野村証券企業情報部に所属していた社員ら中国人三人が企業の株式交換情報などを基に株のインサイダー取引をしていた疑いがあるとして、東京地検特捜部は二十二日、証券取引法(現金融商品取引法)違反容疑で、野村証券社員の〓瑜容疑者(30)=同日付解雇=ら三人を逮捕した。
証券最大手の中枢で起きた不祥事で、金融庁は二十二日、野村証券に対する行政処分の検討を開始。野村証券の渡部賢一社長は同日夜、記者会見して謝罪した。
〓容疑者は香港にある野村証券の現地法人に勤務。二十二日朝からの証券取引等監視委員会の事情聴取に大筋で容疑を認めた。
ほかに逮捕されたのは、知人の会社員蘇春光(37)=千葉県市川市=と、弟の留学生蘇春成(25)=京都市左京区=の両容疑者。三人は、二十一銘柄で不正取引を繰り返し、五千万円弱の不正利益を上げた疑いがあるという。
〓容疑者は昨年十二月まで、企業の合併・買収(M&A)や株式公開買い付け(TOB)などを担当する企業情報部に在籍。職務上知り得た未公開情報を蘇兄弟に伝えて株取引をさせていたとみられる。
調べによると、三人は、富士通が株式交換で「富士通デバイス」を完全子会社化するという情報を入手し昨年五月、デバイス社の株計七千株を約千百六十九万円で購入した疑い。
株式交換が公表されると、株価は急騰。三人は約四百九十万円の不正利益を上げたという。
○六年の王子製紙による北越製紙株のTOBの際も、蘇兄弟が公表前から北越株を買い付けていた形跡が確認された。
〓容疑者と蘇春光容疑者は同じ時期に京都大に留学。留学生の親睦(しんぼく)組織などを通じて知り合ったとみられる。〓容疑者が取引銘柄を指示したり、取引資金を提供するなどしており、特捜部は利益を還流させていたとみている。
監視委は同日朝から事情聴取を始め、蘇春光、春成両容疑者らの自宅などを強制調査。野村証券企業情報部も任意で調査した。
【お断り】文中の〓は部首「がんだれ」に「萬」を書く漢字ですが、JISコードにないため表示できません。
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