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人権・人道

人種差別撤廃条約第1回・第2回定期報告(仮訳)

V.第5条

裁判所、その他のすべての裁判及び審判機関

  1. 国民の権利が侵害された場合には、裁判による救済を受け得るが、憲法第14条が人種等による差別を禁止するとともに、同法第32条が、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と定めていることから、何人も人種、民族の差別なく平等に裁判を受ける権利が保障されている。
     また、憲法は、独立かつ公正な裁判を確保するため、裁判官に「その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」(第76条第3項)との立場を保障するとともに、裁判官の身分を保障している。憲法が保障する国民の権利が問題となっている事件の対審及び判決は公開法廷で行うこととされている(第82条)。

身体の安全及び国家による保護についての権利

  1. 我が国では、次のとおり人種、民族等の差別なく、暴力や傷害に対する身体の安全及び国家による保護についての権利が保障されている。
     憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、(中略)最大の尊重を必要とする。」(第13条)、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」(第18条)、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」(第31条)と規定して、身体の安全を最大限尊重するとともに、第14条において平等原則を定めている。
     刑法は、騒乱罪(第106条)のほか、強姦罪(第177条)、殺人罪(第199条)、傷害罪(第204条)、暴行罪(第208条)、凶器準備集合罪(第208条の2)、逮捕監禁罪(第220条)、強盗罪(第236条)等の罪を規定しているほか、暴力行為等処罰に関する法律をはじめとする特別法においても暴力的行為に関する罪を規定し、暴力や傷害を処罰している。そして、これらの罪は、被害者が何人であるかに関係なく等しく適用されている。

  2. 特に、公務員に関しては、憲法第99条が憲法尊重擁護義務を課しているほか、同法第36条において拷問を禁止しており、これを受けて、刑法が特別公務員職権濫用罪(第194条)、特別公務員暴行陵虐罪(第195条)等の罪を規定し、厳しく処罰の対象としている。
     捜査活動に関わる法執行官による刑事被疑者に対する暴行・陵虐行為等も、上記特別公務員職権濫用罪及び特別公務員暴行陵虐罪の対象となるほか、厳重な懲戒処分の対象となる。このような事件の発生は極めて稀ではあるが、法執行官に対しては、任官後、その経験に応じて各種の研修を行い、法執行官としての識見を身につけさせ、人権感覚の一層の涵養を図るとともに、職務の遂行過程においても、上司の指導・監督により、若手職員の育成の充実を図ることによって、その発生防止に厳重な注意を払っている。
     暴力や傷害による損害を被った場合の措置として、民法第709条は、相手方に対して損害賠償が請求できる旨規定しているが、特に、これらの行為が公務員によって行われた場合には、憲法第17条が「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」と規定し、国又は公共団体の賠償義務を定めている。これに基づき、国又は公共団体の公務員が、その職務を行うことについて、故意又は過失によって、違法に他人に損害を加えたときの国家賠償責任を定めた国家賠償法が制定されている。

在日外国人の安全の確保

  1. 外国人は、生活習慣等の違いから、地域住民とのコミュニケーションが希薄になりやすく、地域の安全に関する情報を得にくい立場に置かれている。
     警察では、在日外国人が犯罪等の被害に遭うことを防止するため、在日外国人向けの防犯教室の開催、外国語で書かれた防犯パンフレットの配布等により、生活の安全に関する指導を行っているほか、在日外国人のための相談窓口を設け、生活上の不安の解消に努めている。
     また、外国人からの警察への電話による通報も増加している中、通信指令室に外国語に通じた者を配置するなどの措置等を講じている。

