このウェブサイトは、2007年夏撮影後、編集途中で製作が中断されている映画『GOTH』の完成と公開に向けて、そして映画『GOTH』を放置している自称映画プロデューサー・山田俊輔氏と、この人物に関係する映画界をめぐる疑惑と責任を追及する目的から、映画監督・高橋玄の全責任において公開するものです。

以下 ダイジェスト版
※ さらに詳しい経緯を公開する「全長版」は、いましばらくお待ち下さい。


映画『GOTH』プロデューサー・山田俊輔氏とは何者か?


角川ピクチャーゴールド(以下、角川PG。東京都渋谷区渋谷1−3−8 第二栄来ビル3F)代表取締役社長で映画投資マネージャーを名乗る・山田俊輔氏は、高名な映画プロデューサー・原正人氏(『乱』『戦場のメリークリスマス』『リング』『失楽園』『金融腐食列島・呪縛』『突入せよ!あさま山荘事件』等多数)の息子でもある。
同じ映画業界において、同姓では不都合が生じるためなのか家庭の事情なのか、息子の俊輔氏は「山田」の通名を使用しているものの、原=山田の肉親関係は日本映画業界では周知の事実である。

原正人氏は洋画配給会社の宣伝マンから叩き上げた苦労人で、映画史に名を残す多数の映画を生んだ日本映画を代表するプロデューサーのひとりである。
しかし、その父親の威光と人脈に能力以上の社会的立場と資本を与えられ、いずれの事業も中途半端に放り投げているような自称映画プロデューサーが山田俊輔氏である。映画界のパラサイトとでもいおうか。

山田氏は、映画専門の投資ファンドマネージャーとして、実父・原正人氏が取締役会長を務めるシネマ・インヴェストメント株式会社(前出・角川PGと同所在地)では取締役の地位にあるが、彼は自身(の会社)が出資している映画すら自分では観てもいないというから、初めから映画人とはいえないような存在である。
山田氏は「だって年間30本も40本も投資する映画があって、観ていられないですよ。これはトップシークレットですけどね」と釈明していたが、要するに、映画を生み出して育てビジネスや芸術的評価を築いていく本来の映画プロデューサーなのではなく、山田氏は人から預かった資金をヘタな鉄砲のごとくにカネをばらまき、その利回りを利益にするという金融屋なのである。山田氏の名前がまともに「プロデューサー」と冠せられている映画は、ほとんどが父・原正人の手掛けたものであり、わが子かわいさで必死に虚飾の実績を与え続けた原氏の苦労がうかがえる。
こうしたことから、山田氏が「原さんのお坊ちゃま」と揶揄されているのも映画界の常識だが、自覚がないのは山田氏本人だけである。関係者も高齢の原氏が気の毒で山田氏への苦言も控えるような始末である。私も仮にも人の親なので原氏には同情するばかりだが、血縁をべつにしても、原氏は山田氏の上司でもあるのだから社会的な監督責任を問われても仕方がないだろう。



映画『GOTH』における、山田俊輔氏の犯罪的暴挙


この山田俊輔氏が製作に乗り出した企画が、人気作家・乙一(おついち)氏の代表作『GOTH(ゴス)』(角川書店刊)の映画化であった。

この映画は、2007年7月27日クランク・イン、8月18日まで撮影され、現在は編集中のまま製作が中断している。
中断の理由は、私が、山田氏の違法行為に対して言及する内容証明郵便を、代理人弁護士を通じて山田氏と角川映画取締役・E氏に送達したことから、対応に困窮した山田氏が事実上、事態を放置しているからである。




実は山田氏は、2007年6月30日までに撮影が開始されなければ同映画の製作権限を失うという条件を角川映画から告げられた。
同原作は、すでに2008年にハリウッドでも映画化されることが決まっているほど、国際的にも注目される小説であり、この映画化はビジネスとしても勝算が高い企画であった。
自己権益のために同映画を自分で製作したかった山田氏は、角川映画に対して「6月30日にクランク・インした」と虚偽報告を為し、映画化権を詐取したのである。
実際の撮影は1ヶ月後の7月27日であり、6月30日には脚本すら完成されていなかった。この山田氏のウソの辻褄合わせのためだけに、同映画はデタラメな準備不足と劣悪な撮影現場のまま撮影が強行された。
予算1億円の映画としては撮影期間も21日間と短いが、これについても山田氏は「6月30日にインしたといったので、クランク・アップまでの撮影期間があまり長いとウソがばれる」と発言。

