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【本文さしかえ】20日(日)放送番組と掲載誌のお知らせ

▼4月20日(日)深夜午前1時05分~(初回は関東地区のみの放送)
TBSテレビ 『報道の魂』
「光市母子殺害事件~もうひとつの視点」
http://www.tbs.co.jp/houtama/

▼4月21日(月)発売 『AERA』(朝日新聞社)
http://www.aera-net.jp/
「現代の肖像」弁護士・安田好弘 「『悪魔の弁護人』と呼ばれて」
文・綿井健陽 写真・今祥雄

▼4月23日(火)共同通信から全国の加盟新聞社に配信予定
「光市母子殺害事件~判決が問いかけるもの」(仮)
文・綿井健陽

※24日付以降の各地方紙に掲載されます

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一足早く、19日の土曜日から広島に来ている。およそ半年ぶりに、被害者遺族の男性がその日に会見をした。それもやはり聞いておきたいと思った。

明日22日判決当日はNHKと民放各局の全社そろって、午前10時前から報道特別番組の態勢だ。今日(21日)、広島高裁の駐車場ではテレビ各局がテントを並べて速報体制のリハーサルなどを行っている。

テレビも新聞も、「死刑」と「無期懲役」、その両方のリハーサルを行っている。原稿も両方の「予定稿」を準備している。どちらの判決がでても対応できるように。

だが、被告人の元少年にとってはリハーサルはない。両方の対応はできない。判決は「いつか処刑されるか」、それとも「かろうじて獄中で生かされるか」のどちらかであると私は思っている。

この国では無期懲役に対する間違った事実が広まっている。以下のデータを見てほしい。http://www.geocities.jp/y_20_06/japanese_life-sentence00.html 被害者遺族の男性も会見で話していたが、無期懲役でも「重い」ことには変わりない。

以下は4月19日の被害者遺族の男性の会見から一部を抜粋(文責は綿井にある)。

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Q:判決が死刑、無期で大きな違いがあると思うが。それぞれの意味合いは?

22日の判決は死刑であろうとも、無期であろうとも、いずれも重い判決だと思っている。たとえば司法の観点から言えば、最高裁で無期が破棄されたものがまたもし無期判決であれば、司法に対する不信が募ると思います。遺族からすれば、人を二人殺めて、4回目の裁判になって、なぜこれほど揺らぐのか。当事者としても司法に対する不信が募る。そうした意味では無期にしても裁判官は相当悩むだろう。一方で死刑判決が出れば、日本は判例主義であるから、今後この判決によって死刑判決が増える可能性がある。どちらの判決が出ても、司法にとっては大きく意味を持つ判決。私もよく考えてその判決を消化しなければならないと思っている。

Q:弁護側の弁論内容についての感想は?

集中審理の後で述べましたが、やはり私は荒唐無稽なものと思っている。理路整然としていない点が多々あると思っている。そうした点では信じがたいと思っている。いまなお私の感想である。もし最終弁論で弁護側が述べた内容が事実であれば、私は驚きであるし、もし事実でないとすれば、なぜそうしたものが出てきたのか非常に関心がある。それは被告自身が述べたことなのか、それとも弁護士の方々と相談して述べたことなのかということは未来永劫わかりませんが、私が死ぬまで疑問が残ることになると思っている。

Q:被告はこの法廷で話したが、この公判では真実が明らかにならなかったという思いはあるか?

いやそうではなくて、広島高裁で22日に判決が下されますが、そのときに裁判所は弁護側と検察側の一つ一つ細かな検証をされて、一つ一つ判示すると思います。それを私は真実だと思って生きていくと思います。もしそこに弁護側が主張していることとかけ離れていたら、そこに憤りを感じるかもしれない。

Q:もし無期判決でも、それが真実であると受け止めるか?

それしか私には術はないと思うので、そうせざるを得ないと思います。

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弁護側の最終弁論は私も読んだ。

あまりこういった言い方はしたくないが、だが私もこれまで一年間この事件の裁判の取材をしてきた者として、何らかのリスクは背負わなければならない。

もし被害者遺族の男性の言うように、弁護側の主張が「荒唐無稽」であると裁判所が同じように認定した場合、なおかつ検察側の最終弁論で述べられている「当審における審理の結果によっても、被告人につき死刑を回避するに足りる特に酌量すべき事情は、これを一切見出すことができない」と裁判所が同じように判断した場合は、私はこれまでの取材などで書いたこと、発表してきたことなどの責任を取って、すべてのジャーナリスト活動から身を引くことにした。

僕もそれぐらいのことを背負う覚悟はある。

しかし、どんな判決が出されるかは本当にわからない。元少年へ4月16日に僕が送った手紙には、「正直、判決の予想はできない。けれど大丈夫。今まで僕はずっと『事実認定の部分がどう判断されるか、されないのかが重要』とほかの人たちに言ってきた。そこから考えれば大丈夫だ」と最後に書いた。

被告人、弁護人、検察、裁判所、被害者遺族の男性など、「誰を」信じるかの問題ではない。「何を」法律に照らし合わせるかという基準で僕は考えている。

これまで僕がこの裁判に関して書いてきた雑誌原稿や本などは以下。「月刊現代」など、できれば判決後であっても読んでほしい。 http://www1.odn.ne.jp/watai/

それでは皆さんさようなら、いやできればまた会いましょう。

2008年4月21日午後8時35分、広島にて。 綿井健陽

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-04-20 15:24 

「『靖国』で会おう」(告知追加あり)

映画「靖国」http://www.yasukuni-movie.com/をめぐって、
いろんな人たちが迷走している。実は僕もその一人ですね。
一方、李纓監督をはじめ、どんと構えている人たちもいる。