政治的権利

参政権 

  1. 国民主権主義を基本原理の一つとしている我が国憲法は、第15条第1項において公務員の選定・罷免は、国民固有の権利であるとし、同条第3項は成年者による普通選挙を保障すると定めている。また、同法第14条は人種等による差別を禁止するとともに、特に国会議員の選挙資格については第44条において人種等による差別の禁止を定めており、平等選挙が保障されている。
     公職選挙法は、憲法の精神に則り、満20歳以上の日本国民は衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有すると規定しており(第9条第1項)、国政への選挙権は、人種、民族の差異なくすべての国民に対して与えられている。また、同法は、衆議院議員及び参議院議員については、それぞれ満25歳、満30歳以上の日本国民は被選挙権を有すると規定しており(第10条第1項)、被選挙権についても、人種、民族の差異なくすべての国民に対して与えられている。
     地方参政権については、公職選挙法及び地方自治法により、当該都道府県又は市町村に引き続き3箇月以上住所を有する満20歳以上の日本国民は、選挙権を有するとされている。また、各都道府県の知事、市町村長については、それぞれ満30歳、満25歳以上の日本国民は被選挙権を有するとされているほか、各地方議会の議員についても、当該議会議員の選挙権を有する満25歳以上の日本国民は被選挙権を有するとされており、右要件の下で人種、民族の差異なく平等に権利が与えられている。

  2. なお、選挙・被選挙権については、上記のとおり憲法第15条第1項が「国民固有の権利」であると定めており、その権利の性質上、日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は外国人には及ばないと解されている。他方、外国人でも国又は地方公共団体の機関に対し、その職務に関する事項について希望・苦情・要請を申し出ることは可能である。特に、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという地方自治の趣旨に鑑み、地方自治体の中には、我が国に在留する外国人でもその居住区域の地方公共団体と緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を公共的事務の処理に反映させるべく、外国人施策など各地方自治体の施策について審議し意見具申を行うことのできる”外国人市民代表者会議"(注10)を設置したり、審議会等に外国人に対し一定枠を確保しているところもある(注11)

公務就業権

  1. 我が国では、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには、日本国籍を必要とする。
     その採用にあたっては、国家公務員法第27条、地方公務員法第13条において、すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種等によって差別されない旨定めており、人種、民族による差別は禁止されている。

移動、居住の権利

  1. 憲法第14条が平等の原則を定めているとともに、第22条においては、すべての者に対し、公共の福祉に反しない限り、居住及び移転の自由を保障している。

出入国の権利

  1. 我が国の憲法は、第14条において法の下の平等を規定しているとともに、第22条第2項においては外国移住の自由を規定していることから、日本人の出国の自由は、人種、民族の差別なく等しく保障されている。自国に戻る権利については、憲法上の明文の規定はないが、当然に保障されているものと解されている。
     出入国管理及び難民認定法では、日本人の出国又は帰国について、出国又は帰国に際しての確認の手続を規定しているが(同法第60条、61条)、これらは出国又は帰国それ自体を制限しているものではない(なお、旅券法第13条第1項各号において、犯罪にかかわっている者、日本の利益又は公安を害するおそれがある者など一般旅券の発給を制限する場合が定められている)。

  2. 外国人についても、その出国の自由は、憲法第22条第2項の保障が及ぶものと解されている。出入国管理及び難民認定法は、外国人の出国に際しての確認の手続についても規定しており(第25条)、また、重大な犯罪において訴追され又は逮捕状等が発せられている等の場合については出国確認を一時留保することができる旨を規定しているが(第25条の2)、これらも外国人の出国自体を制限するものではない。
     外国人が日本に入国するためには、出入国管理及び難民認定法により、有効な旅券を所持し(乗員を除く)、旅券への査証を受けることのほか(条約等により相互に査証を免除している国の国民を除く)、一定の在留資格に該当する者であることが必要とされる(在留資格については、パラ16参照)。在留資格に該当する者でも、国の安全や公の秩序等を守るため、一定の上陸拒否事由に該当する者については上陸が認められないこととなっている(同法第5条)。ただし、上述のとおり、これらの規定の適用に当たっても、憲法第14条の趣旨に基づき、平等に取り扱っている。

国籍についての権利

  1. 我が国の国籍法は、出生による国籍の取得について、第2条で規定しているが、同条は「子は、次の場合には、日本国民とする。」として、第1号で、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき。」、第2号で、「出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき。」、第3号として、「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。」としている。また、届出による国籍の取得について、同法第3条及び第17条第1項、第2項等に規定されているが、その要件は、例えば第3条にあっては、(i)準正により嫡出子たる身分を取得したこと、(ii)子が20歳未満であること、(iii)子の出生当時父又は母が日本国民であったこと等であり、また、第17条第1項にあっては、(i)国籍不留保により日本国籍を喪失したこと、(ii)20歳未満であること、(iii)日本に住所があることである。
     帰化については、同法第4条に規定され、第5条に帰化についての最低条件が規定されている。その条件は、住所条件、能力条件、素行条件、生計条件、重国籍防止条件、憲法遵守条件である。
     しかし、上記のいずれの場合も、憲法第14条の原則に基づき、人種、民族等による差別なく、これらの要件を満たす限りにおいて、平等に国籍を取得する権利が保障されている。

