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【社説】

国交省改革案 なぜもっと踏み込まぬ

2008年4月21日

 無駄遣いの温床とされる道路特定財源をめぐり国交省が改革案を出した。関係する公益法人の廃止方針などで踏み込みが足りない。事態を甘く見ていないか。国民の「道路不信」を重く受け止めよ。

 「道路整備に対する信頼を損ねたことは誠に残念であり、早急に国民の信頼の回復に努めなければならない」−。国土交通省の「道路関係業務の執行のあり方改革本部」がまとめた報告書の冒頭にはこんな決意が表明されている。

 レジャー用品やマッサージチェア、ミュージカル公演に始まり、職員の旅行費用、巨額のタクシー代…。ねじれ国会の論戦で、道路特定財源を自らの財布のように使ってきた国交省の恥ずべき実態が次々と明らかになった。遅まきながらその反省に立って設置されたのが改革本部だ。

 福田康夫首相の指示で二カ月前倒しの公表となったが、中身を見ると、決意のほどを疑わざるを得ない。

 報告書は、道路特定財源がつぎ込まれる同省所管の公益法人について、二〇一〇年度までに今の五十から十六法人に絞る、〇六年度に六百七十三億円だった拠出額を半減する、としている。天下り役員の定年制導入や報酬カット、ミュージカルなど「国民目線から見て不適切なもの」などには支出しないことも盛り込まれた。

 公益法人改革では「駐車場整備推進機構」など三法人を解散。このほか、統合や株式会社化を視野に入れた非公益法人化などを打ち出すことで支出を削る。

 冬柴鉄三国交相は「政治主導」の決断をアピールするが、簡単にはうなずけない。公益法人は天下りの受け皿と化している。統廃合の基準や拠出額半減の根拠が不明確だ。身内である公明党からさえも「なぜ十六法人が残るのか」「国民が納得するにはほど遠い」との批判が出ている。

 福田首相は道路特定財源制度をやめて、一般財源化すると言い切っている。制度維持を前提にした微調整で済むような時流ではない。まずは法人が必要かどうか、ゼロベースで見直すのが筋だ。目標年度にしても一〇年度まで待つこともあるまい。

 ガソリン税の暫定税率復活を含んだ租税特別措置法改正案を、与党は三十日に衆院で再可決する構えだ。改革案はそのための環境整備にすぎないとの見方すらある。国民が納得いく抜本的な改革が必要だ。そうでないと見向きもしてもらえなくなる。

 

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