不思議なもので時代は再び「靖国」を中心に動いている。
こんなに宣伝してくれているのだから、
宗教法人「靖国神社」は、映画『靖国』に感謝状を贈ってもいいと思うが。
今年の8月15日は、より一層多くの人が参拝に来るだろうし。

あの戦争から60数年。そうだ、もう一度「『靖国』で会おう」。
スクリーンで?それとも神社の方で?
いずれにせよ、誰もが訪れることができる環境が必要だ。
「雨降って、地固まる」となるか、いや、しなければならない。

僕が映画に寄せたコメントは以下参照。
http://www.yasukuni-movie.com/contents/comment.html

で、多くの皆さんがそろって10日(木)に、
映画『靖国』に対する記者会見をします。

【追加】
インターネットテレビ「アワプラネットTV」で、
この会見は映像配信(生中継、もしくは録画で)されるので以下ご期待ください。
http://www.ourplanet-tv.org/whats/2008/20080409_12.html
以下の「オーマイニュース」でも映像配信されます。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080409/23263

関連ニュースなどは以下参照。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/yasukuni_movie/

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【プレスリリース】
「映画『靖国』への政治圧力・上映中止に抗議する緊急記者会見」

 映画『靖国』に対する稲田朋美衆院議員の試写要求と、文化庁の助成金を問題視する発言、そして都内での映画館上映中止など、映画『靖国』をめぐる一連の動きに対する緊急記者会見を、4月10日(木)に下記の要領で開催します。約15名のジャーナリスト・映画監督・メディア関係者らが発言・アピールを行います。当日は映画『靖国』の李纓監督も出席・発言する予定です。

●日時:2008年4月10日(木)午後1時~3時 (開場:午後12時30分予定)
●会場:参議院議員会館 第2・3会議室 

●会見内容
・午後1時00分~ 映画『靖国』配給・宣伝担当者からの経緯説明
・午後1時15分~ 映画『靖国』李纓監督の発言
・午後1時30分~ 以下の出席者による発言など

【会見発言予定者】(五十音順)
石坂啓(漫画家)、魚住昭(ジャーナリスト)、是枝裕和(映画監督)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、坂本衛(ジャーナリスト)、篠田博之(「創」編集長)、鈴木邦男(作家)、田原総一朗(ジャーナリスト)、豊田直巳(「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」共同代表)、野中章弘(ジャーナリスト)、服部孝章(立教大教授)、原寿雄(ジャーナリスト)、広河隆一(「DAYS JAPAN」編集長)、森達也(映画監督)ほか。

※出席・発言者は事情により変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。

●司会進行/呼びかけ人代表 
土井敏邦(ジャーナリスト)、安岡卓治(映画プロデューサー)、綿井健陽(ジャーナリスト)

●問い合わせ先
「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」(JVJA)http://www.jvja.net/
電話 090-6101-6113(JVJA事務局) te2662721@yahoo.co.jp 

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-04-09 03:00 

超えて敢えて(末尾追加あり)

▼月刊「現代」(講談社)5月号(4月1日発売)
http://moura.jp/scoop-e/mgendai/index.html

4・22判決「死刑か無期か」を超えて敢えて書く
「山口・光市母子殺害事件 面会15回『元少年』の素顔と肉声」
文・綿井健陽

※筆者は昨年五月の差し戻し控訴審開始から傍聴・取材を始め、主に弁護側の主張・立証を追い、そして被告人の元少年との拘置所面会も続けた。「被告人の『元少年』とはどんな人であるか、彼がこれまで何を思い、いま何を考えているのか」。そんな彼の実像や特に「情」の部分について、私は彼の姿や気持ち、彼の生の言葉を探した。(本文より)

▼月刊「創」5月号(毎月7日発売)
http://www.tsukuru.co.jp/
『逆視逆考』第5回「彼への手紙」綿井健陽

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いよいよ4月か。今年は例年になく、この月代わり、年度替りに緊張している。人間の生死にかかわることが迫っているから。不安である。恐ろしくもある。しかし、希望もある。何も知らないまま、感想や反応だけを言う人たちに向けて書いた「月刊現代」の原稿をぜひ読んでほしい。

映画「靖国」をめぐる動きhttp://excite.co.jp/News/society/20080331212800/20080401M40.114.html に対して、様々な人たちがいまアクションを起こそうとしている。これまでテレビでは何度も起きてきたことだった。『放送中止事件50年 ~テレビは何を伝えることを拒んだか』(メディア総合研究所編)http://www.mediasoken.org/page004.html を見れば一目瞭然。ついに映画も「同じような」事態を迎えたか。しかし、これを打破する方法、最終的な抵抗は一つしかない。

何が何でも、映画館で上映する、させることだ。

それを実現させるためには、映画を作る人たちと観る人たちの力で変えるしかない。私も協力する。

【追加】
4月5日(土)に作家・辺見庸氏が久しぶりに東京で講演をする。僕も行こうと思っている。
http://www.jca.apc.org/stop-shikei/index.html

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-04-01 09:58 

バグダッドからのメール

月刊「創」4月号(発売中)
http://www.tsukuru.co.jp/
『逆視逆考』第4回 「映ってるけど、撮ってない」綿井健陽

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今年は例年と違ってバグダッドからメールがいくつか届いた。いずれも「入りましたよ」という弾んだ第一報だ。

昨年、一昨年は私がバグダッドから同じようなメールを送る立場だったが、
今年は残念ながら立場が逆転してしまった。ちょっと悔しいねえ。

同僚の玉本英子がイラク北部に例年通り入っているほか、
僕の知る限りで今年はみんな3年半ぶりぐらいに共同通信、朝日新聞、毎日新聞が、
バグダッドに日本人記者を送り込んだ。
ほかにフリーランスではジャパンプレスの2人も入っている。
何はともあれ、パチパチパチ(拍手)!

