「特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」と最高裁から審理のやり直しを命じられた山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審で、広島高裁は殺人罪などに問われた元少年に求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は判決を不服として上告した。
被告は現在、二十七歳になっている。犯行時は十八歳一カ月だった者に死刑を適用するかどうかが最大の焦点だった。判決は「極めて短絡的かつ自己中心的な犯行である。動機や経緯に酌量すべき点はみじんもない」と最高裁の指摘を踏まえた上で、年齢問題について「犯行の質、動機などを考えると死刑の選択を回避するに足りる事情とまではいえない」とした。
最高裁は年齢問題に関して「相応の考慮を払うべき事情だが、死刑回避の決定的事情とまではいえない」との解釈を示していた。高裁の判断はこれに沿った内容といえる。
凶悪犯罪に対する厳罰化への世論の高まりを背景に、結果の重大性に重きを置く流れが加速するとみられる。相次ぐ少年による重大事件の審理にも影響を与えよう。
事件は一九九九年四月に起きた。光市の会社員宅で二十三歳の妻と生後十一カ月の長女が殺害され、近所に住む被告が逮捕された。少年による残忍な犯行は、社会に衝撃を与えた。
一審で被告は起訴事実を認め、山口地裁は「死刑を検討すべき事案」とした。しかし、殺害に計画性がない点や、死刑を適用できる年齢の十八歳になったばかりで更生の可能性があることなどを考慮し、無期懲役を言い渡した。二審もこれを支持したが、検察側が死刑を求めて上告した。
今回は審理のやり直しを命じた最高裁に続く四度目の裁判だった。差し戻し審になって新たに弁護団が結成され、殺意の否認に転じた。劣悪な家庭環境で精神的に未成熟だったなどとも主張し、死刑回避を訴えた。
判決は殺意を否定した被告の新供述について「事実と違うのなら、起訴後六年半にわたり黙っていたのは不自然で不合理」と殺意を認めた。さらに殺害までは計画していなかったことなども死刑回避の理由にならないと結論付けた。
差し戻し審は元少年への死刑適用の是非をめぐり、全国的に議論を呼び起こした。報道の在り方も大きな問題になった。来年五月以降に始まる市民参加の裁判員裁判に一石を投じたのは間違いあるまい。厳罰化の流れをどう受け止めるかが国民に問われている。
文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が一斉に実施され、全国の小学六年と中学三年の計約二百三十二万三千人がテストを受けた。岡山県内では計約三万七千人が参加した。
学年全員が受けるテストは、昨年四十三年ぶりに復活した。国語と算数・数学の二教科で基礎的知識を問うA問題と、知識の活用力を問うB問題が出題された。併せて子どもの生活習慣などのアンケートや、学校側に授業の状況などを聞く調査も実施した。正答率との相関関係なども調べる。結果は九月をめどに発表の予定だ。
昨年の結果では、基礎的知識での正答率は高く、応用力が相対的に低かったことも分かった。各都道府県別にも公表された。岡山県は教科・問題別で全国平均をやや下回る項目が多く、広島、香川県は全項目で平均以上だった。
各教育委員会は、学力向上へ指導方法改善などの取り組みを始めている。岡山県は、本年度から小中学校の算数・数学で単元ごとの小テスト実施やモデル授業、教員OBの派遣などの対策を打ち出した。広島県は、教員研修に活用するため授業を収録したDVDを作製した。香川県では、家庭学習の習慣づけのための事例集をつくった。
前回テストでは、校長らが試験中に児童の誤答案を指さすなどの不正が起きた。今回も学力テストの類似問題をつくってホームページに掲載した県もあった。点数に一喜一憂して競争激化を招かぬよう注意したい。
むしろテスト結果を客観的なデータとして活用することで、指導に適した学級人数や教員配置など、教育施策の改善、充実に生かさねばならない。継続した改善を怠らないことが重要である。
(2008年4月23日掲載)