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光市母子殺害事件の死刑判決=国民に分かりにくい最近の裁判

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【PJ 2008年04月24日】− 光市母子殺害事件の差し戻し審において広島高裁(楢崎康英裁判長)は22日、「死刑を回避すべき事情は認められない」とし、無期懲役の1審判決を破棄、求刑通りに死刑判決を下した。

 判決後の記者会見で被告側弁護団は「裁判所は被告人の心を完全に見誤っている」、「18歳1カ月という未熟な未成年の犯行ということを真正面からとらえていない判決だ」「裁判所は本当のことを話したいという被告の姿勢を逆手に取っている」など「不当判決」であると批判し、即日、上告の申し立てをした。こうした弁護団の裁判所批判の言葉にわたしは何ら心を動かされることはなかったし、世間も予想した死刑判決が当然のように下されたことに何の違和感もなかった。

 しかし、安田好弘弁護士に「従来の判例の適用を間違っている。永山判決を逸脱し、最高裁が手続きをふまえずに判例を変更し、高裁がそのままのっとった」「最高裁の判決に忠実に従った極めて不当な判決だ」と語らせた本裁判に対する最高裁判所の対応には、別の意味で大きな不満と分かりづらさを覚えているのも事実である。

 2006年6月に最高裁は上告審判決で「少年だったことは死刑回避の決定的事情とまでは言え」ず、「量刑は甚だしく不当」として二審判決を破棄し、審理を広島高裁に差し戻した。そのときわたしは、「そこ(元少年の責任は誠に重大で、特に酌むべき事情がない限り死刑を選択するほかない)まで言うのならなぜ、審理差し戻しなのか、なぜ、最高裁が自判(じはん)しないのか」と、首を捻(ひね)らざるを得なかった。

 当時、メディアでは、高裁でさらなる「更生の可能性についての審議を深める必要」があるとの解説がなされていたが、最高裁は「(二審判決の)量刑(無期懲役)は甚だしく不当で、破棄しなければ著しく正義に反する」とまで言い切ったのである。世間の常識であれば、自判による「死刑」判決が下されるのが自然であると思えたのだが、それはわたしが司法の素人だったからなのだろうか。

 そのときあらたな判断を示しておれば、今回、永山判決を逸脱したなどという批判を浴びることなどなかったはずである。最高裁の自判回避は自ら手を下したくないという腰の引けた姿勢にしか見えず、法の最後の番人として責任を全うしないものであると思ったものである。

 原告側の本村洋氏が「ここまで7年。これから高裁へ戻され、また上告して最高裁へ。どれだけの歳月が流れるのか」「無期懲役を最高裁が妥当と思わないのなら、差し戻しでなく自ら死刑判決を下してほしかった」と、当時、述懐したが、その言葉の重みをわれわれは、いま、あらためて思い起こす必要がある。

 一方でこの4月17日、自衛隊のイラク派兵差止等請求控訴事件における名古屋高裁(青山邦夫裁判長)の判決が下った。判決主文、「1.本件控訴をいずれも棄却する 2.控訴費用は控訴人らの負担とする」とする国側の勝訴となった。

 しかし主文に続く「事実及び理由」において、首都バグダッドは「イラク特措法にいう戦闘地域に該当する」として、「イラクで行われている空輸活動は、憲法9条に違反する活動を含んでいる」としたため、原告側が「自衛隊イラク派兵は憲法違反」・「画期的判決」で実質勝訴と沸き上がったのはつい先日のことである。

 名古屋高裁は「事実及び理由」の第3「当裁判所の判断」において「控訴人らの本件違憲確認請求及び本件差止請求にかかる訴えはいずれも不適法であるから却下すべき(中略)と判断するが、その理由は以下のとおりである」とした。そうであれば、訴えの不適法である理由のみを述べればよいわけで、憲法判断をわざわざここでする必要はない。

 航空自衛隊によるバグダッドへの空輸活動が違憲であると判断したのであれば、控訴人が請求したように「派遣してはならない」のだから、裁判所は自衛隊の即刻帰還を言うべきであろう。法律の専門的なことは素人のわたしにはよく分からぬが、違憲であれば、自衛隊は戻ってくるのが筋と考えるのは誰でも分かる理屈ではないのか。しかし、この訴訟は国の勝訴であり、国は違憲判断に対する対抗措置の講じようもないのが実際のところである。

 そもそも国の根本である憲法解釈については、正攻法の堂々たる法廷論議を重ねるべきだと考える。特に憲法第9条は改憲議論における中核テーマである。そうした国民の最も関心の深い事柄について、言うだけ言って反論を許さぬ名古屋高裁のあり方や姿勢は、どう考えてもおかしい。光市事件での最高裁の自判回避や違憲だが自衛隊はイラクから戻る必要はないといった裁判所の判断や姿勢は、法曹界の玄人には至極、当然のことということなのだろうか。

 来年の5月21日からいよいよ裁判員制度がスタートする。そうした時機に立て続けに起きた分かりづらい裁判所の判決と判断。こんなことで、裁判所は「国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています」とする裁判員制度導入の目的が本当に果たされるとでも思っているのだろうか。最近のこの分かりづらい裁判を見ると、わたしはどう考えてもそんなことはできるはずがないと思われてきて仕方がないのだが。【了】

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パブリック・ジャーナリスト 野田 博明【 東京都 】
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