映画大手のギャガ・コミュニケーションズが今年8月末で映画製作・買い付けから撤退することになった。「セブン」や「ハンニバル」など話題作を日本に紹介。1986年の創業以来、数度の経営危機にもねばり強く事業を続けてきたが、いったい何があったのか。
ギャガといえば、一時は年間200本もの映画を買い付け次々に公開、映画界の風雲児とも呼ばれた。
16日に親会社のUSENが行った2008年8月期中間決算発表の場で映画事業からの撤退が明らかにされた。USEN広報グループは「減損が重なり、これ以上、映画事業を続けられない。メディア配信向けのコンテンツ取得のために自ら買い付け、製作を行う必要性もなくなった」と説明する。配給業務についても「ギャガが担当するかどうかは未定」という。
映画ジャーナリストの田中宏子氏は撤退発表の背景について「玉石混交。いい映画も買ってくるが、箸にも棒にもかからない作品が多すぎた。バイヤーの“目利き”の水準が低く、手当たり次第買っていた印象がある。社員も次々代わっていた」と冷ややかにみる。
海外作品のビデオ販売からスタートしたギャガは「過去何度も倒産の瀬戸際まで追いやられるたびに運良く映画が“当たった”」(元幹部)。ジム・キャリー主演の「マスク」(1995年)は興行収入18億円、翌年公開したブラッド・ピットの出世作「セブン」は27億円、トム・ハンクス主演「グリーンマイル」(00年)は65億円を稼いだ。01年には新興市場に上場を果たした。
しかし、映画ブームの復興で参入会社が増えた結果、洋画の買い付け額が高騰。再び苦境に立たされていた。04年は大宣伝にもかかわらず「ヴァン・ヘルシング」が大コケ、100億円以上の純損失を出している。この結果、USEN傘下に入って再建を目指すことになった。05年は「オペラ座の怪人」「Shall we Dance?」などヒット作に恵まれて年間で165億円の同社歴代最高記録を樹立。「ギャガ復活」と話題となったが、それもつかの間。
昨年は「バベル」が興収20億円と健闘したが、「東宝以外、映画会社はどこも苦しい。この後も再編があるのではないか」と田中氏。ギャガには「ランボー 最後の戦場」(5月24日公開)「セックス・アンド・ザ・シティ」(今秋公開)など話題作がまだ残っている。9回裏の逆転劇は起きるのか。
ギャガが社運をかける公開中の超大作ファンタジー映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤」ではニコール・キッドマン(40、写真)を招いた大型キャンペーンを展開した。
宣伝費に投じた額は20億円ともいわれる。春休み映画トップの成績を守ったが目標の100億円は遠く、40億円がやっとの見込み。
製作した米ニューライン社は同作の不発でワーナーに吸収合併され、当初の3部作構想の行方も暗雲漂う。
ギャガの主要な映画調達先だった同社の消滅もギャガには不利だった。
ZAKZAK 2008/04/21