最近、台湾への旅が日本の鉄道ファンの人気を呼んでいる。昨年1月の台湾高速鉄道(台湾新幹線)開業で移動がしやすくなったことに加え、日本統治時代の名残を伝えるローカル線や駅舎がノスタルジーを誘うためだ。この動きに合わせ、台湾交通部(交通省)観光局も「2008-09旅行台湾年」の目玉企画として、日本人乗客限定の蒸気機関車(SL)を特別運行するなど、鉄道を通じた「台湾ファン」を増やそうと知恵を絞っている。 (台北・小山田昌生)
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18日、台北郊外の旧産炭地を結ぶローカル線・平渓線を、日本製SL「CK124(日本名C12)」が駆け抜けた。1936年製で、日本統治時代から戦後にかけて台湾各地の支線を走り続けた機関車だ。この日は3両の旧型客車を引き、瑞芳-十分駅間を2往復した。計二百数十人の乗客はすべて日本人。記念乗車券や特製の小冊子も配られ、旅情をそそる汽笛の音と車窓の渓谷美を満喫しながら、30分間の汽車旅を楽しんだ。
観光局国際組の王紹旬さんは「台湾の鉄道は日本統治時代に発達し、当時の駅舎をはじめ、沿線の日本家屋や神社跡も残っている。日本人にとっては、ほかの国にはない懐かしさを感じるようです」とアピールする。
台湾の人々の間でも鉄道旅行はブームとなっており、ひと昔前に廃止が検討されたローカル線も週末には列車が満員となる盛況ぶり。近現代史の証人として、古い鉄道建築を保存する運動も各地で起こっている。
台湾新幹線開業をきっかけに、これまで台北中心だった日本人観光客の行動範囲も広がり、中南部にも気軽に足が延ばせるようになった。
中南部は、熱帯の平地から海抜2200メートルの高山地帯まで登山列車が走る「阿里山森林鉄道」や、かつてのサトウキビ運搬列車を転用した観光用の製糖鉄道、彰化駅の扇型機関庫などがあり、鉄道ファンには見逃せない地域。各地の鉄道名所をめぐるツアーも旅行各社が競って企画している。
台湾の鉄道・歴史関連の著書が多い台北在住のフリーランスライター、片倉佳史さんは「鉄道に乗れば地元の人との触れ合いがあり、車窓の家並みや駅弁などから台湾社会の縮図が見えてくる。安全・快適で、自分なりにプランが立てられることも、台湾での鉄道の旅の魅力」と話している。
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▼今後のSL運行予定 平渓線のSL列車は5月16日、6月20日にも各2便運行される。問い合わせは台湾観光協会大阪事務所=06(6316)7491。
=2008/04/21付 西日本新聞朝刊=