婚姻並びに配偶者の選択、相続及び財産についての権利

  1. 憲法第24条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」と定め、また、第2項は、「配偶者の選択、財産権、相続、・・・婚姻・・・に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」と定めている。これを受けて、民法が婚姻、相続及び婚姻中の財産についての成立要件等を規定しているが、これらの権利については、憲法第14条において人種、民族等による差別が禁じられていることから、何人も等しく保障されているところである。
     また、私有財産権については、憲法第29条第1項が「財産権は、これを侵してはならない」と定めており、私有財産権についても、憲法第14条により、人種、民族等の差異なく等しく保障されている。

思想・良心及び信教の自由

  1. 憲法第19条が「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と規定し、すべての国民に対し思想及び良心の自由を保障している。また、信教の自由については、憲法第20条第1項が信教の自由は何人に対してもこれを保障する旨規定している。これらの思想・良心及び信教の自由は、憲法第14条の平等原則に基づき、すべての国民に対し人種、民族等の差異なく等しく保障されている。
     この他、教育基本法第9条第1項では、宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない旨規定されている。

集会・結社及び表現・言論の自由

  1. 憲法第14条が人種等に基づく差別を禁じているほか、憲法第21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めており、すべての者に対し等しく集会・結社及び表現の自由を保障している。 

職業選択の自由

  1. 職業選択の自由につき、憲法第22条は、何人も、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する旨規定しているほか、職業安定法第2条においても、「何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる」ことが定められており保障されている。

  2. 企業における採用の際の平等取扱いについては、同法第3条において、何人も、人種、国籍・・・等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない旨規定しており、公共職業安定所を通じて求人の申込みを行っている事業所については、公共職業安定所は、右事業所に対し、人種・民族の差別なく就職の機会均等を確保するための指導・啓発を行っている。特に、採用選考について不適正な事象を惹起し又はその恐れのある事業所に対しては、個別指導の徹底を図っている。
     また、上記以外の事業所についても、憲法(第22条第1項)及び職業安定法(第2条)が規定する職業選択の自由及び職業安定法が規定する均等待遇(同法第3条)の趣旨を踏まえて、同法第8条に基づき職業紹介、職業指導等を実施するに当たっては、公平かつ公正な採用の実現を確保すべく、公共職業安定所を通じた一般的な措置としての指導・啓発を行っている。

     

  3. 人種、民族等の差異を理由とした採用における差別や職場での不当な取扱いについて、法務省の人権擁護機関では、人権相談所においてこれらに関する相談を受け付け解決に向けての援助をしているほか、人権侵害の疑いのある事案については、人権侵犯事件として調査を行い、その過程で関係者に人権尊重の意識を啓発することによって、具体的な人権侵害の状況を自主的に排除させたり、再発を防止させ、平等の確保に努めている。

労働条件等

  1. 雇用保険法では、労働者が失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図ること等を目的にしており、雇用保険制度における権利を享受するに当たり、全ての者は、雇用保険法に則して平等の取扱いを受ける。
     労働基準法、労災保険法等の労働基準関係法令は、人種、民族等による差別なく、全ての労働者に適用されている。このため、労働基準監督機関は、外国人労働者に対する労働基準関係法令の履行確保を図るため、外国人労働者についてもこれらの法令が適用されることについての周知するとともに、法令違反がある場合の是正のための措置等を事業主に対して行う指導をしている。また、全国の主要な都道府県労働基準局に外国人労働者相談コーナーを設置し、専門の相談員による相談を行っている。

労働組合の結成・加入

  1. 労働組合の結成・加入については、憲法第28条が「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する」と規定している。また、労働組合法第5条第2項において、労働組合の規約中に「何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと」が含まれなければならない旨定められている。労働組合法第3条は、労働組合法上の労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準ずる収入によって生活する者」と規定しており、人種等による制約や区別は設けられていない。このように労働組合は、上記の労働者であれば、人種、民族等の如何にかかわらず、結成・加入できる。

