米国から輸入された牛肉から、BSE(牛海綿状脳症)の病原体がたまりやすいとして除去を義務づけている「特定危険部位」の脊柱(せきちゅう)が見つかった。米国側は「出荷時のミス」と説明しているが、国民の食の安全を守るという観点から政府は米側に混入経緯の詳細な説明を求め、米国の輸出条件順守の体制がほころんでいないか、確認すべきである。
混入が見つかった牛肉は牛丼チェーン大手の吉野家向けだ。同社は混入が判明した食肉工場からの牛肉は廃棄するとしており、消費者の口に入る心配はないようだ。政府も出荷した食肉工場からの輸入を停止しており、過度に米国産牛肉を恐れる必要はなさそうだ。
危険部位の混入は2006年7月に日米間で輸入条件の順守徹底で合意して米国産牛肉を再々開してから初めてだ。政府は米国の輸出条件順守システムに問題はなく、輸入停止措置は不必要としているが、不安や不信が広がらないよう、判断の根拠を明確にしなければならない。
気になるのは混入牛肉が国内の流通段階で発見されるまで、米国内の検査も輸入時の検査もすり抜けてしまったことだ。混入は本当に出荷工場の手違いだけなのか、米政府の検査官の見逃しといった輸出条件順守の仕組みに問題がなかったのか、原因や経緯は徹底調査が必要だ。
政府は対応策として輸入時の検査を強化するとしているが、米国内の体制に不備があるようなら改善を求めるべきだろう。
米国産牛肉の輸入は現在、「月齢20カ月以下の牛」に限っている。米側は輸入条件の緩和を求め、日米間の協議では「30カ月以下」への緩和も議論している。
牛肉は危険部位の除去が徹底されれば、BSEのリスクが小さくなる。輸入条件を緩和するにしても危険部位の除去は大前提であり、それを担保するシステムは盤石にしておかなければならない。
危険部位の混入が起きれば日本の消費者は米国産牛肉への不安を募らせる。米国産牛肉の消費を拡大し輸入条件の緩和の環境を整えるには、米国も危険部位の混入防止にもっと神経を使わなければならない。