自白狙う勾留、認めぬ方向 勾留却下率・保釈率高まる2008年04月21日02時53分 捜査当局が容疑者から自白を得るために否認している間は勾留(こうりゅう)を続ける「人質司法」と批判される手法が、変わりつつある。わずかだが、勾留が却下されたり、保釈されたりする割合が高まっており、日本弁護士連合会からも「改善の兆しが見えてきた」という声が聞こえてくる。来年5月に始まる裁判員制度が影響しているという。 逮捕後、裁判官が身柄拘束の必要がないと判断した「勾留却下率」は、10年前の97年は0.26%だったが、07年は0.99%。78年以降で最高の水準に上がってきた。また、起訴から判決までの間に被告が保釈された割合を示す「保釈率」は07年は15.8%。学生運動が盛んで微罪での逮捕件数が多かった当時は5割を超えた年もあったが、年々下がり、03年の12.6%が最低。その後は上昇傾向だ。 これまでの裁判では、まず検察側が手持ちの証拠で立証し、弁護側は、その後にどこを争うのかを明らかにしてきた。このため、ベテラン刑事裁判官は「検察側が立証を終えるまでは、証人と打ち合わせるなど証拠隠滅の恐れがあることから、裁判所も保釈を認めてこなかった」と説明する。 しかし、裁判員制度を控え05年から導入された「公判前整理手続き」では、公判が始まる前に検察側が手持ちの証拠を開示し、弁護側も争い方を決めることになった。このため「証拠隠滅のおそれがない」として釈放されることが増えた。ライブドア社長だった堀江貴文被告が、全面否認しながら公判前に95日間の勾留で保釈されたのが一例だ。 06年に大阪地裁のベテラン裁判官が「連日のように裁判が開かれる裁判員制度では、被告との事前の周到な打ち合わせが必要で、保釈の運用を変えるべきだ」とする論文をまとめたのを機に、各地の裁判官も具体的な証拠隠滅の可能性がない限り、勾留を認めなくなっているという。 21日夜には東京・霞が関の弁護士会館で、「人質司法の打破と取り調べ全過程の可視化を目指して」と題してシンポジウムを開く。日弁連の刑事弁護センター委員長を務める竹之内明弁護士は「いまの兆しを大事にして、さらに改革を進めたい。そうでないと、弁護人が被告と十分な打ち合わせができず、裁判員制度は機能しないだろう」と指摘している。(岩田清隆) PR情報この記事の関連情報社会
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