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【社説】

全国学力テスト 5年も続けるのか

2008年4月23日

 「少なくとも五年は続けたい」と渡海紀三朗文部科学相は言う。全国学力テストは今年で二回目だが、初回の検証は中途半端だ。学校序列化の懸念はぬぐえず、このまま続ける必要があるのか。

 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は今年も愛知県犬山市を除く国公立の全校が参加した。小学六年生と中学三年生の全員が対象という大規模調査だ。昨年、四十三年ぶりに復活した背景には、子供の学力が低下しているとの危機感がある。

 調査はいくつかの問題を指摘されながら実施された。学校や地域の競争をあおる道具になるのではとの懸念は今年も変わらない。

 文部科学省は市町村教委に「個々の学校名を明らかにした公表はしない」といった通知を出した。自治体は結果の公表方法に細心の注意を払わなければならない。

 昨年は東京都足立区の独自テストで先生が誤答部分を示唆して好成績を得ようという不正が発覚したが、今年は滋賀県教委が独自の問題を作ってホームページに掲載していた。事前対策とも受け取れる行為だ。公表が都道府県単位でも競争の問題は払拭(ふっしょく)されない。

 結果の活用にも問題がある。昨年は公表が十月にずれ込み、現在も自治体の検証作業が続く。一方、テストを受けた子供は卒業した。山梨県は「公表が遅れ、改善策が後手に回った」と反省するが、どの自治体も同じだろう。

 文科省は「今年は九月に結果を公表する」というが、一カ月繰り上げただけで自治体の対応が大きく改善されるかは疑問だ。

 公表が遅れるのは集計に時間がかかるからだ。ならば調査を全員から抽出に変えてはどうか。対象数が少ないほど集計は早い。

 現場で活用できなければ調査の意義は薄まる。公表が夏休み前になれば、子供への学習指導はもっと有効にできるに違いない。

 第一回の結果は、過去の抽出調査や国際調査と同様の傾向だった。学校規模と地域を考慮して抽出すれば全校参加の必要はない。

 費用面では、昨年は約七十七億円、今年は約五十八億円がかかっている。抽出なら集計費が削減でき、浮いた分を自治体の対策費に回すこともできよう。

 私立校の参加は昨年の62%から今年は53%に減った。すでに全員調査の意味は失われつつある。

 このまま続けても効果は少なく、現場の負担だけがかさんでいく。文科省はテストのあり方を検証し、改善に取り組むべきだ。

 

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