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2008年4月22日

◎日韓首脳会談 地域経済の交流に弾みを

 福田康夫首相と李明博大統領の日韓首脳会談は、これまで言葉だけが躍っていた感もあ る未来志向の日韓新時代の実現をめざし実用重視の一歩を踏み出した点で意義深い。

 首脳会談では、朝鮮半島非核化へ向けた日米韓の緊密な協力や、日韓の経済連携協定( EPA)締結交渉再開のための実務者協議開催などで合意した。EPA交渉の再開が確定したわけではないが、李大統領の来日は、部屋の窓を開けてよどんだ空気を入れ替えるような効果があったと言え、EPA締結へ追い風が吹き始めたことは間違いない。これを機に政府間交渉だけでなく、地域レベルの経済交流にも弾みをつけたい。

 北陸では官民共同の「北陸・韓国経済交流会議」が二〇〇〇年から毎年開かれており、 五月に金沢で開催される今年は、会議に合わせて、韓国企業九社が機械工業見本市の「MEX金沢」とデジタル総合展の「eメッセ金沢」に出展し、北陸の企業との連携や販路拡大をめざすことになった。日韓EPAは、農業問題や韓国側企業の警戒感などもあり、言うほどやさしくはないが、地域企業間のビジネスが活発になれば、政府の交渉を後押しすることになろう。

 今年で九回目の北陸・韓国経済交流会議は、経済産業省と経済団体が中心になって開か れ、関係者の意見交換や調査研究、商談会などを通して北陸と韓国のパートナーシップの構築やビジネスの促進に役割を果たしてきた。ただ、交流会議の具体的な波及効果に物足りなさを覚える向きもあり、今回の「MEX金沢」などへの韓国企業の参加を、実のある経済交流促進の契機としたい。

 金沢港や伏木富山港と韓国を結ぶ定期航路は徐々に拡充され、取り扱い貨物量も増加傾 向にあるが、貨物量のさらなる増大と安定化は両港の至上命題である。貨物量が増え、国際ハブ港の韓国・釜山港との航路がさらに充実すれば石川、富山の産業界に大きなプラス効果をもたらすことになる。韓国との経済交流は地域間競争も激しくなっている。北陸の産業の特長や地理的優位性を生かした戦略的な取り組みを望みたい。

◎大学生の住民登録 臨時窓口開設も一案

 金沢市は今月、転入者に住民登録を促す啓発活動に乗り出した。担当者が大学を回り、 事業所にはメールで協力を求める取り組みだが、転入届が住民基本台帳法で定められている以上、自治体が積極的に働きかけるのは当然であり、金沢市のように転入者が多い地域はなおさらである。

 こうした「お願い」は形式的なものになりがちだが、市が本気で住民登録を増やそうと するなら、大学に臨時窓口を開設するのも一案だろう。「学都」を標榜する金沢であれば、「学生市民」を増やす思い切った試みがあっていい。

 実際、北九州市では四月を「ハローin北九州」と銘打ち、十年以上前から全大学・短 大に市民課の臨時窓口を開設している。今年も十三の大学などで実施し、八日間で八百人近くが住民登録した。北九州市は市制スタート以来の象徴である「人口百万人」の維持を目的に進めてきたが、大学が集積する金沢でも参考になる。出張窓口を開設するなら入学式直後が効果的であり、今年度が無理なら来年度でもぜひ検討してほしい。

 金沢市が住民登録の啓発活動に取り組むのは初めてで、大学には学生向けのチラシを配 るほか、「かなざわ定住推進ネットワーク」に加盟する約五百事業所にはメールで協力を求める。住民登録をしなければ選挙で投票できないことなどを説明するという。

 金沢で学ぶ大学生の中には、転入しても住民登録をしないケースが少なくないだろう。 新生活を始める四月という時期を逃せば、必要に迫られない限り、住民登録する機会はないかもしれない。金沢が「第二のふるさと」という意識を高め、ごみの分別など市民としてのマナーを守ってもらうためにも、住民登録を通じて「金沢市民」の自覚を促すことは大きな意味がある。

 県外からの進出企業でも単身赴任などで住民登録をしない転入者もいるだろうが、企業 がそんな人ばかりなら、いくら地域貢献を叫んでもむなしい。その地域に溶け込むために社員の住民登録を呼びかけるのも「企業市民」としての取り組みの一つだろう。


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