岡山県内ではこの春、瀬戸大橋と岡山空港が二十歳を迎え、記念イベントで大いに盛り上がった。実は二十年前、これらの大プロジェクトとともに、県民の期待を受けて完成した施設に県立美術館があるのをご存じだろうか。
開館記念日(三月十八日)は既に過ぎているが、四月十五日から記念展「建築家岡田新一と岡山県立美術館20年」が開かれている(五月十八日まで)。
同美術館や岡山市立オリエント美術館、最高裁判所など多数の公共建築を手掛けた岡田氏の仕事とともに、県立美術館が収集してきた室町時代の雪舟から近代の国吉康雄、現代作家らの作品を展示。二十年間に開かれた、今展を含む二百十九の展覧会リストやポスターも紹介されている。
近年は予算も限られ大規模展は減り、入館者数の低迷が続くなど美術館をめぐる状況は厳しい。しかし、こうしてこれまでの歩みを回顧してみると、郷土の美術館としてゆかりの作家の検証など重要な役割を果たしてきたことがよく分かる。
同美術館では原点に立ち返り、本年度から「美術館ルネサンス」と銘打って「県民とともに創(つく)る美術館を目指す」という。街づくりにおける建築の重要性を示す岡田展では、氏が同美術館に込めた、県天神山文化プラザなど周辺文化施設との回遊性という建築思想が再確認できる。
地域社会の中で館がどうかかわり、収蔵品をどう生かすのか。その役割をあらためて見直すときだろう。成人した美術館の責任は当然ながら重い。
(文化家庭部・金居幹雄)