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【社説】

防衛省汚職 天下り慣行にもメスを

2008年4月22日

 逸脱どころではない癒着ぶりだ。前防衛次官守屋武昌被告は、初公判で収賄を認めた。防衛装備品をめぐる不正の土壌に、天下りの慣行が浮かび上がる。抜本的に改める要点は自(おの)ずから明らかだ。

 ゴルフ接待だけで約四百回、約二千五百万円。自宅購入名目で二千万円の借り入れ。未公開株購入費やリフォーム費、ゴルフセット、還暦祝い金、娘の留学費用…。あ然とするほかはない。

 接待費の一部に疑問を挟んだものの、検察側の事件構図を認めた守屋被告の行動は、「権力」の持つ裏面を露(あら)わにしている。

 防衛省内で「ドン」と呼ばれる実力者だったからこそ、防衛専門商社「山田洋行」元専務宮崎元伸被告は接近し、多額の賄賂(わいろ)を贈った。それでも見合ったはずだ。

 検察側の冒頭陳述によれば、次期輸送機CXのエンジン採用で、一般競争入札の必要性を主張する部下に、守屋被告は「随意契約に決まっているだろう」と発言した。ほかにも新型護衛艦用エンジン、地対地ミサイル…。巨額な防衛装備をめぐり、宮崎被告に有利な取り計らいをしたからだ。

 「ドン」になり得たのも、四年もの長期間、事務次官のポストに就いていたためだろう。人事も政策も操れる官僚の頂点に、この人物を据え続けた大臣、政府にも大きな責任がある。次官の任期の在り方を見直すべきだ。

 宮崎被告が「(自身で設立した)日本ミライズの次期社長に守屋氏を」と関係者に伝えていたとの証言も報道された。事実なら、守屋被告の有利な計らいは天下り先への手土産と同じで、悪質だ。

 今回の事件では、商社を介在した海外取引ばかりに目がいく。先月末に同省がまとめた改善策も、商社による不正のチェック強化に主眼が置かれている。だが、国内メーカーの取引で不透明な部分はないか。「天下り実績で受注が決まる」ともいわれる世界だ。

 何しろ装備品の調達額は年二兆円にものぼり、国内分が大半を占める。改善策が生ぬるい。天下りの構造自体に手をつけないと、国民の疑念はつきまとう。

 機密を伴う特殊な業界だから、腐敗は起きやすい。入札制度の透明性を高める必要がある。一九九八年にも汚職事件、二〇〇六年にも官製談合事件が起きた。汚濁にまみれている。上意下達の典型的な組織だけに、幹部の不正がまかり通りがちだ。監察本部の機能強化などにも手をつけたい。

 

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