住居

  1. 賃貸住宅における入居者選択の際の平等取扱いに関しては、公的な住宅等の入居者資格等については、公営住宅法、住宅地区改良法、住宅・都市基盤整備公団法、地方住宅供給公社法、住宅金融公庫法等において入居者の募集方法、資格、選考につき公正な手続及び要件を定めている。
     更に、上記に掲げられた住宅の賃貸における外国人の取扱いに関しては、外国人登録法第4条1項に従い、居住地の市町村にその居住関係及び身分関係につき登録をした者については、可能な限り地域住民と同様の入居申込資格を認めるものとする旨の通達を発出し、これにより運用している。
     また、民間住宅に関しては、(社)全国賃貸住宅経営協会等の貸主団体を通じて、人種、民族等を理由に入居を制限するなどの差別的行為がないよう、家主に対する啓発を行っている。
     入居者選択の際における不当な取扱いに対しては、法務省の人権擁護機関は関係者に対する啓発等を通じて平等の確保に努めている。

公衆の健康、医療、社会保障、社会サービス

  1. 公衆の健康、医療、社会保障、社会サービスについて規定する我が国の法令においては、人種差別の禁止、ないし人種間の平等を規定している。
     例えば、医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項において、医師及び歯科医師は、患者からの診察治療の求めがあった場合には、「正当な事由」なく、これを拒んではならないとされており、人種、民族等を理由として診療の拒否を行うことは禁止されている。また、助産婦についても、保健婦助産婦看護婦法第39条第1項に同様の規定が置かれており、人種、民族等を理由として助産等の拒否を行うことは禁止されている。
     また、薬剤師法第21条においては、「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」と定められており、調剤サービスを人種、民族等を理由に断られないこととなっている。
     社会福祉の増進を図るため、保護を要する者に保護指導を行うこと等を職務とする民生委員については、民生委員法第15条においてその職務を遂行するに当たっては、人種、民族等による差別的取扱いを行ってはならないことになっている。
     児童福祉法は、すべての児童が健全に育成されるという理念の下に、保護者とともに国及び地方公共団体に児童を心身ともに健やかに育成する責任を課している。これを受けて、児童福祉施設への入所措置等児童福祉法に基づくあらゆる行政的措置は、人種、民族等による差別なしに、すべての児童に対して平等に行われている。また、児童手当、児童扶養手当については、それぞれ児童手当法、児童扶養手当法により、人種、民族等の差別なく、日本国内に住所を有する者に対して、支給されている。
     国民年金法及び国民健康保険法については、日本国内に住所を有する者であれば日本人であるか外国人であるかを問わず被保険者とされ、厚生年金保険法及び健康保険法についても適用事業所に使用される者であれば日本人・外国人を問わず被保険者とされるので人種、民族等による差別はない。
     生活保護法は、生活に困窮する国民に対し必要な保護を行うことを目的とするものであるが、日本国民を対象としており(生活保護法第1条)、法律の要件を満たす限りにおいて、無差別平等に保護が行われることを規定している(生活保護法第2条)。なお、日本国籍を有しない外国人に対しては適用されないが、生活に困窮する永住者・定住者等日本国内において日本人と同様の生活をすることが認められている外国人に対しては、行政措置として日本国民と同一の要件の下に同様の保護(生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、出産扶助、失業扶助、葬祭扶助)を実施している(1997年度の被保護外国人数は、28,788人となっている。詳細は別添6参照)。

教育

  1. 我が国においては、憲法は、第14条第1項で、人種等による差別なく、法の下において国民がすべて平等であるとの基本原則を掲げ、更に第26条第1項ですべての国民は、法律で定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する旨規定している。この規定を受けて、教育基本法は、第3条において、すべての国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種等によって教育上差別されない旨規定し、教育の機会均等の原則を明示している。この規定は公立のみならず私立学校についても適用されるものである。政府としては、教育関連法令の下で行われる学校等における教育活動について、憲法及び教育基本法の理念の下に、人種、民族等に対する差別のない、全ての者に対する教育の機会均等の実現を指導・啓発している。
     また、教育基本法第3条第1項は、すべて国民は、人種等によって教育上差別されないと規定しており、私立学校も含め全ての教員は、中立・公平性をもって教育に従事するとともに、学生・生徒等に対し平等な取扱いをすることが求められており、政府としては、適切な指導の徹底を図っている。

