【バグダッド小倉孝保】イラク戦争開戦から20日で5年になるのを前に、イラクのタリク・ハシミ副大統領が18日、バグダッドで毎日新聞と単独会見し「米軍のイラク侵攻は間違いだった」と米政府を批判した。イラクの治安や経済状況が「全体として悪化」しているとの見方を示し、混乱の原因としてイラク戦争を挙げた。ただ、米軍の即時撤退には慎重な考え方を示した。
副大統領はイラクの現状について「地域によって改善しているところもあるが、バグダッドとディヤラ、(モスルのある)ニナワ両県では不安定な状況が続いている。国民は国外へ避難し、医療などの公共サービスも改善されていない。全体としてはさらに悪化している」と説明した。
さらに、フセイン政権崩壊後の混乱について「これほど混乱が続く現状からみてイラクへの侵攻という決定そのものが間違っていたといえる。この結果がわかっていたら米政府も同じ決定はしないはずだ。問題は米国側にある」と述べた。
ただ米軍については「できるだけ早期に撤退すべきだが、イラク治安当局には今、この困難な状況を担う能力がない。米軍が撤退すれば、治安の空白状況を招き事態はさらに悪化する」と早期撤退に慎重な姿勢を示した。
ハシミ副大統領はイスラム教スンニ派の政党「イラク・イスラム党」の指導者。同党は既に、連立内閣から離脱しているが、ハシミ氏は副大統領職にとどまり、政府内でスンニ派の利益を主張する立場を維持している。
毎日新聞 2008年3月19日 20時48分(最終更新 3月20日 1時05分)