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論説
ドクターヘリ/全国を網羅する体制を
掲載日:2008-4-24 11:48:00

 日本農業新聞くらし面は4月、企画「地域医療崩壊防げ」で、長野県のドクターヘリコプター(ドクターヘリ)の活躍ぶりをルポした。ドクターヘリは医療機器を備えている。強みは医師や看護師を乗せて救急現場に駆けつけ、患者を救命救急センターへ搬送する間も救命措置ができることだ。さらに時速200キロで飛び、道路の渋滞にも影響されない。しかし、全国への普及は遅れている。医師不足などで、地域医療が崩れかけている現在、全国を網羅する体制を早く整備し、救急医療の充実につなげるべきだ。ドクターヘリは、へき地の医療にも貢献できる。

 救急医療は時間との勝負である。ドクターヘリの活用は救命率を上げる。厚生労働省の「救急医療用ヘリコプターの導入促進にかかわる諸課題に関する検討会」の報告書によると、ドクターヘリは消防機関などから出動の要請があって治療を始めるまでの時間が平均14分。救急車と比べ平均27.2分早い。救急車を補完する意味でも、ドクターヘリは必要だ。

 ドクターヘリの導入を促進する事業は、同省が2001年4月に始めた。救急患者の救命率と、広域搬送体制の向上が狙いだ。5年間で全国30カ所に整備すると打ち出しているが、まだ北海道、福島、埼玉、千葉、神奈川、長野、静岡、愛知、大阪、和歌山、岡山、福岡、長崎の13道府県にとどまっている。7年たったのに、目標の半分に満たない。

 普及しない最大の要因は、県が負担する運航費だといわれている。年間の運航費は、1カ所当たり基準額で約1億7000万円。これを県は、国と折半している。救急専門医などの養成や、ヘリポート整備などにも費用がかかる。財政規模が小さい県ほど整備が進まない。そして、このような県ほど、救命救急センターまでの距離が遠い地区を多く抱える。医療の地域格差をこれ以上生じさせないために、負担の仕組みを変えなくてはならない。

 07年6月、議員立法で「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」、いわゆる「ドクターヘリ法」が成立した。同法は民間から基金を募り、助成金交付事業をする非営利法人を創設することを盛り込んだ。県の負担を減らし、運航への動きを加速させようというわけだが、企業などの経営が厳しい中、十分な基金が確保できるか疑問がある。

 運航費を健康保険や労災保険で賄うことは、今回の特措法では見送られた。ドクターヘリの先進国であるフランスでは、ヘリコプター救急を医療の一部として位置付け、全額を国の予算で賄っている。自民党、公明党の連立政権合意でも、配備促進は重要課題の一つになっている。全国への配備が一刻も早く実現するよう、負担を減らす対策に知恵を絞ってほしい。


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