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光母子殺害:元少年に死刑判決 広島高裁

硬い表情で広島高裁に入る本村洋さん=広島市中区で2008年4月22日午前9時41分、金澤稔撮影
硬い表情で広島高裁に入る本村洋さん=広島市中区で2008年4月22日午前9時41分、金澤稔撮影

 山口県光市で99年4月、母子を殺害したとして殺人と強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた当時18歳の元少年(27)に対する差し戻し控訴審の判決公判が22日、広島高裁であり、楢崎康英裁判長は無期懲役とした1審・山口地裁判決を破棄し、求刑通り死刑を言い渡した。元少年側の主張をすべて否定し、「犯行は冷酷、残忍にして非人間的な所業。特に死刑を回避すべき事情は認められない」と述べた。弁護側は「判決には事実誤認がある」として上告した。

 判決は、元少年が殺意や強姦の意図がなかったとした新供述を「不自然で不合理」と退け、「無期懲役とした1、2審は改善更生を願ったものだが、その期待を裏切り、死刑を免れるために供述を一変させた」と批判した。

 また、元少年の年齢は「量刑上、考慮すべきだが、犯行の罪質、動機、態様に照らすと死刑を回避する事情とまでは言えない」と述べた。少年法は18歳未満の被告に死刑を科すことを禁じており、事件当時18歳30日だった元少年は、最高裁に記録が残る66年以降で最年少となる。

 判決によると、元少年は99年4月14日、光市のアパートに住む会社員、本村洋さん(32)方に排水検査を装って上がり込み、妻の弥生さん(当時23歳)を強姦目的で襲い、抵抗されたため手で首を絞めて殺害。泣き続ける長女夕夏ちゃん(同11カ月)を床にたたきつけた上、首にひもを巻き付けて絞殺した。

 元少年は1、2審で殺意や強姦の意図を認めたが、差し戻し審で否認に転じ、弥生さん殺害について「甘えたい気持ちで抱きつき、反撃され押さえつけたら動かなくなった」と主張。夕夏ちゃん殺害も「泣きやまないので抱いてあやしていたら落とした」と新たに供述した。弁護団は傷害致死罪適用が相当として、死刑回避を求めていた。

 判決は新供述の信用性について、「上告審の期日が指定されるまで296回も弁護人と接見しながら、起訴から6年以上して新たな供述を始めたのは不自然」と否定。その上で、弥生さんの殺害について元少年が「押し倒して逆手で首を押さえているうちに亡くなった」と主張した点について「死体所見と整合せず不自然。そのような体勢で圧迫死させるのは困難」と認定した。

 強姦行為に関して「弥生さんを生き返らせるため」と主張した点についても、「荒唐無稽(こうとうむけい)な発想であり、性欲を満たすための行為と推認できる」と退けた。夕夏ちゃんへの殺意を否認した供述の信用性も否定した。

 最高裁は06年、「量刑は不当で、著しく正義に反する」として審理を高裁に差し戻していた。最高裁が2審の無期懲役判決を破棄した差し戻し審で死刑判決が出されたのは、今回が戦後3件目。他の2件は死刑が確定している。【大沢瑞季、安部拓輝、川辺康広】

 ◇9年は長かった

 ▽本村洋さんの話 判決は疑問をすべて解消してくれ、厳粛な気持ちで受け止めている。遺族にとって9年の月日は長かった。事件で私の妻子と(死刑判決を受けた)被告の3人の命が奪われることになったが、これは社会にとっては明らかに不利益だ。判決を、どうすれば安全で平和な社会をつくれるか考える契機にしたい。

 ◇判決には著しい事実誤認

 ▽安田好弘・主任弁護人の話 判決は殺害方法などで著しく正義に反する事実誤認があり、量刑も不当だ。元少年は最高裁弁論が始まる約2年前から強姦や殺害目的はなかったと話しており、差し戻し審で初めて出たのではない。元少年がなぜ事件を起こしたかの疑問に、正面から向き合っていない判決だ。

毎日新聞 2008年4月22日 10時36分(最終更新 4月22日 21時50分)

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