山内(やまのうち)雅人さん、亡くなる

 世にテレビがないラジオ全盛時代、NHKの声優として一世を風靡し、後に下北沢の 『放送表現教育センター』 を開業、後進の指導にあたっていた山内 (やまのうち)雅人さんが、4月7日亡くなった。74歳だった。

 山内さんは、NHK放送劇団第四期生となり、連続放送劇 「笛吹童子」 霧ノ小次郎役でデビュー。TVでも 「私だけが知っている」 のナレーターや司会者として長い間活躍しNHK放送業務局長賞を受賞したことも。外国映画 「ドクターキルディア」 のリチャード・チェンバレンの吹き替えなども行う一方で、後輩指導の場として 『放送表現センター』 を主宰、数多くの声優、俳優を世に送り出した。

 『放送表現教育センター』をオープンすることになったことについて山内さんは、
 「30年前、ラジオ番組 『楽天くらぶ』 の司会をつとめていた頃、落語家・桂文楽師から 『山内さんは話すのがうまいね。しかし客の鼻面とって引きずり回す感覚がまだない。それが身につけば…。』 との指摘を受けまして、感激するとともに自らを恥ずかしく思い、勉強のため朗読会を開く決心をいたしました。
 その朗読会というのは、読み手が費用を出し、聴いて下さる方々に茶菓をもてなすというもので、もし気に入ったら、一円でも二円でもチャリティ寄付 (寄付金は交通遺児育英資金に) をしていただこうというスタイルでした。」
 交通遺児にチャリティを行うことについては、
 「自分で車を運転しているので、いつ被害者、加害者になるか分からないので。」

 「“自分の勉強のため”という朗読会は、当初は下北沢にある喫茶店でスタート。下北沢駅前でお知らせのチラシを配り聴き手を集めたこと、誰も聴きに来ないのでは…と気をもんだこと、たくさんの人が聴きに来て座る所がなくて困ったこと、など多々ありました。
 そのうち 『語り』 を学びたいという人が出てきて研究生というものができ、今の放送表現教育センターという形ができたわけです。」
 当初、自分の勉強のために始めたのが、徐々に人が集まってきて、「ジュニア教室」「声優教室」「朗読教室」 など開くようになった、という。 

 『ドラマチック・リーディング』を中心に

 「文字は、認識さえしていれば読むことが出来る。従って、誰にでも出来るのが朗読という作業です。
 が、その力を問われると、誰でもとは言えない。その文章・作品のおもむきを表現して伝えるとなると、奥行きはとどまる所を知らぬ深さ、加うるに作品は膨大にして千差万別……。
 私どもの朗読は、劇的な読み、『ドラマチック・リーディング』 を中心に置き、研鑽を重ねています。」
 一口に朗読と言っても、声のみで作品を表現するものは全て朗読に含まれるので、分野は広い。ヨーロッパでは、ドラマティック・リーディング(=劇読)として高い評価を得ているにもかかわらず、日本では耳慣れない。
 このため山内さんは、話芸の一分野であるこの朗読を、より高い芸能として認めてもらおうと励む。下北沢演劇祭参加各団体の中で山内さん主宰の放送表現教育センターが異色だったのもそのため。 このドラマティック・リーディング (DRアクターズ=DRA=劇読話芸集団) と、山内さんが20年以上続けている 「母と子の童話会」 が下北沢演劇祭の出演作品だった…。

■問合せ=放送表現教育センター
       TEL.03・3467・6871/FAX.03・3467・6873
       〒155・0031 世田谷区北沢2〜8〜13












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