中国チベット自治区ラサの大規模暴動は、隣接する新疆ウイグル自治区の独立運動にも影響を与えている。
3月にデモが起きた同自治区南部のホータン(和田)中心部では、当局が、現場となった市場周辺を今も厳しい監視下に置き、チベット情勢に連動して独立機運が高まるのを阻止しようとしていた。(ホータンで、牧野田亨)
「デモの話はやめてくれ。(中国)共産党に捕まりたくない」
羊肉のくし焼きや帽子、特産のじゅうたんなどが並ぶ市場の一角で、20代のウイグル族男性が困惑した表情を浮かべた。同族の別の男性も「デモの件を話せば捕まる。ここは米国や日本とは違う」と打ち明けた。
市場は自治区南部では最大級で、約10万人が集まる。複数の証言によると、3月23日朝、イスラム教徒の女性が使うベールをかぶった黒装束の一群がデモを行いながら、市場の客に「自治区の独立」を呼びかけるビラを配り始め、当局側に拘束された。その数は約500人とされる。
ある商店主は「デモ後、市場や付近のウイグル族居住区では昼夜を問わず公安車両が巡回し、身元確認が厳しくなった」と漏らした。居住区では緊急集会も開かれ、当局幹部が「宗教は国家の下に位置する。国家の安定こそ最優先事項だ」と強調。自宅に家族以外を泊めることも禁じた。
当局が警戒を強めるのは、デモを扇動したのが国外に拠点を置き、自治区の分離・独立を目指すウイグル人組織「東トルキスタン・イスラム運動」とみているからだ。1930年代から始まった同組織の活動は90年代に入ってバス爆破や要人テロなど過激路線に進み、今年3月にも航空機テロ未遂事件を起こした。
しかも、同運動はチベット情勢に連動し、活動を活発化させる兆候がある。自治区当局関係者によると、ラサ暴動後、同運動の内部で「世界の注目を集めたチベットを見習おう」との指示が出された。この関係者は「今回のデモもチベット情勢に刺激されて行われた可能性が高い」と話す。
ただ、当局が警戒する独立運動は、ウイグル族の全面的な支持は得ていないようだ。市郊外に住む50代男性は「昔に比べて暮らしは良くなった。漢族支配に不満はあるが、独立が必要なほど深刻とは思わない」と話した。村の古老は独立運動について、「平和な日々を過ごせることが一番だ」と首を横に振った。
新疆の独立問題に詳しい中国紙記者は「過激化した独立運動は住民の共感を呼ばない。彼らは都市部で騒ぎを起こすしかなく、当局も都市部を重点的に警戒している」と語った。