届いたメールによると、
バグダッドは少し治安がましになったとはいえ、
外国人はまだ護衛なしでの街中の取材は難しいらしいが、
皆さん気をつけてがんばってください、というところです。

僕も今年は実は共同通信の年間企画の「写真撮影担当」として、
3月のバグダッドに短期間入る予定だったが、
一緒に行く予定だった記者の予定も私自身の予定も調整がつかず、
結局3月と4月の時期は見送りになりました。
今年中には何とか仕切り直して行きたいと思っています。

いま来月1日発売の「月刊現代」と、
4月中旬発売の「AERA」の、
長く、そしてあらゆる意味で「苦しい」原稿の取材と執筆に追われています。
そして、4月22日はもう「光市事件」の判決です。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-03-17 07:11 

その日(一部訂正あり)

▼「光市事件」弁護団に聞く 弁護団は何を主張・立証したのか
─ 報道された虚偽の事実と、報道されなかった真実 ─
http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/3.15syuukai.pdf

・2008年3月15日(土) PM1:30~PM5:30(1:15開場)
主婦会館 プラザエフ  
東京都千代田区六番町15番地
(JR四ツ谷駅麹町口前 徒歩1分 地下鉄南北線/丸の内線四ツ谷駅 徒歩3分)
http://www.plaza-f.or.jp/information/otoiawase/otoiawase.html

参加費(資料代含):1000円 
(会場の都合により先着120名とさせていただきます)
●主催:「光市事件」報道を検証する会(03-3586-5064 中山法律事務所気付)
http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/

【プログラム】
■「光市事件」報道の問題点 山際永三さん(「光市事件」報道を検証する会)
BPO(放送倫理・番組向上機構)・放送倫理検証委員会への申立の経緯と経過報告
申立18番組のうち,いくつかの番組から問題箇所を抽出して上映します。

■「光市事件」弁護団に聞く (多くの弁護人が出席します)
第1部「光市事件」の概要
「光市事件」とは、いったいどのような事件だったのか、スライドを使い、事件の概要を説明。

第2部 報告とシンポジウム
「光市事件」は、差し戻し控訴審の当初から、「21人の巨大弁護団」が「死刑廃止運動」に事件を政治利用しているというかたちで、大きく歪められた。「『光市事件』の弁護活動はどのようなものだったのか」「『光市事件』の報道は真実だったのか」、弁護団の報告とシンポジウムによって明らかにされる。

■映像と報告 綿井健陽(フリージャーナリスト)
「その日の『元少年』~事件当日の足取りと友人の証言から」

「光市事件」が起きた当日(99年4月14日)の元少年(当時18歳)は、自宅を出てから事件現場まで、何をして、どうやって、その現場にたどりついたのか。事件から9年目の現場で、彼の足取りを同じように映像でたどった。また、事件当日に元少年と会っていた友人のAさんの証言なども交えて報告する。

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▼日本ペンクラブ第26回WiP(ライターズ・イン・プリズン)の日
WiP・人権委員会 シンポジウム
『なぜこの国を伝えたいのか』―ビルマ報道とジャーナリストの眼―
http://www.japanpen.or.jp/katsudou/event/080314.html

開催日 : 2008年3月14日(金)18:00開場・18:30開演・20:30終了(予定)
会 場 : 日本プレスセンター ホール 日本プレスセンタービル10F
(東京都千代田区内幸町2-2-1)
地下鉄/東京メトロ 千代田線・日比谷線 霞ヶ関駅C-4、丸の内線
霞ヶ関駅B-2、都営三田線内幸町駅A-7
[プログラム]
第一部 田辺 寿夫(ジャーナリスト・ビルマ市民フォーラム運営委員)
在日ビルマ人ジャーナリスト(交渉中)
第二部 江川 紹子(ジャーナリスト・日本ペンクラブ会員)
山本 宗補(フォトジャーナリスト・ビルマ市民フォーラム運営委員)
綿井健陽(ジャーナリスト)
      他
[問合せ先]
日本ペンクラブ事務局
TEL 03-5614-5391/E-Mail secretariat02@japanpen.or.jp
URL http://www.japanpen.or.jp

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上記の告知にあるが、3月15日(土)の「光市事件」の催しには、ぜひとも来てほしい。4月22日の判決言い渡しを前に、これだけ大規模な報告と考える機会は、ひょっとすると「最後」になるかもしれない。
http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/3.15syuukai.pdf

僕は先月、被告の元少年(当時18歳)と毎日のように遊んでいた友人のAさん(当時18歳)に会った。事件が起きる半年ほど前に知り合った彼らが、当時どんなことを話していたのかを聞くことができた。15日の会場でも触れるが、詳細はまたいつか別の媒体に書く機会があると思う。以下簡単に。

当時の元少年は友人のAさんを「軽い親友」と思っていた。そのことを僕がAさんに話すと、「そう思っていてくれたのなら、うれしい」という。彼らは事件が起きた当日(99年4月14日)も、いつものように遊ぶ予定だった。そのはずだった。それまでお互いの家で、ゲームセンターで、テレビゲームをいつも一緒にしていた。当日も午前中にAさんの家でテレビゲームをして遊んだ二人は、その日も夕方まで一緒にいるはずだった。ところが、Aさんに当日の午後、急用ができて昼前に別れることになる。後で二人は待ち合わせの時間の約束をして別れた。

そして午後3時15分ごろ、二人は再びいつもよく行くビデオレンタルショップの前で合流した。そこにはゲームコーナーが併設されている。いつもと同じく、元少年は時間にだいぶ遅れてきた。

