全日本が沈黙してきた‘ルーツ’を言及「意外」
日王家に百済王室の血が混じっているという明仁日王の発言を、『朝日新聞』を除いた大部分の全国紙とテレビは一言も報道しなかった。日王自らが王室の「ルーツ」に触れたというニュース・バリューを考えると、異例なほどの沈黙だ。
ある日刊紙の王室担当記者は、報道をしない理由について「(日王の)個人的なお考えなため」と説明したが、当惑している様子だった。ある王室専門の評論家は「皇室の血統問題が公然と出現したことを避けるマスコミと保守的な指導層にとっては困惑しているだろう」と指摘する。
今回の発言が日本政府と事前の調整がなされた痕跡はなく、日王自らの判断によるものである可能性が高い。記者会見での質問は、慣例によって事前に提出する。しかし、宮内庁の実務者が準備した回答資料に「百済」や「武寧王」などの言葉はなかったと、いくつかの消息筋は伝えている。
王室問題に詳しいあるジャーナリストは「政府と関係のない個人の認識だとしても、政治的意味合いのない(日王の)発言としてはあり得ない」と指摘する。朝鮮半島に向けた日王の計算されたメッセージが込められていると見るべきだろう。
実際に、日王は韓国に対する関心が少なくはないことが知られている。ある韓国の外交通商部幹部は「日王と何回か接する機会があったが、韓日関係に熱意と興味を持っていることを感じてきた」という。
今年4月、東京で公演された韓国オペラ「ファン・ジニ」を日王夫妻が観覧したことが代表的な例だ。当時、教科書問題で駐日韓国大使が韓国に召還された状況で、日本政府内でも反対する意見が少なくはなかったが、結局観覧したことで、日王自らが決断したということだ。
英国的な「開かれた王室」路線を打ち出した日王には、韓国訪問が最後まで残された王室外交の宿題だ。日王は欧州、米国、中国はすべて訪問したが、韓国だけは公式招請(1998年の金大中大統領)を受けてもまだ足を踏み出せずにいる。
そのため、訪韓を実現させ、父親(裕仁日王)から受け継いだ過去の歴史という遺産を早く消化したいという可能性がある。しかし、絶好の機会として検討された2002年ワールドカップ・サッカーの開幕式である5月31日の訪韓は、すでに不可能になったとされている。
もちろん、今回の日王の発言は、学問的な新しい事実を明らかにしたのではない。ただ、数人の学者だけが認識していた「歴史的な事実」が、日王自らの口から「一般的な事実」として変化し、大衆的な伝播力を持つようになったという点で混乱は少なくないだろうと専門家たちは見ている。
ある外交消息筋は「単一民族と万世一系の神話に浸っている日本国民には衝撃的だろう。韓日両国国民の情緒にどのような影響を与えるか注目される」と指摘する。もちろん、「家父長的天皇制」を支持する国粋主義グループは、今回の発言には不満が大きいだろう。
東京=朴正薫(パク・ジョンフン)特派員
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