それでも私がこの映画を担当したのは、山田氏の映画化権詐取の事実を知らされていなかったことと、当初、山田氏が「今後の映画がある」などと甘言を弄して、包括的な関係性を主張していたことを信じ、すでに山田氏の依頼で企画書作成やプロット執筆等を手掛けその対価も受領していたことによる。
通常、製作者と監督が締結する監督受任契約書も、山田氏は信頼関係を理由に作成を拒否、それまで私に依頼していた仕事に関しても、一切の契約書作成を断っていた。

ところが、撮影後に山田氏の背任行為を知った私が言及したところ、山田氏はそれまでに支払った私に対する労働対価を「融資金だった」と開き直り、デタラメな製作管理についても「選択の余地はなかった」などと自分の過失を正当化する。
山田氏が契約書作成を拒否した真意はここにあるのではないだろうか。

「角川」の看板で相手を信用させ、自己権益の具として利用したあとで露呈した事実を言及されれば、なし崩し的に事態をうやむやに出来るように、法的に有効な契約を意図的に締結しないという手段で、詐欺的行為を常に繰り返しているのである。
しかも、山田氏自身はそれらを「信頼していたから契約しなかった」などと自己美化に終始するが、金銭貸借契約もなく、労働対価を融資金につけかえるような人物のどこに信頼があるのだろうか。

信頼関係のわりには、山田氏が払った私の監督料は『GOTH』製作費1億円という予算の1%に過ぎない。その常識外に廉価な報酬金額については、私自身が納得したことだったが、それはあくまでも山田氏の「今後も2、3本の映画を作りましょう」という虚言を真に受けていたからでもあった。
それにしても、山田氏は監督料は支払ったものの、私が書いた脚本については勝手に無料にしている。これも山田氏の「今後の話を含めての信頼関係」を騙って契約書を作らず相手を利用する詐欺的常套手段なのだろう。





また、私の弁護士からの通達に関して、山田氏は勿論のこと、事実確認を求めた角川映画取締役・E氏も返答を同社相談役・黒井和男氏に任せて本件から逃げている始末である。
これによって、編集中の『GOTH』の現場は中断し、スケジュールを空けている監督以下、音楽家、アフレコ(編集後の映像に声だけを録音する作業)を残している出演俳優等、関係スタッフが予定していたスケジュールを約2ヶ月も遅延したまま担当プロデューサーから一報もない状態に放置され、大きな経済的損害も生じている。

私の言及に対して、弁護士に連絡をしてきた角川映画相談役・黒井和男氏は「山田氏の会社(角川PG)
と角川映画は資本関係もなく、映画『GOTH』のこともよく知らない」(だから角川映画は紛争には
無関係)と主張したが、この黒井氏は、原正人氏が取締役会長の映画投資会社シネマ・インヴェストメントにおいて、山田氏と同じ取締役の任にある人物である。
つまり、山田氏は「身内」にすら「無関係だ」と突き放されている状態なのである。

ただし、角川ピクチャーゴールドという会社は、山田氏が角川氏個人の資産から約6億円の資金を得て
設立されたものであるというから、「角川映画」との直接の資本関係はなくても、黒井氏のいうような
「資本関係の不在」だけを理由に、角川グループの最高指導者が社会的責任を免れるものではない。角
川氏が、盲目的に山田氏を擁護し続けるなら、また同じような映画人の被害につながるからであり、最
終的には観客や出資者、つまり日本の映画市場を裏切る行為となるからである。

ちなみに、10月23日時点で東京スポーツ新聞の記者に電話でコメントを求められた山田氏は「双方、弁護士を立てて話をしている状態でコメントを控える」と回答したというが、山田氏の代理人などは登場していない。どこまでもウソで逃げるつもりであろうか。

私は、山田氏からのいかなる対策も打ち負かすことを宣言しておく。なぜなら、私のいっていることのほうが正しいからだ。



官製談合の疑惑もある、角川=原=山田氏と文化庁との蜜月


これまでに述べた通り、山田俊輔氏の「恵まれた環境」の背後には、父・原正人氏の影がつきまとう。いや、原氏の影こそが山田氏であるといってもいいだろう。
そして、原氏は角川映画最高責任者・角川歴彦氏と蜜月の関係にある。これら角川=原=山田各氏が共謀の上、映画業界内部のみならず、公に資するはずの文化庁も関与する、極めて不透明な事業態様と違法な資金の流れ(一私営企業である角川映画の外遊費が文化庁から支出されている等)を形成しているという疑惑がある。