二人が別れてから3時間半ほどの空白に、元少年が何を起こしたのか、彼に何があったのかは、Aさんは当然ながら何も知らない。元少年の様子もいつもと特に変わりはなかったという。それから4日後、元少年の逮捕を知ったAさんは、「冗談だろ」と信じられなかった。元少年のほかの友人たちとも、誰もが「嘘だろ、冗談だろ」と話していたという。

元少年の逮捕後、「事件に関与している」と警察から執拗に疑われたAさんは、当時の警察の取調べに対して激しい怒りを今も禁じえない。「話を聞くというよりも、とにかく話を決め付けてくるんですよ」という。

2年前、彼ら二人は事件以来7年ぶりに(←「6年ぶりに」を訂正)再会した。それはアクリル板の透明ガラスを挟んで、わずか20分ほどの再会だった。元少年は2年ぶりの再会の場で、アクリル板越しにAさんに「迷惑をかけてごめん」と、ずっと頭を下げながら繰り返し謝り続けたという。

Aさんはいまでも少し悔やんでいる。その日、もしいつものように彼とテレビゲームをして一緒にずっと遊んでいたら……。二人にとって「普通の一日」として、その日も通り過ぎたかもしれない。だが、そうはならなかった。

事件から9年。Aさんは27歳になった。社会人として働いている。同じく当時18歳だった元少年は、獄中でまもなく27歳の誕生日を迎える。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-03-04 21:51 

村木良彦さんの言葉

▼月刊「創」3月号(2月7日発売)
http://www.tsukuru.co.jp/
『逆視逆考』第3回 「光市の事件現場にて」綿井健陽

※今回私がこの現場周辺を訪れた目的は、事件当日の被告の元少年の自宅から事件現場までの足取りを、できるだけ同じようにたどってみたかったからだ。99年4月14日の事件当日、彼が訪れた場所はいくつかある。海岸の砂浜、彼の友人の家、ビデオレンタルショップなどだ。特に私は、自宅を出てから、事件現場を経て、また自宅に戻るまでの間に彼が訪れた場所を回ってみたいと思った。これまでの公判・法廷で彼が話した内容を手がかりに、同じようにたどってみた。(本文より)

▼日刊ベリタ主催「ジャーナリスト実践養成講座」
2月23日・24日 (詳細・申し込みは以下のサイト参照)
http://alertwire.jp/read.cgi?id=200801260407046

・永井浩(日刊ベリタ編集長)
・野村進(ノンフィクションライター)
・石山永一郎(共同通信編集委員)
・大野和興(ジャーナリスト)
・「ビデオジャーナリストという仕事」綿井健陽

▼『消される歴史の現場から』 ~JVJA 沖縄現地報告~
http://www.jvja.net/pdf/JVJA-okinawa.pdf
2008年2月23日(土) 

▼JVJA連続オープントーク 「今、私たちの世界で起きていること」
http://www.jvja.net/opentalk.htm
第1回 「大津波と紛争」インドネシア・アチェの現在
2008年2月16日(土) 
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ギョーザで大騒ぎになっているが、テレビでギョーザのパッケージがこれほど何度も出てくると、逆にギョーザを食べたくなって、今週は何度もギョーザを食べているというアホな私。ほかの冷凍食品にとっては痛手だが、街のギョーザ屋さんからすれば、返って宣伝効果にもなるというのがテレビの怖いところだ。そういえば去年の今頃は「あるある大辞典」問題で、納豆ダイエットにみんな走ったんじゃなかったか。http://www.narinari.com/Nd/2007016979.html 当事は私の家の周りの店でも納豆が消えていた。この国でもし全国的なパニックが起こるとすれば、それは間違いなくテレビから始まる。

ギョーザだけでなく、普段私たちが食べている牛肉も、豚肉も、鶏肉も何もかも、食べ物がどういう過程で作られ、誰がそれに携わっているのか、これを機会にちゃんと見直してみよう。このタイミングでちょうどドキュメンタリー映画「いのちの食べ方」http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/ が各地で上映中だ。http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/main/theater.htm 先月に渋谷で観にいったときは小学生ぐらいの子供を連れた母親が来ていたが、中学の社会科授業ぐらいで、この映画を観るのを「必修科目」にしていいと思う。

プロデューサーの村木良彦さんが亡くなって、たくさんの人がため息をついている。http://www.asahi.com/obituaries/update/0122/TKY200801220078.html 今月号の月刊「創」の森達也さんの原稿の中で森さんと吉岡忍さんとの会話が掲載されているが、僕も何人かの人と電話で同じような会話をしていた。映画監督の是枝裕和さんは、大学生時代の村木さんとの出会いから始まっているという。http://www.kore-eda.com/postoffice/k_20080129.htm

東京メトロポリタンテレビが95年に開局したころには、アジアプレスも確か「映像記者報告」というビデオジャーナリストの番組で野中章弘をはじめ、多くの人がお世話になったはず。僕よりもっと上の世代の50代ぐらいのテレビディレクター・プロデューサーは、直接村木さんと仕事をした人も多い。残念ながら僕は一緒に番組を作ったり、仕事をする機会にはもう「遅かった」世代だが、村木さんは「リトルバーズ」の試写会には真っ先に来てくれた。その後の「毎日映画コンクール」のドキュメンタリー部門賞の選考委員のときは、多大に「リトルバーズ」を推してくれた恩人だ。

以下、村木さんが1970年にテレビマンユニオンを立ち上げたときの宣言文と、03年に村木さんがテレビ放送開始から50年に寄せた原稿中の言葉がとても印象深い。村木さんの恐らく最後の仕事が「あるある大辞典」番組の検証だったと思うから、テレビのことを最も心配しながら亡くなっていったのではないかと想像する。

