「検察のメンツを立てることしか考えない。これが今の東京高裁の現状で、ばかばかしくて笑うしかない」。強制執行妨害罪に問われ、東京高裁で二十三日、逆転有罪とされた弁護士の安田好弘被告(60)。判決後、記者団に囲まれると、吐き捨てるように語った。
「被告人を罰金五十万円に処する」。午後一時半、判決宣告の冒頭で池田耕平裁判長が主文を述べると、満員の傍聴席や数十人の弁護団から「えっ」「不当判決だ」という声が上がった。
紺のブレザーに白のシャツ姿の安田被告は仏頂面のまま。四時間近くかかった判決理由朗読の間、弁護人席の端に座って片手でほおづえをつき、時折メモをとった。途中、池田裁判長が「反省の態度がみじんも感じられない」などと指摘すると苦笑した。
前日に広島高裁が死刑判決を言い渡した光市の母子殺害事件では、元少年の主任弁護人として、記者会見で激しい裁判所批判を繰り広げたが、自身が被告になったこの日は一転し、判決後の会見を欠席した。
弁護団は会見で「東京高裁だから有罪になったとしか言いようがない。検察はたった五十万円のために二百九十六日も身柄を拘束したことになり、異常だ。これが司法の現実」と怒りを込めて話した。
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