このことは疑惑というよりも、特にこの数年、原正人氏が角川映画との業務提携を開始した1990年代中頃から、日本の映画業界では誰でも知るような公然の秘密であるが、日本映画界そのものが構造腐敗といってもいいくらいの閉鎖的な利権構造にあるため、誰もこの問題を言及せずに今日に至っている。




なかでも、文化庁から派生した独立行政法人・日本芸術文化振興会の、映画助成事業を舞台とした、原=山田親子と文化庁関係者の癒着ぶりは、世間一般にはほとんど知られてはいない。

日本芸術文化振興会が毎年度(上半期、下半期でそれぞれ第1回、第2回と呼ばれ、毎年度2回)実施している映画助成事業とは、民間専門家に助成対象となる映画の審査を委託し、そこで文化庁が支援すべきと判断された映画を選出し、1本の企画に対して1000万円〜2000万円の助成金を交付するという、日本の映画文化振興を目的とした公共事業である。

この制度において、角川=原=山田各氏がなんらかの形で関係する映画事業が他社と比較して圧倒的な高確率で助成対象に選出されている。
助成対象の映画を選定する委員は文化庁が依頼する民間専門家によって構成されているが、山田氏の父・原正人も、原=山田親子と同じ会社経営陣で現・角川映画相談役でもある黒井和男氏も、この審査員主査を務めている。
その実子・山田俊輔氏が代表を務める映画通貨合資会社や、やはり山田氏と黒井氏が取締役で原氏自身が取締役会長であるシネマ・インヴェストメントが製作や出資を行っている映画が明らかに有利に選出されているのだ。




ちなみに、この映画事業助成にはカラクリがある。
この制度は、申請できる映画事業者の資格を定めている。それは「法人であること」「予算が1億円以上調達されていること」等であるが、すなわち「すでに1億円以上の予算がある映画」だけが、さらに文化庁から2000万円の助成金を得る資格があるというところだ。

映画製作において、1億円の予算がある映画は2000万円がなくても事業に大きな支障はきたさない。フランス等の映画先進国が国税で映画助成をするのは、優れた脚本があっても製作資金を持たない個人映画作家や資金力のない独立プロの支援のためにある。
日本の場合は、この制度の形式だけを借景に、内実は大手映画会社に対して有利な申請条件をあらかじめ設けているのだ。
実際に角川映画に限らず、松竹の山田洋次監督作など、最初から製作費が計上されている大手映画会社の映画に多くの助成金が交付されている。
映画会社として、助成金の交付がなくとも製作できる事業に交付される助成金は、回収や返済を要さない余剰金となり、プロデューサー幹部当事者の一存で「小遣い」として流用可能である。小遣いでなくとも、「助成しなくては実現が困難な企画」が選ばれるはずの同助成金が、助成金がない場合でも製作されている映画会社の映画に交付されていること自体が、この公共事業の目的に反しており矛盾しているではないか。
もとより、映画製作費の公正な運用などは製作当事者以外に調査する術がなく、関係者が隠蔽しようとすればとぼけることもできるからだ。

しかし、角川=原=山田各氏と、文化庁の構造的な癒着関係は、選出された映画を調べれば、一目瞭然である。

この独立行政法人日本芸能文化振興会は日本国政府からの出資金(国税)530億円と民間からの出援
金112億円を原資としている。

ちなみに、平成19年度上半期の助成対象映画は、やはり原正人氏が取締役相談役であるアスミック・エース エンタテインメント株式会社(東京都港区六本木6丁目1−24 ラビロス六本木3階)が製作する『西の魔女が死んだ』と、同社が配給する『クワイエットルームにようこそ』の2本が各2000万円を獲得し、角川文庫出版の原作による『グミ・チョコレート・パイン』も1000万円を得ている。
さらに、原=山田親子が重役のシネマ・インヴェストメントが過去に出資した映画『スターフィッシュホテル』を製作した百米映画社の新作『宮城野』も1000万円を獲得しているが、同作は角川歴彦製作総指揮、山田氏プロデュースの『Beauty』でも主演に起用されている歌舞伎俳優・片岡愛之助が主演している。
同じく19年度の助成金2000万円が決定した映画『GSワンダーランド』の製作会社・AMGエンタテインメント社長・杉原晃史氏も、角川映画相談役・黒井和男氏や原氏が講師を努める同じ映画セミナー講師という「身内」の関係性にある。
入手できる資料だけでも、19年度上半期の文化庁助成対象映画全7本(記録映画を除く)のうち、実に5本が角川=原=山田ラインに直接間接の関係を持つ製作や配給会社が助成金を得ているのである。

