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円ドル人民元「サブプライム危機の真の罪」

2008.4.19 19:39
このニュースのトピックスサブプライムローン

 「私たちが部品を何銭コストダウンとかいって頑張っているところに、銀行がサブプライムローン(米国の低所得者向け高金利型住宅ローン)関連で5000億円以上損しても平然としている。いい加減腹が立ちます」(自動車部品下請けメーカー経営者)。

 街角では、「650円のカツ丼の食材が30円上がったんで帰りの深夜タクシー代も払えない。景気が悪いのになぜ値上げするのか」と行きつけの食堂のおやじさんがこぼす。

 もったいぶったエコノミストよりも、庶民感覚は往々にして正しい。「上」で巨額の損失が発生すれば、ツケは「下」に回る。米国の損失は世界の弱者がかぶる。

 米住宅バブル崩壊がドル安と金融不安を引き起こし、「外国人投資家」がそそくさと日本の株式まで売り逃げる。それだけで済むならまだよい。米国の株式市場が落ち着くのを待てばよいからだ。

 ところが米バブル崩壊の余波はじわじわと「実物」におよび、世界の消費量を直撃する。

 最たる例が石油、穀物価格の高騰である。「中国など新興国需要の高まり」だけでは昨年8月のサブプライム危機勃発(ぼつぱつ)後の石油価格急騰を説明できない。米住宅ローン関連証券などに投資してきたアラブ産油国など世界の大口投資家が避難場所として米国の石油や穀物の先物市場に資金を振り向けている。コンピューター空間を使ったゲーム感覚で取引する先物市場では日産わずか50万バレルのテキサス原油を1億バレル以上の規模で取引する。その相場が実物の価格に反射する。穀物や他の資源も同じ原理で動き大きくはずみ、地球の裏側で起きた地震のごとく津波となって押し寄せる。

 米コロンビア大学のスティグリッツ教授によれば、米国はこれまで約6年間、住宅価格の値上がり分を担保にした融資などで、年間8500億〜9000億ドルもの個人消費が上積みされてきた。資本が不足している米国はこれらの資金需要膨張分の大半を外から持ってきた。住宅ブームにわいている間は証券市場をにぎわせたが、とてつもない資金がニューヨークの金融機関の証券口座から移動したとき、余剰資金が世界の物価を決めてしまう事態になった。

 住宅バブル崩壊で消費需要がはげ落ちると、景気は後退する。すると石油や穀物の需要も減るから価格が下がる、というのが経済学の常識だが、通用しない。

 国際通貨基金(IMF)の報告によれば、住宅関連ローン・証券の総額は2008年3月時点で23兆2100億ドルに上り、これだけでも住宅ブームが始まった2001年の米国内総生産(GDP)の2倍以上に上る。この余剰資金はさらに先物市場に流れる巨大な予備軍になっている。米証券市場不安がある限り、国際商品先物に投じた資金は減らないし、国際商品市場への投機はまだ延々と続く可能性がある。

 需要と供給という「神の見えざる手」により価格が決まるという考え方が現代経済学の主流だが、「神」は行方不明。神を連れ戻すためには、資産を担保にした証券や商品の将来の値上がりを前提にして、融資したり投資する米国型金融市場の異常さを正さなければなるまい。

 残念なことに、世界はそれよりも、米金融市場の安定回復だけに目を奪われ、破(は)綻(たん)しかけた金融機関を救済する原資となるドルを買い支えるのに汲々(きゅうきゅう)としているだけである。(編集委員 田村秀男)

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