人工呼吸器などを使って自宅で療養する「超重症心身障害児」(20歳未満)のうち、医師の訪問診療を受けているのは7%にとどまることが、日本小児科学会倫理委員会の調査で分かった。また半数以上は家族だけで介護しており、重症児の家庭でのケアを支える体制の不十分さが浮かび上がった。東京都で開かれる日本小児科学会で25日、報告される。
調査は、重症心身障害児の中でも、脳性まひ、筋ジストロフィーなど日常的な医療対応が必要な超重症児・準超重症児の実態を探ることが目的。宮城、神奈川、大阪など8府県の病院や施設計202カ所を対象とし、160カ所の小児科医師らが回答した。
調査結果によると昨年5月現在、人工呼吸器を使ったり、管を胃に入れる栄養補給を受けている20歳未満の超重症児は判明分で1246人で、うち747人が在宅療養だった。
在宅療養での受診状況をみると、約9割の659人が通院しており、自宅で医師の訪問診療を受けていたのは49人(7%)に過ぎなかった。また、在宅での医療ケア担当者を尋ねたところ、訪問看護師が145人(19%)、ヘルパーは92人(12%)にとどまり、家族のみが半数以上と最多だった。具体的な医療ケアの内容は複数回答で、管を使った栄養補給が702人(94%)、たんの吸引が651人(87%)--などとなっている。
調査結果から推定すると、超重症児は全国で約7400人いると考えられるといい、これは成人前の人口1万人当たり3人の割合に相当する。その一方で訪問診療が少ないのは、診療報酬の対価の低さや、患者の居住地域が分散していて訪問の効率が悪いことなどが背景にあるという。
倫理委員会委員の杉本健郎びわこ学園理事(小児科)は「小児訪問診療や看護の体制が貧弱な現状では、患者が退院可能になっても、家族は負担が大きすぎて受け入れられない。国は在宅医療の施策を充実させるなどして、こうした課題を解決すべきだ」と話す。【下桐実雅子】
毎日新聞 2008年4月24日 東京夕刊