これは偶然なのか、それとも原=山田氏や角川書店出版原作の映画は、すべて高い文化的水準にあるということなのか。
偶然だというならば、選出映画の資料を追ってみよう。

平成19年度、第2回募集分(下半期)の助成対象劇映画は15本。そのうち、どれくらいの映画が角川=原=山田各氏と親しい関係にあるのか。

まずは、同年上半期でも助成を受けているAMGエンタテインメント株式会社が『ネコナデ』で2期連続の1000万円の助成決定。
山田氏と並んで『GOTH』のプロデューサーでもあり、山田氏と新会社・ジョリーロジャーを設立した大橋孝史氏がプロデューサーを担当する実写版『火垂るの墓』も、2000万円の助成を獲得。
大橋氏でいえば、『瘤ひろば(仮題)』なる映画で1000万円の助成決定の製作会社パル企画は、大橋氏が映画人としてのノウハウを確立した古巣の会社であり、この映画も『GOTH』の制作プロダクションとなったトルネード・フィルムが共同製作に入っているばかりか、先の『火垂るの墓』もパル企画による共同製作・配給である。同一企業グループが同一期の助成を2本の映画で取得していることになる。
まだ続く。
漫画家・大島弓子の原作を映画化する『グーグーだって猫である』で、2000万円の助成金が決定した製作会社IMJエンタテインメントは、社名からは人脈がわからないが、プロデューサーがアスミック・エースの社員で、制作プロダクションも原正人氏が相談役のアスミック・エース エンタテインメントという、完全な身内。ちなみに、この会社は、原正人氏とは従来から業務関係にある。
さらに『KIDS』で2000万円が決定した製作会社STUDIO SWAN(スタジオ・スワン)は、先の『グーグーだって猫である』のIMJエンタテインメントが、新たに設立した会社で、IMJ代表取締役社長と、新会社STUDIO SWANの取締役会長は同一人物である。ここでも、原正人氏と近い同一グループ企業が同一期の映画助成を2本取得しているわけだ。

平成19年度の映画助成事業で合格した劇映画合計22本のうち、現在の資料で判明するだけでも12本の映画に、なんらかの形で角川=原=山田各氏自身や関係人脈があるのだが、これも「優秀な映画はすべてわれわれが作っているのだから、公正に審査されてこうなった」と説明する気だろうか。

だんだん嫌気が差してきたが、この際、平成18年度の審査結果もみてみよう。
まずは、『天然コケッコー』で2000万円が助成された製作会社は株式会社ピクニックとなっているが、この映画の製作委員会の筆頭は、やはり原氏の関連であるアスミック・エースで、プロデューサーが原氏の部下である。申請のときに社名が重複しないようにしておけば、審査結果で関係会社グループが並んでいても、バレないというわけである。
『腰抜けども、悲しみの愛を見せろ』で2000万円決定の製作会社モンスターフィルムという社名だけでは、関係なさそうに見えるが、製作賛助として参加しているインディペンデント・フィルム・ファンド(IFF)なる会社は、原氏が会長、山田氏が取締役のシネマ・インヴェストメントが組織した映画金融会社であり出資しているので、やはり原=山田親子。
『しゃべれども しゃべれども』も取締相談役・原正人氏によるアスミック・エース エンタテインメントで配給もアスミック・エースときている。
さらに、2000万円決定の『あかね空』の助成対象団体名は「有限責任事業組合あかね空」となっていて、なんのことやら素人にはわからない(わからないようにしている)が、配給は角川映画である。
平成18年の助成決定映画合計13本のうち、現在判明している角川=原=山田親子関係は4本と打率は低いが、「スタメン」であることに間違いない。

もう疲れてきたので(読者諸氏も同じだろうけど)、このへんにしておくが、これが公共工事の競争入札であれば官製談合容疑、公金横領を疑われても不思議ではないほどの、極端に偏向した審査結果である。
繰り返すが、これら助成金原資のほとんどは国税であり、原正人氏や黒井和男氏は同映画助成事業審査の主査を務めたこともある文化庁の「関係者」である。
また、前述の通り、申請書類の社名からでは実際に関係している人脈は不明である上、第一、映画業界に詳しい人間でなければ、「派閥」はわからないから、成功率の高い不正工作が可能である。これらの審査結果を眺めれば、彼ら自身がその抜け穴を意図的にかいくぐっている様子が見て取れるのが心憎いばかりである。立派な顔しているくせに、ここまで姑息に国税にタカるとは、みんなカネに困っているんだろうな。