「『同時代性を武器とするテレビの機能は時間と想像力の同時進行だ』と主張してきた私たちは、職業としてのテレビディレクターを自らの意志で選びかえした。私たちにとってすべてを疑い、新しいイメージを発見することがすべての出発点なのである」(東京新聞08年2月6日付け掲載「言いたい放談」大山勝美氏執筆の原稿から一部引用)

「『もうひとつの現実』を再生産し続けるテレビは、情報の洪水のなかの飢餓感、不信と依存の混合を増幅させている。デジタル化やハイビジョン以前に、人間の記憶、想像力、表現(ことばと映像)、コミュニケーションを知的に再構築する磁場づくりが必要なのではないだろうか」(毎日新聞03年1月14日付け掲載「テレビよどこへ行く~放送開始から50年」村木良彦氏)

テレビマンユニオンの「企業理念」の欄に書かれていることは、一企業の理念を超えて、テレビに携わるすべての人が目指すべき実践目標であり、村木さんの遺言のように思えてくる。http://www.tvu-company.com/index.html 

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
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2008-02-08 01:09 

「距離」

▼2月2日(土)午後7時30分~ 東京・阿佐ヶ谷ロフトにて
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/
綿井健陽の『逆視逆考』トーク
第1回「光市母子殺害事件~裁判で何が争われてきたのか」
ゲスト・河井匡秀弁護士(光市事件差戻審弁護団)

※「光市母子殺害事件」の差し戻し控訴審は、昨年合計12回の公判を数えて結審した。これまで特にテレビでは、被害者遺族の会見・発言・物語を中心にした映像が公判の度に大きく報じられた。弁護士への懲戒請求問題なども含め、「法廷外」での話題は多いが、実際の裁判の法廷では検察と弁護側の間で何が争点とされ、どんな主張や立証が展開されたのか。被告の元少年の弁護団の一員を務める河井弁護士をゲストに迎え、この事件・裁判を振り返る。弁護団会見の映像やテレビニュース報道も交えながら、来る4月の判決言い渡しを前にもう一度冷静に考えてみたい。

▼『光市事件裁判を考える』 編者:現代人文社編集部(1月25日発売予定)
発行:現代人文社 定価:1700円(本体)+税 
http://218.42.146.84/genjin//search.cgi?mode=detail&bnum=40087

〈目次〉

・座談会/光市事件裁判の論点を考える⋯⋯⋯⋯⋯6
 川崎英明 関西学院大学法科大学院教授
 浜田寿美男 奈良女子大学教授
 守屋克彦 東北学院大学法科大学院教授
 河井匡秀 弁護士(光市事件差戻審弁護団)
 本田兆司 弁護士(光市事件差戻審弁護団)
 村上満宏 弁護士(光市事件差戻審弁護団) 

・被告人は心の底から湧いてくる言葉を明かすべきだ
——光市母子殺害事件・差戻し控訴審を傍聴して⋯⋯⋯⋯⋯58
佐木隆三 作家

・被害者・遺族も、被告人も救われる可能性——光市を歩く⋯⋯⋯⋯⋯66 
毛利甚八 ライター

・「公益」色あせる検察
——光市母子殺害事件と被害者の存在感の高まり⋯⋯⋯⋯⋯82
菊池 歩 ジャーナリスト

・世の中に伝えるべき対象は「被害者・遺族」だけなのか
——「光市裁判報道」はもう一度「差し戻し」てやり直す必要がある⋯⋯⋯⋯⋯90 
綿井健陽 ジャーナリスト

・解説・光市事件裁判と弁護士懲戒問題
——刑事弁護活動とはなにか⋯⋯⋯⋯⋯125
編集部

・Q&A光市事件・裁判⋯⋯⋯⋯⋯125
石塚伸一 光市事件差戻審弁護団
1 事件についての疑問
2 裁判についての疑問
3 その他の疑問

・光市事件・裁判の経過一覧 162

▼「光市裁判」12月公判(弁護側最終弁論)後の弁護団会見映像(ヤフー動画)
http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00348/v01642/

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先週末からまた広島に来ている。去年からこのブログも広島に来ているときにアップすることが増えた。

昨日(21日)、光市の事件現場周辺を訪れた。事件が起きたのは99年4月なので、「9年前の現場を別に見ても…」と最初は思いつつ、結局足を運んだ。天気が曇りで気温が低かったこともあったが、海からの風が強い現場周辺は本当に寂しい場所だった。いわゆる「過疎地」で、現場の社宅アパートも入居者は年々減って、いまは空き室の方が多い。決して事件後に入居者が減ったのではなく、それ以前から住む人は年々少なくなっている。昔でいう「団地」のような古い作りの4階建の建物が20棟並んでいる。

事件当日の被告の元少年の自宅から現場までの足取りを、今回はできるだけ同じようにたどってみた。当日の朝に彼が行ったという海岸の砂浜、彼の友人の家など、自宅を出てから事件現場の間に訪れた場所はいくつかある。しかし、被告の元少年の自宅(当時)と事件現場の直線距離は約200メートル。同じ社宅の敷地内である。徒歩1、2分という距離だった。

だが、被害者宅の棟の前から元少年の自宅がある棟の方向を見ると、その距離は遠く感じる。人気の少ない建物の棟がまるで立ち塞がって囲んでいるように。棟のすべての窓から自分が見られているかのように。逆に、元少年の自宅の棟から被害者宅の棟の方向を見ると、それは近く感じる。いつも通る道をすっと通り抜けるように、棟と棟の間を流れるように歩けば「その場所」は見えてくる。被害者宅の棟のすぐ前には、彼が当日友人と待ち合わせの約束をしていたビデオレンタルショップの跡地(現・駐車場)がある。

自分がこの事件や裁判をこれまでどう見てきたか、どこから見てきたかという意識によって、その「距離」も感覚も風景も変わる。元少年は事件後にビデオレンタルショップから自宅に戻る途中、この社宅の建物が、「怪物というか、巨人のように見えて、おびえました」と昨年7月の公判で話している。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2008-01-23 03:43 

