「韓国一の桜の名所」とされる町を訪ねた。釜山から車で西へ一時間ほどにある慶尚南道鎮海市。かつて旧日本海軍の基地があったが、現在では韓国海軍の拠点となっている。桜は、いわば植民地時代の名残でもある。
市中心部にある海軍司令部は、普段は立ち入り禁止だが、桜の季節だけ一般に公開されていた。正門から続く桜並木は、日本の統治時代に植えられたものといい、満開だった。
利用したタクシーの運転手が聞いてきた。「桜の原産地がどこか知っていますか」。韓国では「桜の源流は済州島」とされており、そう答えると、運転手は満足そうにうなずいた。
市当局などが街路樹として、桜を積極的に植樹した結果、市内の桜は二十五万本にも及ぶという。単に過去の風景の保存・継承ではなく、「桜は韓国のもの」との主張が背景にある。桜吹雪の中で、日韓の歴史に思いをはせた。
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