2008年04月25日
実は4/7に書いた記事「月刊誌『FACTA』ロシア軍批判記事について」を受けて、FACTA編集部から「会って話がしたい」と連絡がありました。最初は直接編集部からではなく、編集部外の澁川修一氏(以前、タカラ「ギコ猫」騒動の時に論文を書かれた方)を介しての連絡でした。というよりFACTA編集部と付き合いのある渋川氏が、当ブログの記事を編集部に紹介した事が始まりです。渋川氏はFACTAを定期購読しており、問題の記事を読んで「いくらなんでもこれはないだろう」と感じたそうで、その後に当ブログの記事を読んで、渋川氏自らの懸念と供に私の記事のURLも添えて編集部に伝えられたそうです。これが4/9で、私の返信は「何を目的に話すのか説明も無くただ会いたいと言われても応じられない」「事実確認ならメールやブログ記事のやり取りで事足りるのではないか」としました。その後、4/12に渋川氏から再度連絡があり、少し日は開くが正式な連絡で取材理由が説明されるので、それまで待って欲しいとのことでした。

そして4/23に、FACTA編集部の高山さんという方から正式な取材依頼が私の所に来ました。FACTA記事と記事の筆者であるゴードン・トーマス氏に対する意見を聞きたい、という内容でした。しかし返事を書く前に、FACTA編集長の阿部重夫氏のブログでこの事が取上げられています。


阿部重夫編集長ブログ:FACTA online(2008年04月24日)
ロシアの魂とは何かについて、私には何もわからない……

〜中略〜

が、世の中には日々研鑽を積んでいる人々がいて、そのサイトのひとつ「週刊オブイェクト」で弊誌のロシアの兵器に関する記事が批判されているらしい。このサイト、兵器愛好家の筆になるものらしく、どこにでも目利きは存在するのだと感心した。FACTAとしては、誤報というご指摘は歓迎する。

編集長が全知全能ではないように、弊誌もまた全能ではない。どこかに誤報がまじる可能性は常に意識している。メディアは情報の非対称性に派生する。それゆえ誤報は正確な情報のシーズになる。だから、誤報とのご指摘には、根拠とその情報源をご教示いただくようお願い申し上げます。

すでにこのサイトの筆者にお会いする機会を与えていただくよう申し入れているところです。もし、ご快諾いただけるようなら、このサイトでインタビューを収録したいと思います。


誤報であるという指摘の根拠と情報源は4/7の記事で既に示しています。というか、ロシアが中国に武器を売っているのであって、ロシアが中国から武器を買ってなどいない、という事実は別段兵器に詳しくなくても一般常識レベルの範疇ですし、「大半の兵器製造年は40年前に遡る」という指摘に対しても、ロシアの主力兵器の殆どはそれより新しいものであることを根拠を付けて示しました。故にこれについて新たに話す事はあまり無いので、もし細部について知りたいのであれば幾つか質問を出してそれに答えるという形ですぐに終わります。メールでもコメント欄でも簡単に済む話です。

それよりも私の関心は、この誤報がどの段階で形成されたかに興味があります。当初は記事の執筆者のゴードン・トーマス氏がある程度マトモな方だと判断していたので、記事がおかしくなったのはMI6(正式名称SIS)の報告書自体がおかしい可能性を考えましたが、流石にイギリスの情報機関がロシアと中国の武器取引関係を勘違いする事は有り得ないので、英文の和訳ミスの可能性も考えました。しかし4/17の記事「FACTA寄稿のゴードン・トーマス氏はトンでも記者だった?」にあるとおり、記事執筆者自身の信憑性自体が疑わしくなっています。しかし私はゴードン・トーマス氏自身について特に詳しいわけではありませんので、ゴードン・トーマス氏について何か語れるというわけでありません。ですが、日本語記事の元となった英文記事を読めば、記事自体がおかしいのか翻訳ミスなのか判断できます。

4/17に既に書きましたが、FACTA編集部と阿部重夫編集長にお願いしたいのですが、ゴードン・トーマス氏の記事「ロシア軍はポンコツだらけ 領空侵犯飛行もハッタリか」の和訳前の英文記事を公開して欲しいのです。私相手に取材するよりも先に、この作業をお願いします。私はゴードン・トーマス氏の記事にあるMI6(正式名称SIS;Secret Intelligence Service)の「ロシア軍最新リポート」なるものが本当に実在するかどうかに注目しています。イーロン・アッシャー氏がGCHQ(Government Communications Headquarters)に問い合わせたように、ゴードン・トーマス氏が記事で書いたような内容の報告書が本当に実在するかどうか、SISに直接問い合わせるべきだと思います。またゴードン・トーマス氏の英文記事の内容次第によっては、SISに問い合わせるまでもなく「おかしい」と判断できるかもしれません。それはある程度の軍事知識を持っていれば、誰にでも評価が可能です。

ゴードン・トーマス氏の英文記事を示して貰えれば、FACTA記事がなぜ誤報となってしまったのか原因が分かります。SISのリポートがおかしいのか、ゴードン・トーマス氏がおかしいのか、FACTA編集部の翻訳ミスなのか、あるいはそれら幾つかの要因の複合なのか(この可能性が高い)、これを検証するには英文記事が無ければなんとも言えません。先ずその英文記事を示して頂きたいのです。
posted by JSF at 01:03 | Comment(14) | TrackBack(0) | 軍事
この記事へのコメント
  1. 誤報指摘歓迎って言っても、ここ読んでないうちからいってる様な文面だな