叩いてナンボ

▼月刊「創」2月号(1月7日発売)
http://www.tsukuru.co.jp/
連載『逆視逆考』第2回 「戦争報道を続けるために」

※しかし、冷静に批判的に検証することは今後の戦争報道のためにも必要なことだ。「非難・バッシング」と「批判」は意味合いが異なる。自分が(ビルマで殺害された)長井さんの立場だったら、どうしていたかを想定してみる。メディアでの両極端の反応を超えて、同じジャーナリストの立場から、長井さんの取材行動と死を振り返る。(本文より)

▼「光市事件裁判を考える」 現代人文社編集部・編(1月25日発売予定)
http://www.genjin.jp/shinkan.html#yotei 
「世の中に伝えるべき対象は『被害者・遺族』だけなのか」綿井健陽

▼2月2日(土)午後7時30分~ 綿井健陽の「逆視逆考」トーク
東京・阿佐ヶ谷ロフトにて http://www.loft-prj.co.jp/lofta/

※ロフトプロジェクトの代表・平野さんから、「数ヶ月に一回、テーマは何でもいいのでトークをやってください」と言われたので、ひとまずやってみましょう。僕一人では無理なので、毎回多彩なゲストを最低一人は迎える予定。1回目は年末の「創」イベントで話せなかったこと、お見せできなかった映像も含めて、やはり「光市裁判」をテーマにやります。詳細は後日お知らせ。

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気が付けばもう一ヶ月以上も更新していなかった。すいません。そして年が明けてもう一週間が過ぎていた。

このブログは更新しなかったが、その間に紙の方にはたくさん文字を書いていた。12月は「年末進行」締め切りの原稿を何本も書いている間に過ぎた。ほとんど家に引きこもって原稿を書くか、FAXで校正ゲラのやり取りをしていた。作業はコタツの上、机の上、ベッドの上ばかりだった。結局年をまたいで終わらない原稿もいくつかある。

先日、都内の大型書店に久しぶりに行くと、並んでいるのはタイトルも著者も知らない本ばかり。映画も去年はほとんど見ていない。新聞も以前ほど読まなくなった。そうすると、知らないことばかりが自分の周りに山のように積みあがっていく。「知らないこと」は別にどうでもいいが、「知っておかねばならないこと」が抜け落ちていくことは怖い。

もう年が明けたのに去年のことを書くのも何だが、去年は「ビデオジャーナリスト」としての仕事はほとんどしなかった。しかし、文字だけはたくさん書いたような気がする。

年末に、久しぶりにテレビ局のプロデューサー、ディレクターの人たちと会った。以前は年に何回も会っていた人たちだが、よく考えると去年は3月にバグダッド取材に行ったときに少しリポートしただけで、テレビ番組の仕事はなかった。テレビはいったん離れると、だんだん遠くなる。

来週ぐらいからは、さっそくまた広島に行く。その前後で初めて山口県光市を訪れる。これまでは光市裁判に関してはマスメディアの報道の問題を中心に追ってきた。しかし、昨年12月で公判も結審したので、このあたりでそろそろ自分なりに、さまざまな経緯を事件現場周辺で体感しておきたい。

光市裁判の差し戻し控訴審の裁判は、今年4月22日に判決が出る。しかし、それで判決が確定するわけではないし、どんな判決であっても再度「上告審」があると思う。大阪教育大池田小で起きた殺人事件での死刑執行(04年9月)後、「罪を裁くのは裁判所ですが、それを解明するのはジャーナリズムの仕事です」と、「創」の篠田編集長は書いた(04年11月号)。

僕もこの光市事件を自分なりにもっと解明したい。それが僕の今年の重要テーマだ。

去年、僕がこの光市裁判の取材でまず実践したことは、「レッテル・偏見・思い込み」から逃れることだった。この三要素をいまのマスメディアの中にいて排除することは本当に難しい。取材現場では排除できても、それを伝えるときには大きなメディアではなかなか逃れられない。しかし、一人だと意外に簡単だった。この事件・裁判にフリーランスという立場で取材できて本当に良かったと思う。

「僕は自由に物が言えることだけが取り柄のフリー・ジャーナリストだ」と斎藤貴男さんは以前書いていた。しかし、様々な立場の人が「自由に物が言える」「異論の自由を確保する」ためにも、やはり「事実に基づいた、自由な表現や議論」が、何かを書いたり、話したりする最低限の基準だと思う。ところが、この裁判のメディア報道では被害者遺族の男性の発言や感想が、すべての基準になっていた。

取材する側がまず、「レッテル・偏見・思い込み」から逃れられないと、同じような読者や視聴者もたくさん増える。そこから今度はネット上や居酒屋・ご近所・職場・学校で、様々な感想や意見も付け足され、デマや噂になって広がっていく。ときにそれは誹謗・中傷・脅迫にまで広がる。この裁判をめぐる動きはまさにそれだった。マスメディアの影響力の怖さはここにある。

昨年読んだ本の中で刺激的だったのが、何と言っても芹沢一也さん http://kazuyaserizawa.com/index2.html の犯罪に関わるいくつかの本だ。http://kazuyaserizawa.com/books/index.html 

「メディアを筆頭に日本国中が妙に道徳的になっている印象がある。自己満足感に浸りつつ非を唱えられる対象を、血眼になって探しているようにも見える」(毎日新聞12月5日付掲載「ダブルクリック」から)

