▼仁木立・日本福祉大学教授(医療経済・政策学) 〈国際的にみると、小泉政権下の五年間でGDPに対する日本の医療費の水準は、G7諸国の中で最低になってしまった。その一方で、医療費中の患者負担の割合は最も高いという歪んだ傾向が強まった。今回の改革で歪みが深刻になる〉(前掲「週刊東洋経済」) ▼荻原博子・経済ジャーナリスト 「経済的な不安と言えば、高齢者にふりかかってくるのは、医療費の負担増だけではない。税金面では、すでに老年者控除の廃止や公的年金等控除の縮小などで八万円前後の増税パンチを受けている老人家庭は少なくなく、さらに今年は、定率減税全廃のパンチを受け、その先には消費税アップが待ち構えている」(「文藝春秋」〇七年三月号より抜粋) ▼遠藤邦夫・矢野経済研究所医療事業戦略部主任研究員 〈〇七年一〜三月の医療機関の倒産件数は二八件で、〇一年以降最多ペースで推移している。仮に〇八年の診療報酬改定が〇六年改定のように引き下げとなれば、日本の医療提供体制が揺らぎかねない危険がある。厚労省が危惧している医療費破綻の前に、多くの医療機関が破綻したり、満足な医療提供を行えないという事態にもなりかねない〉(「エコノミスト」〇七年八月二一日号) ▼NPO法人「医療制度研究会」代表理事の本田宏済生会栗橋病院副院長 〈いま必要なのは、医療の「地方分権」だ。各地域で、病院と診療所、開業医が連携して役割分担を決め、独自の医療システムを構築してほしい〉(前掲読売新聞) いずれにせよ、医師不足、医療崩壊といった言葉で象徴される日本の医療危機が本当だとすれば、無責任な政治や官僚にまかせておく時代は過去のものと考えるべきであろう。 『大学病院のウラは墓場』(幻冬舎新書)の著者で、外科医出身の作家、久坂部羊氏はこう見ている。 〈現在の医療に不満のある行政・マスコミ・世論は、簡単には医師を優遇しない。もちろん、医師がよい医療を提供するなら、優遇にやぶさかではないだろう。しかし、その保証がないかぎり、先に優遇だけをよくするわけにはいかない。医師は自分たちが正当な扱い(優遇)を受ければ、よい医療を提供すると主張する。優遇が先か、よい医療が先か。まるで、援助と核廃絶をめぐる北朝鮮との交渉のようだ〉(「中央公論」〇七年六月号)
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