全国でトラブルが相次ぐ後期高齢者(長寿)医療制度。年金からの天引きミスなどが報じられています。経済的負担も重い問題ですが、高齢者の介護問題を考えさせられることがありました。
一人暮らしをする実家の母(78)が先日、転倒し腰や背中を強打、入院しました。父は7年前に他界。でも「お父さんが建てたこの家を守らねば」。母は気丈にこう繰り返していました。しかし、全身の痛みと一人暮らしの寂しさからかダウン。駆けつけた姉(52)からすべてを聞き、分かった次第です。
姉の一報で大学4年だった23年前を思い出しました。「記者になりたいが、郷里に職はない。それでは一体誰が親の老後の面倒をみるのか」
当時、既に姉は結婚。大学進学を後押ししてくれた両親には感謝していました。だから、就職は自分の希望を優先させるべきかどうか、迷いました。必ず、両親のどちらかが先に逝く、ことが分かっていたからです。
舛添要一・厚労相には母親の介護体験をまとめた著書が多くあります。そこには介護をめぐる家族のあつれき、悲劇など自ら何年も遠距離介護を続けた舛添氏の実体験がつづられています。
私はといえば、先日まで介護問題は「他人事」でした。母は認知症ではありませんが、体の自由がきかず、要介護状態です。この現実に「この先どうすべきか」と片時も頭から離れません。父の死後、母がそこまで落胆していたとは……。長男の私が盆や正月に3、4日帰省する程度ではどうしようもないのです。
参考までに下関市のいきいき支援課によると、市の高齢化率は26・7%(昨年10月1日現在)。65歳以上の一人暮らしは1万2763人(同5月1日現在)という。
幸い今回は妻や姉らが世話をしてくれ、母も落ち着いたようです。「仕事があるから」といって、人任せにした自分をもどかしく思っています。<下関・三嶋祐一郎>
〔下関版〕
毎日新聞 2008年4月21日 地方版