「被告人を死刑に処す」―。広島高裁で二十二日に開廷した光市母子殺害事件の差し戻し審判決公判。判決理由の朗読から始めた楢崎康英裁判長が男性被告(27)への死刑の主文を言い渡すと、法廷は静まりかえった。事件の発生から九年余り。司法は四度目の判断で、遺族の本村洋さん(32)が訴え続けた極刑を選んだ。
▽傍聴希望に3886人が列
濃紺のジャケットの下に白いシャツを着て出廷した男性被告は、落ち着いたような表情で被告人席についた。午前十時、開廷。「前に出なさい」。裁判長から促されると、被告は立ち上がって証言台へ。被告が名前をか細い声で答えたのを確認すると、裁判長は「主文を後回しにします」と告げ、着席するよう指示して判決理由の朗読を始めた。
主文が近づくにつれ被告は少し落ち着かない様子。「死刑」との判決が下された瞬間は、静止したままだった。
愛する妻子の遺影を左腕に抱えた本村さんは、九時四十分ごろに高裁へ入った。傍聴席の三列目に他の遺族と着席。時に遺影を強く抱きしめるように、聞き入った。
弁護人席には弁護団の十八人が並び、裁判長が読み上げる一言一句に厳しい表情で聞き入り、メモを取るなどしていた。
六十の傍聴席は満席。裁判長が主文を後回しにすると告げると、報道陣が一斉に法廷を飛び出し、第一報を入れていた。
高裁ではこの日、傍聴券を求めて市民や報道関係者が八時ごろから列をつくり始めた。九時すぎには三千八百八十六人が抽選の整理券を手にし、関心の高さをうかがわせた。高裁は整理券配布を前倒ししたものの、予定終了時刻を過ぎても配り終わらず、職員が対応に追われていた。
【写真説明】判決の傍聴券を求める人たちであふれ返る広島高裁の周辺(22日9時22分、撮影・天畠智則)
|