司法制度改革の柱の一つとして発足した日本司法支援センター(法テラス)が、今月で2周年を迎えた。
電話相談窓口には昨年度中に22万件を超す相談が寄せられた。財団法人・法律扶助協会から引き継いだ民事法律扶助業務も、大幅に件数が増加している。国選弁護人を務める契約弁護士は1万3427人を数え、常勤スタッフ弁護士も約100人まで増えた。
滑り出しは順調と映るが、問題も少なくない。何よりも知名度が低すぎる。法テラスが今年2月、全国の1100人を対象に実施した認知度調査では、実に約77%が「法テラスをまったく知らない」と答えた。「名前だけは聞いたことがあるような気がする」という心もとない回答者を加えても、存在を知っているのは約2割にすぎない。
これでは法的トラブルの相談窓口として機能を発揮することは難しい。法テラスの役割を多くの人々に認識してもらうことが急務だ。自治体や裁判所、警察、弁護士会などとの連絡を密にして広報宣伝に努めると共に、トラブルに悩む人々が気軽に頼れる“駆け込み寺”として実績を積み上げねばならない。
スタッフ弁護士が不足していることなども不安材料だ。知名度が上がれば、ニーズに応じきれない状況だ。人材確保には、弁護士会や大規模法律事務所の協力を得て、交代で弁護士を派遣してもらう方策を講じたり、10年が基本の契約期間満了後の独立支援などにも力を入れるべきだ。
鳴り物入りで設立された割には、業務に対する予算面での手当ても十分とは言い難い。民事法律扶助業務については、取扱件数は増えたものの裁判費用の立て替えなどの支援策は従前よりもむしろ後退した、との不満の声もある。国選弁護人の報酬も法テラスの担当になってから減額されており、弁護士会などからの評判は芳しくない。
法テラスはまた、全国に37カ所の本所、支部と19カ所の地域事務所を開設、司法過疎地域にもスタッフ弁護士を常駐させたり、巡回させたりしているが、まだまだ過疎地からの要望に応え切れていない。国選弁護などだけでは必要な経費を確保できない、と自らは開設を控え、日弁連に公設事務所を開くように求めている地域もある。司法過疎対策は司法制度改革の目的の一つであり、法テラスの主要な業務と位置づけられているだけに、採算重視の姿勢に疑問なしとしない。
各地のスタッフ弁護士らの活動ぶりは総じて好評だ。必要な予算も確保し、その輪を広げ、確かなものにしなければならない。発足時から独立性が懸念されてきただけに、外部の意見や監査も受け入れ、市民のための司法サービス機関として一日も早く認知されるようになってほしい。
毎日新聞 2008年4月21日 東京朝刊