道連れ
June 30 [Thu], 2005, 17:33
【50/50 ver.A】 / 46 道連れ : 050630 : 魔人探偵脳噛ネウロ : ネ+弥
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いろいろやってきたけど、これだけは初めてだからすこし心配だなぁ…
僅かに浮かべた笑みはそれでも、いつもとなんら変わりのあるものには見えなかった。
「人間であるきさまにははじめてだろうが…」
なに?
「…いや」それでも不安とは言わぬのがいかにもおまえらしい。
などと。
我輩らしからぬ言い様はこれ以上吐いても仕方が無い。
「…なにが可笑しい」
ふふ...ごめん。だって豆腐以外のあつかいしてくれたの、はじめてじゃない?ちょっと感動しちゃった。
…ほら、すでに目の前の女には見抜かれている。
「腐った豆腐じゃ何の役にも立たん」
…腐った、って…もう!
そんなすぐには腐らないよっ。それにつかうって、あんたねえ…
「なんだ」
あたしは魔界なんかにはいかないの。
死んだあとまであんだに仕えてろっての?
………声を震わすきさまを見たのは、生命たる蝋燭があといくばくもしない内に燃え尽きるのだと、歪な笑みを浮かべて告げた時以来だ。
あの表情を寸分違わぬまま今も造るきさまは、やはり如何し様のない豆腐だ。
馬鹿者め。
望んでもゆけぬ世界に、誰がきさまなぞを連れてゆくものか。
「心の臓の脈打つ限り、精一杯我輩の僕として己が生を謳歌すると好い。
ただの肉塊と成り果てたのちも然るべき処理を施してやるから、案ずる事は何もないぞ」
なによそれ。
…でも、そっか…
なにをニマニマと…気色の悪い豆腐め。
な、失礼なっ。
せっかくあたしが本当に最後まであんたにつきあってやるかっていう、そういう自己犠牲の精神をかためてたのに!
ホント、あんたってどこまでもあんたよね!ネウロ!
フン。
鼻で哂ってやっただけなのに、何がそんなに可笑しいのか、声をたてて笑い出した。
くすくす、くすくす、…
くすくす、くすくす、…
この世界にほんのり浮かぶ腐った百合の群生の、まるでささめきのような声だけが、いつまでも聴こえていた。
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