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北京五輪:聖火リレー 「がんばれ北京!」 赤い帯が沿道並走--オーストラリア

 ◇中国系、大量に動員

 【キャンベラ井田純】スタート地点に、沿道に、ゴールに、あたりを埋め尽くすようにあふれる中国の国旗の赤。24日朝、北京五輪の聖火リレーが行われたオーストラリアの首都キャンベラには、五輪支持を叫ぶ中国系住民、留学生が大量に送り込まれ、チベット系住民や人権団体を数で圧倒。豪州で増大する中国系住民の存在感を見せ付けた。

 「五輪絶対支持!」「がんばれ北京!」。聖火リレーのスタート地点には、24日、暗いうちから続々と中国系住民が集まり、スローガンを叫んだ。

 豪州社会で、中国系は非英語圏出身中最多の人口を占める。留学生でも、中国系の比率は2割以上で最大のグループだ。シドニーやメルボルンなど大きな中国系コミュニティーの住民が、この日に合わせて次々とキャンベラに入った。ある男性は、「メルボルンからのバスだけで60台以上、3000人。シドニーからは1万人は来ている」と話した。

 会場の一角には、チベット亡命政府の旗を掲げる在豪チベット人や、豪州人ら人権団体が集合。中国系団体との間を分けるように警官が整列する。数で遠く及ばないチベット人側が「ダライ・ラマと対話を」と訴えると、「ダライ・ラマはうそつき」「中国は一つ」などと数倍の声が返る。

 人権団体の白人メンバーに、中国系の若者が「チベットの場所さえ知らないんだろう」などと詰め寄る光景もみられた。豪政府に勤務する中国系男性(51)は「スポーツに政治を持ち込む活動家たちの考え方は間違っている。今日は、北京五輪支持を訴えるために休みを取り、家族全員できた」と話していた。

 沿道でも、目立つのは中国系住民ばかり。リレーが始まると、聖火と並走するように中国系学生らの赤い帯が続いた。一連のイベント終了後も、キャンベラの繁華街では、顔に中国国旗をペイントした若者が意気揚々と歩く姿があった。

 ◇ラッド首相、体面保つ

 パリやロンドンなどでの混乱を受け「キャンベラ始まって以来の厳戒態勢」(豪テレビ)を敷いた豪政府は一連のイベントを大きな問題なく乗り切った。警備費は予定の倍の200万豪ドル(約2億円)に達する見込みという。

 欧米での混乱や、パキスタンなどでの一般市民を排除したリレーなど異例の展開が続いた後に聖火を迎えたキャンベラでは、妨害行為のほか、中国系住民と人権団体との衝突懸念もあった。警備を大幅に増強した豪政府は、平和的なデモ活動を認めつつ、大規模な混乱を回避する課題をクリアした。ラッド政権は、中国の顔をつぶさずに民主主義国としての体面も保った。

 就任以来、中国との良好な関係を維持するラッド首相は、中国によるチベットのデモ弾圧がクローズアップされる中、今月初めに初の訪中日程を迎えた。10日の温家宝首相との会談ではチベット問題に言及、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との対話を促した。一方、この会談時には、中国が派遣する「聖火警備隊」を拒否する方針を示したが、2人の伴走を認めるなど一定の配慮もみせた。

 中国政府と欧州各国との溝が深まる中、24日のデモに参加した在豪チベット人女性からは「ラッド氏は、中国と関係を保ちながらものが言える。民主主義国の指導者として貴重だ」との声も聞かれた。

毎日新聞 2008年4月25日 東京朝刊

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