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重圧消えた康生 逆転代表へ望みつなぐV

決勝で生田(左)から内股で1本勝ちし優勝した井上
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 康生が北京への夢をつないだ。柔道の全日本体重別選手権、男子100キロ超級準決勝で井上康生(29=綜合警備保障)が棟田康幸(27=警視庁)を「指導2つ」のきん差で撃破。決勝も勝ち、この大会の100キロ超級を初めて制した。欧州遠征の不振で“第4の男”に落ちていたが、最有力とされた棟田に直接対決で勝ち、浮上ムード。29日の全日本選手権(日本武道館)での大逆転代表へ、かすかな光が見えてきた。

 勝って泣けた。生田との決勝。豪快な内股一本を奪った井上は声をつまらせていた。「苦しい日々だったんですけど、最後まであきらめずに努力すれば結果が出る。いい内容ではなかったけど…勝ちたかったので」。こみ上げる気持ちを素直に吐露すると、会場は割れんばかりの拍手に包まれ、スタンドで応援の亜希夫人は涙をこぼした。

 準決勝が最大のヤマだった。02年4月29日の全日本選手権決勝以来となる棟田との対戦。前に出てくる相手を、しっかりとらえて何度も技を繰り出した。結果的には棟田が井上の指を握った反則が勝負を分けたが、それで十分。負ければすべての可能性が消える場面で、求めていた勝利という結果を手にした。

 ライバル全員が優勝した欧州遠征で、フランス国際5位の井上は最低の評価。遠征から帰国した直後は父・明さん(62)ですら声を掛けづらい状態だったという。しかし、そのどん底を救ったのも父の言葉だった。「もう北京の可能性はないんだから、おまえが最後にお前の柔道さえすればいいじゃないか」

 翌日から肩の力が抜けた。「勝ちたい以上に負けるのを恐れている自分があった」。日本柔道を背負ってきた男にしか分からない、そのかなしみ。五輪への可能性が消えかけた時、その重圧から解放され、輝きを少しだけ取り戻した。

 「北京への道は険しいなんて言葉では言い表せない。でも、最後まであきらめずに戦う」。たとえ全日本選手権で優勝しても、海外での実績を考えれば五輪代表の可能性は高くない。だが、99年に亡くなった母かず子さんの口ぐせが今の井上を支える。「康生、上を向いていけ」。上を向き戦い続ける男にだけ、奇跡を起こす力はある。 勝ち上がり表

[ 2008年04月07日 ]

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