ここで注意しておきたいのは、競争入札談合のように落札による工事費から直接の現金授受がなくても、映画の場合は、製作・配給される映画が長年に渡って利益を生むソフトコンテンツ・ビジネスであるという事だ。
つまり、公共工事のように工事が完成すれば利益がないというのではなく、不正な助成金を受領した上に、その映画で長い期間稼ぐことが可能であるから、癒着の構成が悪質なくせに見えにくい形で温存されるという問題があることだ。文字通り「ガン」のようなものである。
そして、日本の映画業界人らは、こうした実態を知りながらも「角川や原を敵にまわしたら損だ」とばかり、沈黙している。
私はそうした人たちに問いたい。
映画は権力に反する個人の自由を謳う語り部でなければならない。その映画製作者や監督や俳優たちが、一部の老いた既得権益の亡者を怖れていては、日本の映画は戦時中の検閲時代と同じようなものではないのか。




百万歩譲って、これらを疑惑と指摘することが、売れない映画監督の妄想であるというのなら、文化庁は、せめて妄想が湧き上がる矛盾した制度を改善すべきである。

たとえば、一定以上の経常利益を得ている映画会社は申請の対象外にすべきである。
さらに、一回助成を受けた事業団体は、その後2年間は申請資格が無い、というような制限を設けることも重要だ。
審査員も、日本の映画業界当事者は資格外として、日本の映画市場に利害関係のない、海外の映画専門有識者などに委託すべきである。映画祭や舞台芸術監督には外国人を招聘しているではないか。

また、法人に限らず個人の企画も審査対象にして、個人では交付金の不正流用が心配だというなら、助成決定の条件に、製作管理だけを既成の映画会社が「ボランティア」で行うなどの制度に改善するように提案する。
国外の俳優協会には、映画学校の卒業制作映画には無償でも出演する義務があるとしているところもあるくらいだ。真に日本の映画文化の振興が目的なら、映画会社は無償で協力し、この制度で育った才能を商業映画にスカウトしていくことで、大局的に映画界の向上を図るべきなのである。

国際的には、映画とは「国の文化的成熟度」を象徴するものと考えられている。
日本が映画後進国である原因は、ただ映画作品の規模が米国やアジアよりも小さいというソフト・コンテンツの問題だけにあらず、法的かつ社会的な映画インフラが不在だからである。



「税金を投じた角川映画祭」である東京国際映画祭を廃止せよ!


本年も開催されている東京国際映画祭は、映画業界では別名「角川映画祭」と呼ばれるほどの、角川映画ならびにその中枢でもある角川=原=山田各氏の意図が主導する「お手盛り」映画祭である。

たとえば、2007年10月20日から開催されている同映画祭では、以下の映画が角川=原=山田各氏の営業を有利に進めるために「選出」されている。

●コンペティション部門 オープニング『鳳凰 わが愛』
 エグゼクティブ・プロデューサー 角川歴彦
●特別招待部門 『黒い家』(韓国映画)
 配給 角川映画
●特別招待部門 『カンフーくん』
 配給 角川映画
●特別招待部門 『潜水服は蝶の夢を見る』
 配給 アスミック・エース エンタテインメント(取締役相談役・原正人)
●特別招待部門 『明日への遺言』
 エグゼクティブ・プロデューサー 原正人
 配給 アスミック・エース エンタテインメント(取締役相談役・原正人)
●特別招待部門 『シルク』
 配給 アスミック・エース エンタテインメント(取締役相談役・原正人)
●アジアの風 部門 『さくらんぼ 母の愛』
 製作総指揮 小畑真登(山田氏が出資するシップヤード社代表。本作も山田氏が出資)
 プロデューサー 三輪由美子(山田俊輔氏が代表の映画通貨合資会社社員兼シップヤード社副社長)
 エグゼクティブ・スーパーバイザー 原正人(映画祭パンフレットには記名はないが、ポスターなどの宣伝材料には名がある)
●日本映画・ある視点 部門 『子猫の涙』
 製作出資 シネマ・インヴェストメント(取締役会長・原正人、取締役・山田俊輔)
 製作 大橋孝史(山田氏と新会社・ジョリーロジャーを設立。『GOTH』プロデューサー)
 配給 トルネード・フィルム(大橋氏が取締役)
●日本映画・ある視点 部門 『Beauty(ビューティ)』
 製作総指揮 角川歴彦
 プロデューサー 山田俊輔
 ※ 特にこの映画は文化庁が重点的に支援する「歌舞伎」を主題にしている。
●日本映画・ある視点 部門 『真木栗之穴』
 原作 角川ホラー文庫『穴』(山本亜紀子)

