確かな自信を手に、いざ最終決戦へ-。6日に行われた柔道の全日本体重別選手権で男子100キロ超級を制し、北京五輪代表の可能性を残した井上康生(29)=綜合警備保障=が7日、福岡市内のホテルで会見し「勝ったことにより自信が生まれた。開き直りと勢いをぶつけていきたい」と、最終選考会となる全日本選手権(29日・日本武道館)に向け闘志をみなぎらせた。
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久々の美酒は、どん底にあえいでいた男に最も足りなかったものを与えた。「やはり勝つってことは精神的に大事ですね。勝ったことにより自信が生まれた」。復活Vから一夜明け、康生の表情にようやく明るさが戻った。北京五輪代表へ、厳しい状況には変わりないが「開き直りと勢いをぶつけていきたい」と、29日の全日本選手権に向けて手応えをにじませた。
前夜は妻の亜希夫人(25)や会社関係者とともに祝杯を挙げた。試合後のインタビューで涙を流したことに「いろんな人から『泣きすぎだろ』というメールが届きました。最近は何に対しても、うるうるきてしまう。年ですかね」と苦笑い。
自身と同じく号泣していた夫人については「思いっきり真希(塚田)の胸に飛び込んでましたね。演技してたんじゃないですか?」とおどけながらも「僕以上につらい思いをしてきた。弱音を吐かずについてきてくれた」と、献身的な支えに感謝しきりだった。
五輪出場へは全日本の優勝が最低条件。依然として07年世界選手権無差別級覇者の棟田(警視庁)、嘉納杯、チェコ国際を制している石井(国士舘大)が優位な立場にいるのは間違いない。しかし、体重別からの連続優勝となれば、連盟としても康生の存在は決して無視できないものになる。
激戦の代償か、右ひじと股(こ)関節に痛みがあるというが「全日本までには十分回復する」と、キッパリ。負ければその時点で現役生活にピリオドを打つつもりでいる。それでも、まだ終わらせるわけにはいかない。差し込んだかすかな光-。その先に北京があると信じて、康生が最終決戦に挑む。