テレビやラジオで使用する音楽の放送使用料を巡り、公正取引委員会が23日、社団法人「日本音楽著作権協会」(JASRAC)を独占禁止法違反(私的独占)の疑いで立ち入り検査したことで、市場の約99%のシェアを占めるJASRACの独占状態が変化する可能性が出てきた。
JASRACは1979年から、NHKや民放各局と「包括的利用許諾契約」を結んでいる。番組などで使用する個々の楽曲の使用料で契約するとチェックが煩雑になるため、この契約では実際に何回楽曲を放送したかではなく、放送事業収入(NHKは受信料収入)の1.5%を放送使用料として徴収する。
公取委はこの契約が他の業者参入を阻んでいる「私的独占」とみているが、JASRAC側は「すべての使用を把握するのは、放送局側の負担が増える。米英など先進諸国もこの包括契約だ」と反論している。
一方、音楽業界ではインターネットによる音楽配信が急速に拡大している。ネット上のインタラクティブ配信では、著作権管理事業者が音楽配信会社から配信実績の全データを入手し、著作権使用料を詳細に計算することが可能になっている。
音楽著作権管理会社「ジャパン・ライツ・クリアランス」の荒川祐二社長は「JASRAC側に『新規参入を阻害していた』意識はないと思うが、古い慣習に縛られていた結果、『阻害した』とみられたのかもしれない。放送も通信との融合が進めば、著作権使用料を逐一カウントできる環境になる可能性はある。今回の(公取委による)立ち入り検査が、これまでの慣習やルールを見直す機会になればいいのでは」と話している。【苅田伸宏、岸桂子】
毎日新聞 2008年4月24日 2時30分(最終更新 4月24日 2時30分)