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【芸能】

女遊び「し〜ば〜ら〜く〜」休憩 海老蔵、四国こんぴらで史上最年少座頭

2008年4月11日 紙面から

間近の観客に衣装が触れる距離で演じる市川海老蔵の鎌倉権五郎=香川県琴平町の金丸座で

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 人気歌舞伎俳優の市川海老蔵(30)が、5日に初日の幕を開けた香川県琴平町の日本最古の芝居小屋「金丸座」での四国こんぴら歌舞伎で史上最年少の座頭(ざがしら)として奮闘中だ。戦後、大劇場でしか上演されてこなかった歌舞伎十八番の一つ「暫(しばらく)」を、江戸時代さながらの風情で再現。連日満員の観客を沸かせている。

 海老蔵の出を待ちに待った観客の耳に「しーばーらーくー」というひときわ大きな声が響く。揚げ幕の中から、三升の紋をあしらった素襖(すおう)という独特の衣装が花道からはみ出ないように、そろりそろりと海老蔵ふんする鎌倉権五郎景政が姿を見せると、割れんばかりの拍手にわく。

 「きょうもすごかったけど、出の“さくらばなぁ”のきっかけが拍手で何も聞こえない。(揚げ幕の中は)もういるだけで精いっぱい。上は立ってられない、横は動けない、座る位置はそこしかない。そこに座らないと素襖ははみ出すし、刀は天井を突き破りそうな感じだし」

 「五本車鬢(くるまびん)」というカツラに力紙をつけ、両手を広げるとまるでマンタのような巨大な衣装は、歌舞伎を代表する勇ましいいでたちだ。海老蔵が言うように、出番前に控えている鳥屋口の中から素襖がはみ出し、それを近くの観客が喜ぶ。最後は、至近距離の観客の顔をねめまわすように花道を引き揚げてゆく。大劇場ではあり得ない光景が、はるか江戸の昔に想像をかき立てる。

 今回のトライは、まさしくそんな状況を描いた一枚の錦絵を見て、海老蔵が思い立った。4年前、襲名披露の歌舞伎座、南座で演じた経験に思いが重なったという。

 「権五郎って子どもじゃないですか。歌舞伎座なんかでは、大きさを作んなきゃいけなかったり、ちょっと高貴な感じでやんなくちゃいけない部分もある。でも金丸座では、子どものままでも存在感で圧倒できるので、何やったって平気なんですよね。『暫』っていう芝居を現代の方々にちゃんと『暫』として伝えられる形がとれたと思う」

 手応えは十分だ。昨年は、史上初のパリ・オペラ座での歌舞伎公演を成功させ、現代劇「ドラクル」に主演、12月には30代に突入と密度の濃い時間を過ごした。

 「去年は変化の年だったので、いろいろ変化したんじゃない? 今年もいいんですよ。今はイケイケですよね。だから歌舞伎をどんどんやろうかなーって思ってるから頑張りますよ。仕事にまい進かな、女の子はちょっと休憩」

 言葉通り頭の中は構想であふれているようだ。「自ら苦しんで資料を見るんじゃなく、楽しいときに見る。勉強しようと思ってものを見たことがない」。次々具現化する舞台は、「カンで」選んでると真顔で応えた。今年正月の新橋演舞場公演「雷神不動北山櫻」で初めて歌舞伎公演の座頭を務め、2年ぶり4回目の出演となる“こんぴら”では、最年少座頭。19日間という公演日数は過去最高だが、早々に売り切れた。

 

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