  2. 我が国では、満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまでの児童・生徒(又は子女)は、小学校及び中学校に就学することとされている。我が国に居住する外国人児童・生徒(又は子女)については、就学義務は課されていないが、我が国の学校教育を受けることを希望する場合には、公立の義務教育諸学校に受け入れることとしている。高等学校についても、学校教育法の下、中学校若しくはこれに準ずる学校を卒業した者若しくは中等教育学校の前期課程を修了した者又は監督庁の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められた者は、すべて人種、国籍等いかなる差別もなく、入学資格が認められている。
     また、公立の義務教育諸学校への入学を希望する外国人子女が機会を逸することのないよう、就学年齢相当の外国人子女の保護者に対して、市町村教育委員会より就学案内を発給している。
     なお、外国人子女が我が国の公立の小・中学校へ就学した後の取扱いは、無償教育など日本人児童・生徒の場合と同様に取り扱うこととしている。その具体例としては、(1)授業料不徴収、(2)教科書の無償給与、(3)就学援助措置の対象とすること、(4)災害共済給付の対象とすること、(5)上級学校への入学資格の付与、等がある。
     また、学校教育法第1条に規定する学校に通う在日外国人に対し、課外において、当該国の言葉や文化を学習する機会を提供することは従来から差し支えないこととされており、実際にも幾つかの地方公共団体においてそのような学習機会が提供されている。
     インターナショナル・スクールなどの外国人学校は、そのほとんどが各種学校として都道府県知事の認可を受けているところであり、その自主性は尊重されている。

文化的な活動

  1. 我が国憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」、第14条第1項の法の下の平等原則、第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(同第1項)、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」(同第2項)との諸規定により、文化的活動への平等な参加が保障されている。政府及び地方公共団体では、人種、民族等による差別なく、すべての人にスポーツ・文化活動等の機会を提供するために各種事業を実施している。

公衆の使用を目的とする場所又はサービス

  1. ホテル、飲食店、喫茶店及び劇場の利用における平等な取扱いについては、利用者又は消費者の利益の擁護を図るため、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律に基づき、(財)環境衛生営業指導センターにおける苦情処理体制の整備等の措置が講じられているほか、特にホテルについては、旅館業法上、特定の人種・民族であることのみを理由として宿泊を拒むことは認められていない上、国際観光ホテル整備法施行規則上、登録ホテルにおいて提供するサービスについて、人種、民族等による差別的取扱いをすることが、禁止されている。

  2. また、運送機関の利用における平等取扱いについては、陸上輸送機関に関しては、鉄道営業法、鉄道事業法、道路運送法、貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法において、海上輸送機関に関しては、海上運送法、港湾運送事業法において、航空輸送機関に関しては、航空法において、それぞれ特定の利用者に対する不当な差別的取扱いが禁止され、また、法律ごとに制度は異なるが、例えば特定の利用客に対して差別的取扱いをする業者による運賃及び料金認可申請を認可しない、あるいは運送が公序良俗に反する等以外の場合には運送を拒絶してはならない等の規定がおかれている。


(注10)1996年神奈川県川崎市が、条例により設置した制度。同会議の代表者は、年齢18歳以上、1年以上市内に外国人登録していること等が条件で26人で構成される。同代表者会議は、広く外国人市民に係る事項について調査審議し、その結果を市長へ報告し、又は、意見具申ができることとなっている。報告又は意見は、市の機関を法的に拘束することはないが、市の機関はそれらを尊重することが求められている。この他、東京都でも、外国人が地域社会の一員として行政に参画する機会と仕組みを整えていくため、1997年に「外国人都民会議」を創設した。

(注11)大阪府、大阪市、神奈川県では、外国人に係わる諸課題及びその方策について幅広く意見を求めるため、メンバーの半数が外国人から構成される在日外国人問題に関する有識者会議を設置している。 移動、居住の自由



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