陽光に輝く緑豊かなオリーブの木々が美しい。植栽百周年の節目を迎えて、今月から一年間、多彩な記念イベントが繰り広げられる香川県・小豆島を訪ねた。
一九〇八年、当時の農商務省によって三重、鹿児島両県と三カ所で、オリーブの試験栽培が行われた。結局、小豆島だけ成功し、「日本の栽培発祥の地」となった。
気候風土が栽培に適していただけではない。管理を託された農家の努力があってこその快挙である。試行錯誤の苦しい日々が続いたことだろう。島に広がるオリーブと、化粧品や漬物、菓子など多彩な加工品に「オリーブの島」を担う人々の情熱を感じる。
五十年前の祭典には小豆島出身の作家・壺井栄さんが招かれた。著書「小豆島」の中で壺井さんは「オリーヴの五十年が、いつも平和と遠かった」と記している。
式典では戦時中のオリーブの荒廃と、近くの道を戦地に赴いていった若者たちの姿を思い複雑な心境だったという。だが、地元高校生のオリーブの苗の植樹と平和を託す詩の朗読に「思わず襟を正しました」と未来を感じる。
今月に入り、小豆島では家族連れなどが平和や幸せの願いを込め苗木を植えている。平和の象徴とされるオリーブが「二度と傷つくことのないように」との壺井さんの声が聞こえてくるようだ。