去年はその「非を唱えられる対象」がたくさんあったのだろう。ボクシングの人、女優の人、大相撲の人、政治家の人、食品会社の人…、ほかにもたくさんあったのかもしれない。だが、あんまり思い出せない。メディアは、もう次の「生け贄」を探している。「♪かじって、かじって、かじってナンボ、かじってナンボの商売だ♪」(by おしりかじり虫)ではな く、「叩いて、叩いて、叩いてナンボ、叩いてナンボの商売だ」。メディアだけでなく、みんな自分の手で叩きたい、裁きたいのか。

今年の目標というわけではないが、「非を唱えられる対象を、血眼になって探す」ようなことだけは、絶対にやらないと決めている。もっとほかに血眼になってやるべきこと、かじりたい「おしり」が目の前にたくさんある。

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綿井健陽 WATAI Takeharu
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2008-01-07 03:13 

「逆視逆考」

▼月刊「創」1月号(12月7日発売) http://www.tsukuru.co.jp/
新連載『逆視逆考』綿井健陽  第1回「光市母子殺害事件裁判」

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さて今日から12月。今日の夜からまた広島行きだ。

今年5月から始まった「光市裁判」http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/yamaguchi_hikari_murder/ もいよいよ大詰め。これまで11回の公判を重ねてきたが、12月4日(火)の弁護側最終弁論でもって結審する。公判前の取材などがあるので、一足早く広島に乗り込むことになった。

5月の初公判のときに初めて広島に出向いたが、裁判はもちろん、自分の取材の行方も方向も何もわからず、広島高裁の前でほとんど途方に暮れていたが、その後いろんな方に出会って、いろんなことを教えてもらい、何とか自分なりにここまで続けてこれた。この裁判をめぐって出会ったすべての皆さんに感謝しなければならない。5月のころは「今から取材を始めても自分に何ができるのか」と不安だったが、今思うとその最初の一歩が本当に重要だった。「いつか」「後から」では間に合わなかったかもしれないという話や出来事がいくつかあった。

この裁判の被告弁護人への懲戒請求に関しては、東京弁護士会が先日議決した。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000047-mai-soci ほかにも「放送倫理・番組向上機構」(BPO)への申し立てhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071128-00000093-mai-soci などがあった。「法廷外」でいくつかの動きがある中で、裁判の判決は来年春ごろの見込みだ。

しかし判決が出ても、「メディアイベント」としてはそこで終わりになるが、被告人の元少年にとっても、被害者遺族にとっても、それでこの事件が終わるわけではない。また別の「何か」が始まることになる。よく考えると自分の取材も、本番はこれから始まるといっても過言ではない。というわけで今後も広島通いは続く。

月刊「創」 http://www.tsukuru.co.jp/ での連載が始まった。先日原稿を提出したと思ったら、出版業界での月刊誌はもう「年末進行」なので、年明け発売号の締め切りは12月10日だという。タイトルは当初考えた『逆視逆考』が採用された。逆から視る。逆から考える。「死んだ魚は流れのままに流される。ジャーナリストは時に、生きた魚として流れに逆らって進むべき職業人ではないか」(映画「グッドナイト&グッドラック」に原寿雄さんが寄せた解説より)。ともかく、毎月原稿を書きかねばならない。最近原稿を書く量が特に増えたが、将来の人生設計よりも、次の締め切りだ。

共同通信カイロ支局の及川仁記者が、先週から3年ぶりにバグダッドに入っている。日本の新聞メディアとしてもおよそ3年ぶりになる。ネット上では見れないが、地方紙で現地報告記事が掲載されているのでぜひ読んでほしい。僕もそのうちバグダッドはまた行くことになると思う。

12月4日の公判終了後は、広島弁護士会館にて、光市裁判の弁護団が報告集会を開く。誰でも参加できるので広島在住の方はぜひ。まさに「逆視逆考」のいい機会になるでしょう。

「光市事件裁判差し戻し控訴審 報告集会」
日時:12月4日(火)午後6時~
場所:広島弁護士会館5階大会議室
主催:光市事件裁判弁護団
(会場地図)→http://www.hiroben.or.jp/

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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
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DVD発売・各地で上映中
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2007-12-01 13:49 

「逆」(告知追加あり)

▼月刊「法と民主主義」11月号(11月22日発売)
 http://www.jdla.jp/houmin/index.html
特集企画『刑事弁護とメディア』「光市裁判を取材して」文・綿井健陽

※いま絶対に読んでほしいタイムリーな一冊!以下の様々な方が特集企画に寄稿しています。
◆司法の職責放棄が招いた弁護人バッシング──光市事件の弁護を担って……安田好弘
◆マスコミと弁護活動──和歌山カレー事件の弁護を通じて感じたこと……山口健一
◆見るべきものが伝わっていない「裁判報道」──麻原一審裁判と弁護活動……渡辺 脩
◆「光市事件」を取材して……綿井健陽
◆「証拠の目的外使用禁止」は調査報道に対する「死の宣告」……大谷昭宏
◆社会とのつながりに自信を失っている新聞……美浦克教
◆コメンテーターがテレビをダメにする?──「弁護士とメディア」を考える……岩崎貞明
◆弁護士コメンテーターとは──……小池振一郎
◆刑事訴訟への犯罪被害者の参加と裁判員制度……足立昌勝
◆メディアの仕事は権力の監視──「人権と報道」から考える……丸山重威
◆インタビュー・後藤 昭 一橋大学教授に聞く 刑事弁護活動とメディア……後藤 昭──聞き手・澤藤統一郎
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▼「DAYS JAPAN」12月号(11月20日発売)http://www.daysjapan.net/
特集「ジャーナリストの死」
「代わりの者」文・綿井健陽

▼映画「リトルバーズ」上映と講演(東京・金町)
12月1日(土)午後2時~上映、午後4時~講演
http://blog.goo.ne.jp/kanamachi9/c/38abc75fc7448ecea1c44f1c5df4f8c1
※久しぶりの上映会です。今年3月にバグダッドで再会した主人公たちの「その後」の映像などもお見せします。

