26日に迫った長野市の北京五輪聖火リレーで、聖火走者らの安全確保を優先させ、警察の警備を手厚くする結果、聖火走者が沿道から見えにくくなることが23日、分かった。海外での混乱を踏まえた「万全の警備態勢」に、リレー実施の意義があらためて問われている。
県警などによると、走者の周囲には当初予定通り、聖火の管理を担当する中国側の2人を配置。その周囲を運動着姿の機動隊員5人程度が囲む。さらに、その一団の両脇を警備要員の警察官数十人が二重に隊列を組んで伴走。不測の事態に備えるという。
沿道にも私服、制服含めて多数の警察官が配置され、「不審な動きをすれば一般市民にも職務質問せざるを得ない」(県警関係者)物々しさになりそうだ。
県警は、全県に約3300人いる警察官の7割に当たる約2300人を動員する予定。県内各署の中には、泊まり勤務態勢の警察官を削ってまで対応する署もある。
石井隆之本部長は「(不足分は)交番相談員など警察官OBらの協力を得て万全を図る」(県会警察委員会答弁)とし、県民の安全を軽視するわけではないと強調する。が、「大事件でもあったら対応できるか不安だ」と心配する一線署員もいる。
ルートの中央通り近くの事務所で働く女性(59)は「警察官の物々しい列は見たくない」と言う。県警幹部は「平和の祭典」のイメージとは懸け離れた警備態勢に、「海外の例もあり、万が一のためには必要」とする一方で、「ここまでする必要があるのかは正直言って疑問もある」と本音も漏らす。リレーの市実行委は「警察からは具体的な話を聞いていないので、市民からリレーが見えるか見えないかはコメントできない」としている。