上野駅前の老舗レストラン「聚楽台(じゅらくだい)」が21日で閉店する。店を構えて半世紀。昭和の名残を今に残すレトロな大看板も、風雨にさらされ、塗装がすっかりはげ落ちた。建物の老朽化で“上野の顔”としての役目を終える。「古き良き昭和がまたひとつ姿を消す」と、常連客からは閉店を惜しむ声があがった。
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昭和34年、高度経済成長のまっただ中に開店。当時の上野は、地方からの集団就職者を迎える、東京の玄関口だった。
「集団就職で田舎から上京して、ここで人生初の洋食を食べたという若者も多かった。上野の街と一緒に歩んできた自負があるから、ここで終わらせたくはなかったが…」。同店の鶴田文三店長はそう話す。
最盛期は昭和50年代。座敷客の靴をげた箱に出し入れする「下足番」を専属で務める店員がいたほどの繁盛ぶりだった。一日に2000人もの客を迎え入れたという。当時の勢いはないものの、現在も観光客やサラリーマンなど、連日多くの客でにぎわっている。
豊臣秀吉の御殿「聚楽第」を模した豪華な店構えも、めぐる年月にはかなわなかった。同店が入居するビルは、終戦直後に建てられたという老齢建築。耐震性などに問題が生じたため、やむなく取り壊されることになった。
千葉県我孫子市から食事に来た深沢洋子さん(68)は「学生のころからよく通っているけれど、気取りのない店の雰囲気は昔と全く変わらない。寂しいけれど、長い間ご苦労様と言ってあげたい」と名残を惜しんだ。
同店は2年半後、同所に新築される建物で営業を再開する予定だ。
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