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救急搬送:心疾患、専門病院満床でかかりつけに…男性死亡 遺族、判断に疑問 /群馬

 ◇心臓疾患、専門病院満床でかかりつけに搬送…転送、手術も男性死亡

 ◇危機的状況…教育足りない 専門家「レベルアップを」

 渋川市の男性(当時69歳)が心臓疾患で救急搬送された際、家族が希望した専門病院が満床だったためかかりつけの病院に運ばれ、通報から31時間後に死亡していたことが21日、分かった。遺族は「容体を見れば心臓疾患と分かったはず。他の専門病院に運ぶなど最善を尽くしてほしかった」と救急隊の判断に疑問を抱いており、専門家からは「救急隊の教育が足りない」との指摘も上がっている。

 遺族や渋川広域消防本部などによると、昨年10月10日午後11時35分ごろ、男性の長女(43)から「父が背中を痛がっている」と119番通報があった。県内の病院に技師として勤務する長女は、市内の循環器系専門病院に運ぶよう要請した。

 救急隊員が搬送中にその病院に問い合わせると、満床として断られたため、救急車に同乗した妻にかかりつけを確認し、市内の病院に運んだという。

 しかし、搬送後の検査で、かかりつけの病院で処置できる症状ではないことが判明。翌11日未明、前橋市の循環器系病院に転送し、緊急手術を受けたが、12日午前7時5分ごろ、大動脈解離が原因で死亡した。

 長女は搬送時の脈拍が異常に低かったことを指摘したうえで「わずかな医療の知識があれば、心臓疾患だと分かる。市内や近隣市町村に他の循環器系病院があるのに、なぜそちらに搬送してくれなかったのか」と不信感を募らせている。

 渋川広域消防本部と渋川地区医師会は、患者や家族から搬送先の希望があった場合「努めてその医療機関に搬送するものとする」と協定を結んでいる。同本部は「希望の病院は満床だった。緊急性のある患者の場合、一刻も早く診察を受けさせるべきだと考えており、救急隊の判断は間違っていない」と説明。このケースについて、救急業務の事後検証を行うメディカルコントロール協議会に報告していない。

 救急医療に詳しい愛知医科大の野口宏教授は「脈拍が危機的状況であれば、処置できる病院は限られており、そこに搬送すべきだった」と指摘。その上で「高度な教育システムを構築し、救急隊の水準を引き上げなければ同様の事例は再び起きる」と警鐘を鳴らしている。【伊澤拓也】

毎日新聞 2008年4月22日 地方版

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