新生児集中治療室(NICU)の病床を増やす上での障害は、専門医師を確保できないこととする病院が8割に上ることが、新生児医師でつくる「新生児医療連絡会」の調査で分かった。救急車で搬送されても、NICUが満床のため受け入れられないという事態が全国で発生している。新生児専門医の不足が、受け入れ困難を解消できない要因となっている実態が初めて明らかになった。【河内敏康】
NICUは超低出生体重児などリスクの高い新生児を集中的に治療。主に小児科や産科の医師が担当する。総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターなどに付属し、全国に約280カ所ある。
調査は1月、責任者が同連絡会に加盟する214病院に郵送するなどし、126病院が回答した。
その結果、過去1年間に母体搬送を受け入れられなかった経験のある病院は88%で、新生児搬送も71%あった。「NICU満床」を理由に挙げた病院は82%に上った。
NICU責任者の76%が病床を増やしたいと答えたが、病床を増やす上での障害を複数回答で尋ねたところ、「新生児医師の確保」が79%で最多だった。次いで「看護師の確保」が75%、「建設費の確保」が53%--だった。また、87%が現状で専門の医師が不足していると回答した。
同連絡会によると、全国のNICUに携わる新生児専門の医師は約1600人。専門性が高く、将来、開業しにくいなどのため志望者が少ないという。
同連絡会事務局長の杉浦正俊・杏林大准教授(小児科)は「新生児医療は崩壊の危機にある。専門の医師を増やす対策が早急に必要だ」と話している。
毎日新聞 2008年4月21日 東京朝刊