▼「創」プレゼンツ「国家・死刑・戦争~この一年を振り返る」
http://www.jdox.com/mori_t/info.html#9
12月27日(木)午後7時~(東京・阿佐ヶ谷ロフトA)
【出演】
佐藤優(起訴休職外務事務官/作家)
森達也(作家)
鈴木邦男(新右翼一水会顧問)
綿井健陽(ジャーナリスト)
阿曽山大噴火(芸人)、他
【司会】
篠田博之(『創』編集長)

※毎年やっている「忘年会」。僕が出るのは今年で5回目ぐらいでしょうか。ほかの出演者の皆さんにお会いするのは一年ぶりか、今回初めてという方ばかりです。去年までは新宿の会場でしたが、今年は阿佐ヶ谷になっていますのでご注意を。

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来月上旬発売号から始まる月刊「創」http://www.tsukuru.co.jp/ の連載原稿のタイトルをいろいろ考えている。

本当はもう始まっているはずだったが、前々号、前号で「光市裁判」の原稿を書き、今月号では座談会があったので、始まりを延ばしてもらった。ようやくキリのいい新年号から始まる。毎月末が締め切りなので、そろそろ中身の原稿を書かねばならないのに、まだ通しのタイトルも決まっていない。

しかし、必ずタイトルに入れたい文字がある。「逆」という文字だ。「そろそろ通しのタイトルと中身を決めてください」と言われて編集長に送ったメールが以下。

----- Original Message -----
From: "WATAI Takeharu 綿井"
Sent: Thursday, November 15, 2007 3:42 PM
>
> 遅くなってすいません。以下、連載企画案です。
>
> ▼「現場”逆”サイド」
>
> あらゆる事件・出来事・人物を「逆」から見る。
>
> マスメディアの逆。
> 世論の逆。
> 世間の逆。
> 国家の逆。
>
> 現場からの逆照射、逆視点、逆光線で、綿井が逆思考で斬る。
>
> 1回目はやはり光市裁判。
> 2回目以降は戦争報道から犯罪・政治・芸能まで幅広いテーマを扱う。
> ときに誰かとのインタビュー・対談・会話・手紙方式も織り交ぜてみたい。
>

「逆」という言葉に気持ちが高ぶるのはなぜだろう。電子辞書の広辞苑で「逆」を検索すると、様々な単語や熟語が並ぶ。その意味にそそられる。「逆遠近法」「逆撃」「逆効果」「逆襲」「逆取順守」「逆説」「逆流」「逆眼鏡」…

最近新著が出版された作家・辺見庸氏の著書で最も好きだったのが「反逆する風景」(講談社文庫)http://www.amazon.co.jp/%E5%8F%8D%E9%80%86%E3%81%99%E3%82%8B%E9%A2%A8%E6%99%AF-%E8%BE%BA%E8%A6%8B-%E5%BA%B8/dp/4062636409 だった。「風景のシークエンスには、系列的意味からすれば、謎めいた不整合部分が、必ずといっていいほどぽこりと出現するのだ。そのことを私は好いている」(本文より)

確かにそうだ。戦争取材でも、今の光市裁判でも、あらゆることには系列的な意味に反する不整合部分が必ずある。しかし、そうした部分はだいたい削ぎ落とされるか、無視されるか、あるいは別のくだらぬ意味をつけられて、妙なトリビアリズムと化して本質から離れていく。

思うに「逆」は絶対的な方向・立場・視点ではない。必ず相対的な位置関係となる。現在いる場所も、逆側から見れば当然「逆」となる。自分にとっては逆と思っていても、ほかの人から見れば違う場合もある。同じものでも、逆から視れば違うように見えることがある。何が「逆」で、何が「順」か。それはその時々の状況や自分の立場・気持ちや相手との関係にも左右されて変わってくる。

いまのマスメディアの現状を見ると、同じ方向・対象に一斉に「走る」のは大得意だが、この逆側からのアプローチで「歩く」ことは非常にとぼしい。したがってそこはフリーランスの出番となる。

「逆視逆考」なんて、いいタイトルかなと思ったが、タイトルとして「わかりにくい」らしい。では、『「逆問」のすすめ』というタイトルはどうかと思ったが、すでに斎藤貴男さんが『「非国民」のすすめ』で同誌の連載をやっていることに気づいた。作家の沢木耕太郎氏が以前、原稿を書くのは楽しくないが、本のタイトルを考えるのは楽しいと言っていたな。確かに。

さて来週発売の「法と民主主義」(11月号) http://www.jdla.jp/houmin/index.html という月刊誌に原稿「光市裁判を取材して」を書いた。特集企画は「刑事弁護とメディア」だ。様々な人が寄稿している。いまの光市裁判もそうだし、裁判員制度を考える意味でもぜひ読んでほしい。

催しや集会でも最近は「誰々のブログにはこう書いてありますが…」と引用される機会が増えた。僕のブログを「見てますよ」という人にもよく会うし、知らない人からメールも届いたりするが、できればこのブログよりも、ほかの媒体に書いた原稿の方を見てほしいのだけど、そちらの方はあまり反応や感触はない。ネットは確かに告知や宣伝には便利だし、パソコンの前だけですぐに「お手軽反応」はしやすいのかもしれないが、脳を使った「思考」の方には行き着かない場合が多い。単に反応だけなら「2ちゃんねる」で書き込んだ方が、たくさんほかからも反応が期待できるだろう。

やはり文字は紙媒体がいい。新聞・雑誌・本は紙で読みたい。紙の上でゆっくり考えましょう。液晶画面ではダメです。お尻だけは紙よりもウォッシュレットの方が好きです。

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2007-11-20 23:31 

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