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NIKKEI NET

社説1 ネット時代の音楽著作権管理めざせ(4/25)

 音楽の著作権管理事業を巡り、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで日本音楽著作権協会(JASRAC)に立ち入り検査した。同協会の契約方式が他事業者の新規参入を阻んでいるという疑いだ。ネット配信の広がりを受け、著作権の重要性が高まっている。管理の仕組みについても再度点検する必要がある。

 著作権管理事業は作家や音楽家に代わり、権利処理や使用料の回収などを行う。音楽では1939年に設立されたJASRACが独占的に管理を担ってきた。ところがネット配信の普及を狙う音楽出版社などから自主的な管理を希望する声が拡大し、2001年の法制定で管理事業が認可制から登録制となった。

 公取委が問題としたのは同協会が放送局などと交わす「包括的利用許諾契約」だ。著作権料は本来、使った分だけ払うものだが、同契約では経費を除いた事業収入の1.5%を支払えば、同協会の楽曲は何度でも使える。結果として追加支出が必要な新しい管理事業者やその楽曲が締め出されているというわけだ。

 法制定により、出版、音楽、映像など20以上の管理事業者が登場したが、音楽分野ではJASRACが今も95%以上のシェアを握る。

 放送局など音楽を使う側は複数の事業者と契約するより、1カ所で済む方が金銭的にも労力的にも好ましい。JASRACの存在意義は十分ある。問題は支配力を背景に同協会に有利な使用料率が決められたり、権利者間の配分方法が明確でなかったりする点だ。演歌とポップスの扱いの差に不満の声もあるという。

 カラオケや着メロの登場もあってJASRACの収入は、06年度で1100億円を超えている。しかしネット配信には慎重な姿勢を見せ、日本のネット配信事業が海外より出遅れる原因になった面もある。

 著作権団体は米国でも力を持つが、管理や政治活動に経費がかかり、本来の著作権者には十分還元されていないという指摘もある。その間をついて登場したのがネット配信で、管理団体に属さないインディーズ系にもヒット曲への道を開いた。

 デジタル放送番組の複製を巡り、日本でも家電メーカーと権利者との間で録画機器などに包括的にかける補償金の導入が議論されている。アナログ時代はどんぶり勘定も仕方なかったが、今のデジタル技術を使えば、権利保護や複製制限を行うのは容易な話だ。権利団体が自らの利益を追うのは当然だが、今後はネット配信時代に見合った著作物の利用や流通を促す管理を求めたい。

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