福田康夫首相は、就任後初めて来日した韓国の李明博大統領と官邸で会談し「日韓新時代」へ向け、両国関係を「一層成熟したパートナーシップ関係に格上げする」ことで合意した。
韓国大統領の来日は、二〇〇四年十二月の盧武鉉大統領(当時)以来、三年四カ月ぶりだ。両首脳は、今年二月のソウルでの初会談で、〇五年に中断した日韓首脳による年一回程度の相互訪問「シャトル外交」を再開させることで合意し、今回がその第一弾となった。首脳間の信頼醸成に確かな足がかりを得たものと歓迎したい。
会談後の共同記者会見で、両首脳は「朝鮮半島非核化へ日韓、日米韓が緊密に協力する」「経済連携協定(EPA)締結交渉の再開に向けた実務者協議を六月中に開催する」「日中韓三カ国の地域協力の必要性を確認し、年内に三カ国首脳会議を日本で開く」などを盛り込んだ共同プレス文書を発表した。
北朝鮮の核問題では、北朝鮮による「完全かつ正確な核計画申告」の早期履行が重要との認識で一致した。懸案の拉致問題への取り組みも、解決に向けた連携強化が期待されよう。
中断しているEPA締結交渉の再開問題は、韓国経済界に反対論が根強いと言われる。今後の交渉は楽観できまいが、相互に協力して互恵の方向を探るべきだろう。
国際的課題での共同対処を目指し「日韓新時代共同研究プロジェクト」の開始を発表したことも評価したい。二国間だけでなく、アジア、世界の中で果たすべき役割を考えながら、新たな日韓関係を構築していく視点は欠かせまい。
このほか、地球温暖化対策では、京都議定書に定めのない一三年以降の新たな国際枠組みづくりに日韓が積極的に参加し、緊密に協力していく方針を確認した。
歴史認識問題に関し、大統領は共同会見で「過去を直視し共同のビジョンを持ちながら、未来に向かわなければいけない」と未来志向の関係構築を目指す姿勢を強調した。また、大統領が在日韓国人の地方参政権付与への積極的な努力を要請したのに対し、首相は「国会での議論の行方に注意を払っていきたい」と応じた。
着実なシャトル外交の実施を目指し、今年後半には首相が訪韓することも確認された。両国には歴史認識や竹島(韓国名・独島)領有権問題などをめぐって溝が横たわるだけに対話が必要だ。成熟した関係を維持し、具体的な成果を挙げながらきずなを深めていくことが求められる。
中央教育審議会は初の教育振興基本計画を渡海紀三朗文部科学相に答申したが、実現性を担保する肝心な数値が盛り込まれず物足りない内容となった。
基本計画は二〇〇六年の改正教育基本法で、新たに政府に策定が義務付けられた。十年先を見通し、今後五年間で進める教育の目標を定めるものだ。
答申は日本が発展していく原動力は「人づくりをおいて他にない」とし、あらためて「教育立国」を宣言して教育振興に取り組むよう求め、七十五の施策を示した。このうち重点的に取り組むべき事項には「確かな学力の保証」など九つの目標と二十二施策を挙げている。
しかし、施策の裏付けとなる教育予算の拡充については「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)のない教育水準を確保すべく充実を図っていくことが必要だ」との表現にとどまり、具体的な数値は示されていない。「確かな学力の保証」や、同じく重点に据える「教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり」にしても、教職員定数の改善や施設の充実などを指摘しながら、教育投資額や増員目標数は盛り込まれず迫力に乏しい。
財務省と文科省の調整が付かなかったためとされるが、省庁間の協議通りに答申したのでは審議会の意味はなかろう。授業時間や学習内容が増加する中で教育効果を高めるには、教師が子どもたちと向き合い十分に指導できる環境整備が必要だ。
裏付けもなく多様な取り組みを求められたのでは、現場は混乱するばかりで逆効果ともなりかねない。中教審は目指す教育と必要な投資をきちんと示し、実現への強いメッセージを発すべきだった。教育という将来への重要な投資をおろそかにしては、「教育立国」実現は到底おぼつかない。
(2008年4月22日掲載)