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【社会】光市の母子殺害 死刑判決 各局、冷静に速報2008年4月23日 07時06分
山口県光市で起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審で、広島高裁は二十二日、被告の元少年に死刑判決を言い渡した。この裁判をめぐる一連の放送について「感情的に制作された」と指摘した、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の意見を踏まえ、テレビは判決をどう伝えたのか。 (近藤晶) 午前十時の開廷に合わせ、NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビは、午前九時五十五分から特番を編成。テレビ朝日も情報番組「スーパーモーニング」の時間枠を拡大して同時刻から「特番」態勢で放送した。 ただ、裁判長が主文言い渡しを後回しにし、判決理由から述べたため、特番では、各局ともスタジオのキャスターらが裁判の経過や争点を解説。高裁前からの中継を交え、廷内での被害者遺族や被告の様子などを伝えた。 死刑が言い渡されたのは午後零時二分。NHKは定時ニュースで、日テレ、TBS、テレ朝は生放送の情報番組の中で速報した。「笑っていいとも!」を放送していたフジと海外ドラマを放送していたテレビ東京は、ニュース速報のテロップを流した。 BPOの放送倫理検証委員会が、判決前の十五日に発表した意見は、これまでの一連の放送について「『被告・弁護団』対『被害者遺族』という対立構図で描き、感情的に制作された」などと指摘。「公正性・正確性・公平性の原則から逸脱し、視聴者の知る権利を大きく阻害する」と懸念を示した。 審議対象となった番組は、昨年五−九月にNHK、民放キー局、読売テレビ、中国放送の八局で放送されたニュースや情報番組など二十番組計三十三本(総時間7時間30分)。意見では、個別の番組名は示されていないが、被告側の主張を「命ごいのシナリオ」と批判した番組などを例示。司会者やコメンテーターが被告側を批判し、被害者遺族に共感する番組の数々を「集団的過剰同調番組」と憂慮した。 委員の一人は「あまりに被害者側に偏り、裁判報道の前提が抜け落ちていたという点で、ニュース番組も情報系番組も構造的な問題は同じ」と指摘する。 同委員会は十五日、各局に意見を通知、裁判報道のあり方を自主的に検証するよう求めた。日テレの久保伸太郎社長は二十一日の定例会見で「真摯(しんし)に受け止め、文書で回答したい」と発言。 ■テレ朝では研修会実施 テレ朝の君和田正夫社長は二十二日の定例会見で「意見は重い内容を含んでいる」と述べ、十六日に報道局ディレクターらを対象に研修会を行ったことを明らかにした。 二十二日の判決は、生ワイドの情報系番組でも中継を交え、長時間放送。審議対象となったTBS「ピンポン!」とテレ朝「ワイド!スクランブル」のほか、日テレ「情報ライブミヤネ屋」、TBS「2時っチャオ!」も裁判報道に時間を割いた。 特番も情報系番組も全般的には事件経過や争点、少年事件の量刑基準など裁判全体の流れを伝えようとする構成で、キャスターやコメンテーターらのコメントも比較的冷静だった印象だ。ある番組では、被告の内面に迫ろうと拘置中の被告に記者が面会した時の内容を伝えるなど、BPOの意見が生かされた面もあった。 ■一部番組ではなお過剰演出 しかし、一部番組では、事件の経過を説明するVTRなどで、モザイクをかけた元少年の顔写真や過剰に感情移入したナレーションも見受けられた。こうした演出手法については議論が分かれそうだ。 被害者遺族の本村洋さん(32)は、判決後の会見で「(死刑判決を)被告がどのように思ったかは分からない。そうした被告の心境や悔悟の弁をくみ取る報道機関があってもいいと思う」とも述べた。 来年五月には裁判員制度がスタートすることもあり、BPOは来月三十日、事件報道や裁判報道のあり方を議論するシンポジウムを開催する予定だ。 (東京新聞)
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