大会が開催されることに対し,歓迎の意を表した。「1500年前には,日本から中国へ遣隋使,遣唐使を派遣して,中国から,制度,宗教,文化を始め,実に多くのことを学んだ。近代の110年は,中国は日本に多くの留学生を派遣し,彼らは中国の発展と進歩のために大きな歴史功績を収めた。現在も,多くの中国留学生が,日本で勉強している。東京工業大学で学ぶ中国留学生の数は約400人に上る。中国留学生学友会や留学生センターは,日本と中国の学生のために多くの交流機会を作ってきた。若者同士の相互理解は,日中両国の友好関係のために,非常に重要だと思う」と挨拶した。


留学生センター長 日下部治教授


 東京工業大学経営工学専攻博士課程の呉瓊さんは,110年の歴史を,辛亥革命,マルクス主義の拡がり,抗戦時期,新中国の成立,中日国交正常化等の時期に分けて解説した。また,全日本中国留学生学友会と中国留日学生総会の中日友好を促進する多様な活動を紹介した。


中国留学生の歴史について説明する呉瓊さん
(経営工学専攻)

 全日本中国留学生学友会会長で東京工業大学国際開発工学専攻博士課程の李光哲は,最後に,「今日,日本留学生が一堂に会して,留学生諸先輩の110年の栄光の歴史を記念し,今後の留学生の生き生きとした未来を展望した。今日の活動を通じて,『先輩の歴史業績を振り返り,先輩の優れた伝統を引き継ぎ,現代の留学生の力を集め,祖国のために貢献する』,というテーマが深く理解でき,中日の友好推進の大変よい機会となった」と閉会の辞を述べた。


全日本中国留学生学友会会長 李光哲

国際開発工学専攻博士課程,
  **土木工学専攻修士課程,
  ***留学生センター助教授)

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