公開されている情報だけでも、ひとつの国際映画祭が、ここまであからさまに一私営企業の限られた人
物の利益に有利なプログラムを組むなど、他国の映画祭からは考えられないことである。

また、角川=原=山田各氏に限らず、選出された他の上映映画も、この映画祭の実行委員会である財団法人東京国際映像文化振興会や映画祭組織委員会、実行委員会の加入メンバー会社の製作作品、または関係個人がなんらかの形で関与する映画作品によって占められている。

映画製作は複雑な利権関係や資金の流れを円滑にまとめるために、複数の社名を通して個人名を潜らせることも少なくない。ここでは割愛するが、文化庁関係者個人や角川=原=山田各氏の人物相関図は、他にも東京国際映画祭に隠されている。
例にもあげたように、パンフレットに「原正人」「山田俊輔」の名がどこにでもあると素人にも簡単にウラが露見するからか、作品が一覧できるパンフレットなどでは名を伏せておいて、映画個別のポスターなどには出資者への対策からも記名しておくとは姑息な確信犯ではないか。

東京国際映画祭が「主催 株式会社角川映画」であるなら「お手盛り」映画祭であっても、法的な問題はないだろう。また、対応の劣悪さで国内外のマスコミや映画ファンからも批判が相次ぎ、国際的にも極めて評価が低い東京国際映画祭だから、上映映画が集まらず、角川グループと身内が必死にプログラムをかき集めた結果なのかもしれない。

しかし、東京国際映画祭には文化庁の予算から支援金が拠出されているのである。
限られた映画業界の「身内」たちのために開催され運営される映画祭に、国税が投げ捨てられている事実は許し難いものだ。しかも、文化庁では東京国際映画祭にいくらの資金を支出しているかを発表していない。
当然、文化庁でも「お手盛り映画祭」の実態を把握しているはずだ。知っているからこそ、角川(歴彦)グループと文化庁の癒着が成立しているのである。もしも、これが東映の身内映画だけが集められた映画祭でも文化庁の支援金は認められているだろうか?

これについては、マスメディアにも反省を促したい。
日本のマスコミでは、映画のゴシップ芸能的な側面だけは取り上げるが、本質的な映画産業について関心がないため、これらの事実が社会に露呈していないからである。
官僚と民間業者が数万円のゴルフ接待で贈収賄疑惑に問われるならば、数千万円の国税原資が、特定の映画会社に使われるなどは、重大な官製談合ではないのか。

また、たとえ法的な問題がないとしても、東京国際映画祭の実態が映画業界の特定のグループによる「宣伝」と知らされない一般観客に対して企業コンプライアンスが問われる社会的な問題でもある。
国際映画祭と名がつくからには、各国の国際映画祭の基準で評価されることになり、斯様な実態の身内のカネまわし映画祭が日本を代表する映画祭だと名乗ることは国辱である。
従って、東京国際映画祭は来年から廃止するべきである。




ここまで情報を公開して後、実は角川映画最高責任者・角川歴彦氏は、本件について知らされていない可能性があると、同社内部事情に詳しい関係者から連絡を頂いた。
つまり、「ボス」の耳に入れば立場が不利になる人物たちが、事態を収拾できるまで会長たる角川歴彦氏には報告していないということらしい。
そうなれば、私が言及する文化庁の映画助成金問題にしても、角川氏に点数を稼ぎたい山田氏のスタンド・プレーであるのかも知れない。
事実、私が行動を起こしてから、他社のプロデューサーから連絡があり「自分も同じように、山田氏から出資の確約(しかも山田氏直筆の覚書があるという)を得て、それを予算に組んで製作したら、そのあと一方的に約束を無視されて3500万円の穴があいてしまった」という事例まで出てきた。
さらに驚くべきことに、山田氏と事業関係がある同業大手他社も「山田氏を探しているが携帯電話も通じず行方が判らない」という噂までが私に届いている。
自分に非がないならば、いくらでも対処の方法があるはずである。

角川映画は山田氏との不透明な関係を否定する意味でも、山田氏の責任を徹底的に追及するべきではないだろうか。