    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 02:17:05
  2. FACTAなんて相手にしないほうがいいんじゃないですか?
    FeliCaの暗号が破られたとブチ上げた一昨年末の記事に関しても、トンデモな内容に各所で疑問が呈されたにもかかわらず続報も訂正もありませんでしたから。

    > FACTAとしては、誤報というご指摘は歓迎する。

    誤報連発しといてこの「上から目線」、一体何様なんでしょうか(苦笑。


    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 02:17:54
  3. っていうかゴードン・トーマスに直接取材(電話でもメールでもいいから)して記事の真意を問うべきだろうに、なんでブログで間違いを指摘した人に取材したがるんだろう?

    何にしてもゴードン・トーマスの英文記事を見れば何がおかしいのか、そうでないのか、直ぐに分かる話だ。FACTA編集部はさっさと公開すべき。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 02:38:23
  4. このリンク先のブログ、どっかで見た事あるな…と思ったけど思い出した。
    ので、ちょっとまとめてみた。

    2006年、年末頃、一つの衝撃的なニュースが駆け巡る
    「ソニーのFelicaの暗号が破られたらしいぞ」
    参考:http://slashdot.jp/security/article.pl?sid=06/12/19/0539236

    いろいろと色めき立つ、暗号のどの部分が破られたのか、どのようにして破られたのか、もし破られたのがFelicaの基礎部分の暗号に関するところなら、暗号のなにか根本的なところがひっくり返るかもしれない。

    ちなみに、情報の出所は FACTA であった。
    http://facta.co.jp/article/200701023.html
     ↓
    しかしソニーは完全否定。
    参考:http://slashdot.jp/security/article.pl?sid=06/12/21/0549208
     ↓
    ITmediaが記事を書き、FACTAに電話取材
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/20/news103.html

    ITmedia「ソニーは否定してるけれど、確かなソースあるの? 記事の内容だけだとよわくね?」
    FACTA「暗号問題はデリケートなので電話ではしゃべれない、記事内容に自信はある」
     ↓
    ブログでITmediaを罵倒し、記事を書いた記者を小馬鹿にする
    http://facta.co.jp/blog/archives/20061221000298.html

    「電話で取材をしてくるようなふざけたメディアに手のうちを明かす訳がない」

    ただし、小馬鹿にした相手は専門家。
    http://slashdot.jp/security/comments.pl?sid=344738&cid=1079896

    月日は流れて…
     ↓
    今現在。
    FACTAから、セキュリティーの専門家が納得できるような追加情報は出ておりませんし、Felicaの暗号が破られたであろう犯罪も見つかっておりません、誤報でしょう。


    澁川修一氏には、この件についても確認される事をご提案します。
    この件は、FACTAの評価を地に落としましたから。



    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 02:54:42
  5. 身の安全を考えて下手に会わないほうが無難ですね。

    Posted by   at 2008年04月25日 04:06:51
  6. FACTAの信頼性に関する面白い情報だけど、今回の件でそれも確認ってのは場違いすぎると思われ。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 04:31:17
  7. Felicaの件での対応を見る限り、FACTAは誠実な対応をしていない。それどころか証拠を示さずに批判相手を罵倒するなど、高圧的な態度が目に余る。

    今回のロシア軍記事にしても、真実の検証作業よりも「会って話がしたい」のを優先していて、一体何が目的なのか透けて見える気がする。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 05:07:32
  8. jsf氏、いっそのことfactaの軍事専門記者にでもなったらどうでしょうか?
    読者のためにもいいと思うんですが。

    Posted by 殻付牡蠣 at 2008年04月25日 07:09:06
  9. >「週刊オブイェクト」で弊誌のロシアの兵器に関する記事が
    >批判されているらしい。
           ~~~~~~~~~~
    もの凄い他人事のような姿勢・・・・

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 08:12:06
  10. 取材を受けた挙げ句、それも歪曲して発表されたら、と思うとあまり相手にしない方がいい手合いかと。
    5様のおっしゃる「身の安全」に関する懸念もありますし。

    Posted by BELL at 2008年04月25日 08:35:36
  11. まぁ、虚言癖の山本一郎さんとお付き合いの深い編集長さんですから。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 09:03:51
  12. 自らを省みて正すことを先決とせぬ相手が「会いたい」などという時は、まずもってロクなことはない。

    ましてや仮にもジャーナリズムを標榜しているであろう輩が、市井の批判に屈したと思われるような結果を甘んじて許容すると考える方が迂闊であろう。

    つーわけで、会わないほうがいいと思います。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 11:16:01
  13. 会ってみてもよいのではないかと思います。
    全ての経緯をここで公開する前提で。
    既に言われている通り、かなり高慢な態度で接されてきた編集長様ですが、これは逆に、市井の一般人にすら泡食わされている(ロバの耳呼ばわりされている)という不安の裏返しでもあります。

    よしんば、新たなリソースとして取り込んでやろうという意図が見え見えですがw。

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 11:38:04
  14. しかし、あの珍妙な内容の記事になった経緯は知りたいな

    Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月25日 12:11:15
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