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社説:李大統領訪日 日米韓の連携を深化させよう

 福田康夫首相は21日、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と首相官邸で会談し、北朝鮮の核放棄へ向けた日本、韓国、米国の3カ国連携を強化することで一致した。北朝鮮の核計画の申告を完全で正確なものにするよう実効ある連携を進めてほしい。

 韓国大統領の訪日は04年12月以来3年4カ月ぶりだ。最も近い国同士の政治リーダーが3年以上も日本で顔を合わせることがなかったのはまさに異常である。両国の首脳がひんぱんに相手国を訪問する「シャトル外交」の復活第1弾として李大統領の訪日を歓迎する。

 今回の会談では、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)拡大会合への李大統領の出席や、今年後半の福田首相の再訪韓が決まった。両首脳がうたう「日韓新時代」を実のあるものにするためにも、首脳相互訪問の定着化は好ましいことだ。

 日韓両国がいま力を合わせなければならない最大の課題が北朝鮮の核問題であるのは論をまたない。

 北朝鮮への経済支援に積極的だった盧武鉉(ノムヒョン)前政権とは異なり、李大統領は北朝鮮に核を放棄させることを最重要課題に掲げている。核を放棄すれば北朝鮮の国民所得を3000ドルに引き上げるよう協力するという「非核・開放・3000」構想はそのための具体的提案である。

 会談でも大統領はこの構想を説明し、首相は理解を示した。核放棄が経済協力の前提という考え方は、「拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決する」という日本の基本方針とも矛盾しない。両首脳が北朝鮮問題の早期解決へ向け米国を含めた3カ国の緊密協議で一致したのは当然である。

 政府は5月の連休明けにも日米韓の局長級協議を開催することを調整中という。日米韓の協議の枠組みは以前にもあったが、03年以降は開かれていない。枠組み復活は歓迎するが、問題はいかにして北朝鮮に譲歩させるかだ。連携強化の掛け声だけで終わらせてはならない。

 両首脳は経済連携協定(EPA)交渉へ向けた予備交渉の6月開始でも合意し、両国関係を成熟したパートナーシップ関係に拡大することをうたった共同プレス発表を行った。

 また、大統領は共同記者会見で韓国メディアの質問に答え、「過去の歴史を忘れることはできないが、過去にとらわれて未来に向かうにあたって支障があってはならない」と述べた。日本側も、過去の問題で支障を生じさせないよう努力が必要だ。

 両国間には歴史認識問題のほかにも領土問題や排他的経済水域(EEZ)の境界画定などいくつもの難問がある。大事なのは、軋轢(あつれき)が生じた際は問題を拡大させないよう事態を管理する双方の冷静さだ。「成熟した関係」への指導力を両首脳に期待したい。

毎日新聞 2008年4月22日 東京朝刊

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