北京五輪の聖火リレーがチベット騒乱への抗議活動で混乱したことなどに反発し、内外の中国人の間で愛国主義的な機運が高まっている。
19、20の両日、北京や陝西省西安など中国の少なくとも17の都市で「チベット独立反対」「CNNの反中報道に反対」などと訴えるデモがあった。
安徽省合肥市では18日夜、暴徒化した人々がフランス系のスーパー、カルフールの店内に乱入し「フランスを阻止しろ」などと気勢を上げた。こうしたデモに先立ち、カルフールで買い物をしないようメールで呼びかける動きも中国全土で盛り上がっていた。
同社が標的になった直接の原因は、ダライ・ラマ14世を支援しているとのうわさが広がったことだ。同社は否定しており、3年前の反日デモの際、いくつかの日本企業が根拠のないうわさで不買運動の標的になったのと同じ構図だ。
中国政府が外交的な難題に直面すると特定の外資系企業を対象にした抗議デモが盛り上がる、という中国市場の危うい実態が、改めて浮き彫りになった。サルコジ大統領が特使の中国派遣を決めるなど、フランス政府は対応に追われている。
愛国主義的な機運は中国の外でも広がっている。聖火リレーが大きな混乱に陥ったロンドンやパリでは19日、数千人規模の中国人留学生らが「西側メディアの偏向報道」を批判するデモを行った。
21日に聖火リレーのあったクアラルンプールでは、チベットを象徴する「雪山獅子旗」を掲げようとした日本人が中国系とみられる人々に取り囲まれた。
こうした「愛国的行動」を中国政府は原則として高く評価している。ただ、国内のデモがコントロールがきかなくなるほどエスカレートすることを警戒し「理性的」な対応も呼びかけ始めている。
チベット騒乱以来、中国政府は真相解明のための国際的な調査団の受け入れを拒否したまま、ダライ・ラマへの非難を一方的に強めてきた。危うい愛国熱のまん延を防ぐためにも、中国政府は国際的な調査団や内外メディアの自由な報道を認める必要がある。